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肖像画

「レイルズ女史のご両親の瞳、二人とも温かみのある濃い茶色だったわ。そして、あの家に飾られていた家族の肖像画、若い頃のご夫婦と子供の頃のレイルズ女史の姿。三人ともが濃い茶色の瞳で描かれていた」

「ええ。そういえば飾られていたわね」

「でも、私が出会ったレイルズ女史はもっと瞳が赤かった。ほとんど赤に近い赤茶色。あのご両親二人ともと全く違う瞳の色……」

「瞳の色が、肖像画と違っていたってこと?」

 クレアの言葉にリズがうなずく。


「子供の頃と、瞳の色が変わるってことは……あり得ることよね」

「確かに、そういうことはよく聞くわ。でも、淡い色が濃くなることはよく聞くけど、濃い色から淡い色に変わることはあまりないと思うんだけど」

「そうよね。あの赤い色は茶色よりも明るい色に見えた……」

 リズはそう言いながら考え込む。


「両親と瞳の色が違うってことも、そこまでおかしいことでもないわよね」

「そうねえ。両親の色をそのまま受け継がずに祖父や祖母の色と同じになるなんてことも珍しくない」

「そう……そうよね」

 リズがぶつぶつと呟きながら考えている。クレアはそれを聞き、相づちを打ちながら一つの考えに達した。


 リズは答えに近づいている。だが、それをそのまま受け取れなくて、答えを否定するような材料を求めている。


 クレアは直感で答えを出してしまった。それは、推理でも何でもない。クレアの持つ霊感に従って出したものだった。

 クレアはそういう自分の性質から考えて、自分は探偵にはなり得ないと確信する。



「あら~~! お久しぶり!」

 クレアは声をかけられて、はっとした。

「ダリア夫人。お久しぶりです」

 クレアはさっと席を立って、声の主に挨拶を返した。

 テラス席に座るクレアを見つけて声をかけてきたのは、かつて霊媒師として依頼を受けた先で出会った夫人である。

 ダリア夫人は当時は痩せて憂いある表情の妖艶な雰囲気を持つ女性だったが、悩みから解放された現在では少しふくよかになり、表情も明るくなり親しみやすい雰囲気の女性になっていた。

 クレアとしては、現在のダリア夫人の方がずっと魅力的だと思えた。


「ダリア夫人、今日は何か新しい花を探されていたのですか」

 クレアは彼女が大事そうに抱える苗木を見る。従者に持たせればいいのに、自分で持っているあたり、本当に彼女は植物が好きなのだろう。

「ええ。これはジキタリス。心臓のお薬にもなる花よ」

「へえ。薬草なんですか」

「そうよ。でも、かわいいお花を咲かすのよ~。ベルがずらっと並んでるような花がね。秋に種を蒔くものだけど、苗から植えたり挿し木のようにして植えることもできるの」

 夫人は饒舌に話す。


「この苗が心臓の薬なんですか」

 リズが夫人の話に興味をもったのか、加わってくる。

「そうよ~。でも、健康な人が使ってしまうと毒になるわね。心臓を強く動かすためのお薬なのよ。だから、しっかり心臓が動いてる人には毒なのよ」

「はあ、なるほど~」

 夫人の解説を聞いて、リズはふんふんとうなずいていたが、急にピタッと止まった。


「庭に咲いたらまた見に来てね~」

 ダリア夫人はにこやかに手を振りながら去っていった。二人は同じく手を振りながら彼女を見送る。



「リズ、肖像画を見に行かない?」

「肖像画……」

「メイウェザー家の肖像画よ」

 クレアはリズに提案をする。リズはそれを聞いてはっとしてから、うなずいた。



「肖像画はこの廊下に……」

 リズがクレアを案内する。面倒を避けるために二人はメイドに扮していた。

「亡くなった夫人の肖像画はないわね」

 クレアが気づいて指摘する。飾られている肖像画は、伯爵やその両親、そしてその娘のものだけであった。

「夫人のものはしまわれているのかも」

「それがどこだかわかる?」

「私が行ったことのない部屋があるわ。もしかしたら、そこにしまわれているのかも」

 二人はこそこそとその部屋に向かう。


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