再び降霊会
「今日のこれは、一体何の集まりだ?」
伯爵がリズの母を伴って広間に現れた。リズの発言を聞いた各面々の伯爵に対する視線は冷たい。
「降霊会ですわ」
「降霊会?」
リズは淡々と伯爵の問いに答える。
「リズ、あまりわがままをしてはいけないわ」
「お母さ、ま。私のわがままなど、これっきりですわ」
「ははは。こんな小規模な催しなど、我儘の内に入らないぞ。いくらでも開催するがいい」
リズは静かに諫めてくる母をうっかり「お母さん」と呼びかけた。そんな親子の会話に伯爵が鷹揚さを見せようと割って入ってくる。伯爵はリズの肩も抱こうと近寄ってきたが、リズはすっと一歩下がった。
「っお、おい……」
「もう一人お客様がいらっしゃいます」
リズは入り口に顔を向けながら伯爵の追撃を避ける。
「遅れました」
「レイルズ先生……ご無理を言ってすいません」
「これっきりですよ……」
遅れて現れたのはレイルズ女史である。彼女を伯爵令嬢が出迎える。
「あの者は、我が家の家庭教師? 職を辞したのではなかったか?」
「お義姉様にお願いして、来てもらったんです」
「お願い……? あんな物言い、脅迫でしょう」
義姉がリズを振り返りながらにらむ。
「リズ、あなた何を言ったの?」
母が不安を滲ませながらリズに問う。
「いないところで真実を露わにされるのを不安に思うようなら、是非来てくださいと言ったのです。お義姉様に伝言をお願いしました」
「真実を露わに……? あなた、何を知っているの?」
「それを今から皆さんの前で披露していただくんですよ」
リズがさっと手を上げると、それを合図に一人の人物が広間へと入ってくる。
「あれは」
「あの時の無能霊媒師!」
令息達が失礼なことを言う中、リズは声を張った。
「当代一の凄腕霊媒師、ウィザーズ様です」
「ご紹介にあずかりましたウィザーズと申します」
「知ってる」
令息の一人が小声で突っ込んでくるが、ウィザーズことクレアは当然無視をする。
「早速ですが、ただいまより降霊を始めます。呼び出したいのは、一体どなたですか」
「はい。伯爵夫人が亡くなったとされた日、その時本当に亡くなった方を呼び出してください」
リズの言葉に、それを聞いた他の人間は一斉に動揺する。
「リズ⁉ あなた、何を言うの?」
「お母様、私はこの真相は明かされるべきだと思うのです」
「そんな、あなた失礼よ」
リズの母は娘が何か問題を起こそうとしていると、大いに焦る。
「お母様、私はもう覚悟を決めました。お母様も、覚悟を決めてください」
「リズ……」
「ウィザーズ様、お願いします」
リズの要望に応え、ウィザーズはうなずいた。
「それでは、降霊を始めます」
ウィザーズは設置されていた小さな円卓の前の椅子に座る。円卓の上にはろうそくが灯されていた。
ウィザーズが小声で何か呪文を唱えながら自身の首飾りを握る。ウィザーズの呪文に呼応するように卓上のろうそくの炎が激しく吹き上がったり縮んだりを繰り返している。そのろうそくがより一層大きく燃え上がったと同時、ウィザーズの体がびくんと大きく跳ねる。ウィザーズがばったりと円卓に倒れ伏す。
大きく燃え上がっていたろうそくの炎が縮んでいく。倒れていたウィザーズの指がぴくんと動く。ウィザーズがゆっくりと身を起こしていく。
「あなたは誰ですか?」
リズが尋ねた。
「……私の名前は、サリー・レイルズ」
「嘘よ!」
それを聞いて伯爵令嬢が強く否定の声を上げる。
「あなたは、何をされていた人ですか?」
「私は、メイウェザー家のお嬢様、エリザベス様の家庭教師……」
「は? どういうことだ? レイルズ女史なら、ここにいるじゃないか」
伯爵が戸惑いを口にする。伯爵の視線の先のレイルズ女史はウィザーズの姿を眺めていて、彼と視線は合わない。
「あなたはどうしてお亡くなりに?」
「私は、あの日、奥様とお茶をしながら話をしていた……」
「どんな話を?」
「やめなさい! 一体何をしているの!」
令嬢エリザベスが騒ぐが、二人は構わずに話を進めていく。




