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第54話 地下施設の鍵だ

 アランは彼のセリフに頷き、傍にいるキヨシにこう言った。


「私に…もしもの事があった時は、香織を頼む」


「ご安心下さい。命に変えてでも、ご主人様とお嬢様は必ずお守りします」


 キヨシのその言葉を聞いて、私はまた泣いてしまった。そして私たちは再度、階段を下っていく。


 だが…しばらくして、後方に小さくなってゆく『隠し扉』から「ガタ」という音とともに、一瞬、一筋の光が漏れた気がしたのだった。


「どうかなさいました?」


 何度も振り向き、後ろばかり気にして歩いていたら、ハルが、少し屈んで私の顔を覗きこんだ。


「ううん」


 私は首を横に振り「多分、気のせいだと思う」と続けた。


 心配になったのか、ハルは最後尾を歩くヴァレットに耳打ちした。


「ヴァレットさん、お嬢様がしきりに後方を気にしておられます。何か異変を感じられたのかもしれません」


「やはり、そうか。私も先ほど、後方に空気の乱れを感じたところだ」


「ご主人様」


 ヴァレットが前方のアランを呼び止める。


「後方に不穏な動きが…。真偽を確かめに行って参ります」


 それを聞いてアランが静かに頷く。


 さらには、先頭を歩くハウスキーパーに声を掛ける。


「先導をよろしく頼みます。私も確認次第、すぐ後を追います。キヨシとハルは、片時もご主人様とお嬢様から目を離さぬ様に!」


「はい!承知しております」


「お嬢様。すぐに戻ります」


 従者はそう言うと、きびすを返し、今来た道を戻って行った。


「あっ…ヴァレットさん」 


 …私は何か嫌な胸騒ぎがしたのだった…


 そして、それが私の見たヴァレットの最後の姿だった。


『裏の非常口』……それは洋館の地下にある約800mくらいの通路を歩いた先にある非常時の脱出口だ。


 この地下通路はエヴァンス邸の背後にある山林まで続いており、通常の歩行で7〜10分はかかる距離だが、視界が悪く足元がぬかるんだ地下通路では、当然さらに時間を要する。


 その地下通路を私達はハウスキーパーの先導で半分くらい進んだが、そこで思いがけない弊害に直面した。なんと通路のその先が、経年劣化によって塞がれて通れなくなっていたのだ。


「そんな…」


 呆然としている私の肩に手を置き、アランは「大丈夫だ」と言った。


「少し戻ろう。まだ退路が絶たれたわけではない」


 先導するハウスキーパーにそう言うと、自らが率先して私達を誘導し始めた。


「お父様、どこへ?」


 私は不安に尋ねた。


「実はもうひとつの逃走経路がある。最終手段だ」


「えっ!?」


 アランのセリフに沈んでいた一同の声色が明るくなった。 


「奥の手がおありなのですね!」


 ハウスキーパーの台詞のトーンも希望に満ちていた。


「今まで隠していて、すまない。実はこの通路の途中に地下施設に繋がる裏ルートがあるんだ。そしてその先には、第二の避難経路が設置されている」


「でも、そこも崩れて塞がれていなければ良いのですが…」


 そう呟く私の心配をよそに、アランは大丈夫だと言った。


「先程その横を通った時に確認済みだ。ただ…」


「ただ?」


「いや…出来ればその部屋には入りたくはないのだよ」


 アランそう言うと悲痛な面持ちを見せた。


「あの…ハルお姉ちゃん」


「はい、お嬢様。どうなさいました?」


「あのね?ヴァレットさん、戻ってこないけど、どうしちゃったのかなぁ?…って思って…」


「えっ⁉︎…そう言えば…」


 ハルお姉ちゃんは目を見開き、キヨシお兄ちゃんの方を向いた。


「ねぇ、キヨシ。この地下通路に入ってから、まだどこも曲がってないよね?」


「ああ、曲がってない。ずっと一本道だ。ヴァレットさんのことだろ?俺もずっと気になっていた。様子を見に行くって戻って行ったきり、全然帰ってこないからね。


 あれから時間も経ってるし何か変だ。俺達も引き返してるんだから、とっくに合流していてもおかしくないはずなのに」


「まさか…。ヴァレットさんの身に…」


 ハウスキーパーが不安な表情を浮かべた。瞬間、私はそんな彼女に、まるで弟の身を案じる姉のような母性を感じた。


 そして、それを察知したかの様にアランが「ハウスキーパー、案ずるな。向こうにはバトラーもいる。仮にヴァレットも捕まったとしても、彼らは大事な情報源だ。そうは簡単に手荒なことをしない筈だ」と言った。


 ハルは、口元を引き締め大きく頷き、私に言った。


「大丈夫です。バトラーさんもヴァレットさんもお二人共きっと無事ですよ!信じましょう」


「うん…そうだよね。きっとそうだよね」


「さあ、着いたぞ」


 アランが立ち止まった場所は、他と何ら変わりのない、ただの通路だった。


「えっ!?お父様、ここなの?何もないようだけど…」


 彼は、壁にはめ込まれている楕円形の手の平サイズの石をひとつ外した。すると、そこから鍵穴らしきものが現れたのだ。さらに彼は首からかけていたネックレスの先端を回して引き抜き、皆に見せた。


「地下施設の鍵だ」


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