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第44話 戦う理由

「聖也!アラン!」


 友美は、視線をカーテンの奥に固定したまま、背後の仲間たちに声をかけた。


「大成を頼む」


「ケッ!こんなことで勝った気になるなよ。貴様みたいな、にわか仕込みのハリボテだらけの能力者が調子に乗ってんじゃねえぞっ!!」


「それはお前の方だ。銀次のデコイのくせしやがって」


 …なんだって!友美さん、そのアバターが囮だっていうのか?…佐和子の時と一緒だ。銀次の奴、性懲りも無く…


 聖也が、鋭くデコイを見つめた。


「銀次は、核への攻撃を受ける直前に、そのあたりで散乱している霊体で即席のデコイを作って、アバターの身代わりにしたってわけだろ。そうだな?友美…」


「その通りだ、聖也。そして奴は、同時にアバターをカーテンの向こう側にいる自分の本体に戻した。つまり…」


 …そうか!そのルートを追えばっ!…


 アランの言葉に私は頷いた。


「…そう。ウッドチッパーカーテンを回避して、銀次本体に辿り着けるってわけ」


「馬鹿がぁ!そんなに簡単にいくわけが…」


「グチャァッ…」


 デコイのセリフの途中で、鷲掴みにしていたその核を握り潰した。


「!!…ぐうえっっ…」


 デコイは、虫の息程度の断末魔を上げて消滅する。そして、私はその消滅煙しょうめつえんに向かって、吐き捨てた。


「うるさい。もう喋るな。デコイに用はない」


 …す、凄い…あれが友美さん?…面影がないぞ…まさか、リチャードに意識を…


「いいや…アラン、それはない。以前から友美の気質は変わっていない。あれが本来の姿だ。


 …本来の姿…か。もしかして友美さんは、幼い頃、すでにハイパー生命体の領域を超えていたのかもしれない…


「リチャードの被験体の時にか…。あり得るな。その時に、真の適合者の条件を兼ね備えてしまった…ってことか」


 …その素質を銀次は狙っていた…


「ああ。そして、全てを知った榊圭佑が、リチャードの呪縛を自力で解き、友美を連れて、この村を出たっていうのが真相だろうな」


 …呪縛を解かれた父上…いや、リチャードの核はどうなったんだ?…


「それは、まだ圭佑に残っているリチャードの意識が、自分の核を、そばにいた当時の研究員に移したのよ。自らの意思の尊厳を守るためにね…」


 …友美さん、聞いていたのか…


「ええ。しかし、銀次の奴、まさか、またデコイを使うとは…しかも、ギリギリのタイミングでアバターとすり替えるなんてさすがね」


「あれはアストラル・プロジェクションの残留思念!野郎、当て付けがましく、また俺の技を真似しやがった。舐めやがって…」


「アランと聖也は、ここに残れ。あとは私がひとりでやる」


「なんだとぉ!ふざけるな。アランはともかく俺は行くぞ!!」


「そうだぜ…バカ孫。俺も連れて行け…」


「大成、気付いたか…。ふざけるな。片腕がないお前なんぞ、足手まといだ」


「舐めた口をきくじゃねぇか。お前はバケモン級に強くなって、調子こいてるだけだ。天狗になってると足元すくわれるぞ」


「なんだと?」


 私の、わずかなとも取れる苛立ちが、周囲の大気を震わせた。身体から発せられたほとばしる熱気が、今度は一気に冷え上がり、真空のカッターとなって周辺に散った。その様は、まさにかまいたちである。


「!!なっ!!」


 聖也は驚愕きょうがくの声を上げたが、かろうじて紙一重でかわした。だが、大成はアランの前に立ち、一歩も動こうとしない。


 …大成!お前、何やってる!伏せるんだっ!!…


 アランの叫びにも、聞く耳持たぬと言わんばかりに、さらに無傷のもう片方の腕を前に差し指を広げる。


「スパパパンッ!!!!」


 無機質で乾いた切断音が、空間にこだました。かまいたちのような神風は、一瞬で、大成の五指全てを切り落としたのだ。


 …たっ!大成ぇぇぇーっっ!!!!…


 アランの叫び声が地下施設内に響き渡る。しかし、当の大成本人は、自分の無くなった指のことなど気にも留めず、私を直視していた。


「大成…。お前、どういうつもりだ?」


 私の問いかけに、彼は鬼の形相で睨み返した。


「おい、バカ孫…いや、お前は、もう孫でもなんでもねぇ。…ただの殺戮兵器に成り果てた。見た目はそのまんまだが、中身はまったくの別物だ」


「なにぃ?」


 私はそう言いながら、内心、自意識過剰になっていく自分に戸惑いを感じ始めていた。そして、それをまるで分かっていたかのような大成の言葉に動揺を隠しきれなかった。


「おい!アラン、どういうことだ?…友美とリチャードの融合は上手くいったんじゃないのか?」


 問い詰める聖也に、アランは何も言い返せずにいた。


 …別物…まさか、友美さんの意識は、すでにリチャードに支配されてしまってるのでは…


(まさか、すでに私は、リチャードに意識を支配されて…)


「おい、アラン!」


 突然、大成が声を上げる。大成から声を掛けてくるなんて、思ってもみなかったのか、アランの対応が若干、遅れた。


 …なっ、なんだ、大成…


「そもそも、あいつの戦う理由はなんだ?」


(私の…戦う理由…?)


 …あいつ?…友美さんのことか…ああ、そうだな。彼女は、連れ去られた親友の伽耶さんを奪い返すために戦っているんだ…


(…か…や…ちゃん…?)


「連れ去られた?…誰にだ?」


 …それは…


 アランが聖也の方へ、自身の発光を向ける。それを受け、聖也が気まずそうに目を伏せた。


「チッ!俺だよ。…だが、なるほどな。友美の戦う理由か…。確かに伽耶だ。それは最初からブレていない。…もしかしたら、本来の友美を呼び戻せるかもしれない!」


(…聖也!…そっ!そうだっ!私は聖也に無理矢理、この洋館に転送されてっ!!)


 …良し!それだっ!!友美さんに、その原点を思い出させることができればっ!…


「なるほどな…。おい、そこの、超バカのクソ孫よ。本末転倒だ!…今、ここに伽耶がいたら、てめぇ、取り返しがつかないことになっていたんだぞ。たった今、切断された俺の指みたいになぁーっ!!分かっているのかっ!!」


(か…伽耶ちゃん…)


 …友美さん、大成の言う通りだ…伽耶さんは、まだ銀次の所で囚われている。それに、この場所に伽耶さんがいたら間違いなく今、君の放った無意識の殺戮技で…。


「友美!俺を連れて行け!伽耶を…俺のかけがえのない姉を守るための盾になってやる…」


 …聖也、お前…


「アラン!それ以上,喋るな!…銀次に操られていたとはいえ、お前たちには、悪いことをしたと思っている」


(…聖也…あなたが、そんなこと言うなんて…くそぉーっ!リチャードの思う壺になってたまるかぁーっ!!)


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