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第2話 なに人に指図してるのよ!

 …先輩?…大丈夫ですかぁ?…ねぇ、先輩たらぁ…


「はっ!!」 


 伽耶の声で覚醒し、私は起き上がった。咄嗟にまわりを見渡す。でも彼女の姿は、どこにも見当たらない。今度は自分の現状を確認した。どうやらソファーの上で寝ていたらしい。


「伽耶ちゃん?どこ…」


 彼女の名前を呼んでみる。だが応答はない。


(えっ、どういうこと?私、確か…この洋館の図書室で…)


 とりあえず、先ほどいた図書室を目指すことにした。部屋を出たら、そこは正面ロビーを見渡せる二階部分の渡り廊下だった。


 移動の間、なにげに意識を失う直前のことを考えた。


(そうだ、聖也のパンチを、みぞおちに受けて…)


「そう言えば、聖也もいない。どこに行った?」


 右隣の部屋に入る。ビンゴ!図書室だ。部屋の隅には、いくつかのローリングラダーが備えつけてある。だが…


(あれ?…さっき入ってきた、掃き出し窓がないぞ)


「そんなバカな…」


(……違う。ここは、わたしがさっきまでいたあの部屋じゃない!)


 踵を返して部屋を出た。中央にある巨大な階段をかけ降り、重厚な観音扉を開け外に飛び出す。


 だが、その先に広がる景色に私は言葉を失った。なんと見渡す限り、無数の山林が広がっていたのだった。

 生い茂った木々はどれも巨大で、空を覆い尽くさんばかりに枝を伸ばしている。


「…どこだ…ここは?」


 再度、あたりを見渡した。やはり何度見ても同じだ。舗装された道路はおろか、獣道のような山道もまばらで、そのわずかな山道すらも、もう何年も人の手が加えられた気配がない。


 思考をフル回転させた。


(…ちょっと待て…よく考えろ…こんなこと、あり得ない…目が覚めたら、別の場所にいるなんて…)


 現在地は?と検索しようと思ったが、どこで落としたのかスマホがない事に気づく。


 極度の不安から、だんだん腹が立ってきた。


「冗談じゃないわ。何なのよ…いったい」


 あたりを一巡した後、再び洋館の前に戻った。分厚い観音扉の両端にステンドグラスが貼られてるが、その片方が粉々に砕けている事に気づく。


 「ガッシャァァァーン‼︎!‼︎‼︎」


 次の瞬間!私の脳裏に、激しくそれが割れる音と、ある映像が浮かんだ。


「えっ!?何なの!!」


 まるで何かに憑依されたかのように、私の意識は急激に別の誰かの視点へと引きずり込まれた。

 映像の中の私の視点は、洋館内の食堂の上座にいる男性の視点と一致している。


 脳裏で、その男性が叫んでいる。なにかが起こったみたいだ。


「何事だ!!バトラー、どうなっている⁈」


「村の者達です。エントランスのステンドグラスが破壊されました。詳しくは分かりませんが、彼らがなんらかの理由で暴徒化した模様です」


 映像は…そこで途切れた。


「なんだ?…今のは…」


 私は、茫然と粉々になったステンドグラスを見つめた。


「まさか、これって本当にあったこと…とか?」


 すると私の問いに反応するかの如く、映像の、その男性の声が脳裏に響いた。


 …その通りだ…すまない…友美さん…君を巻き込んでしまった…


(えっ!?まじかっ…いま、わたしの名前、呼んだ?)


「だっ!!…誰っ!!」


 思わず口を突いてしまったが、周りに誰もいないことは分かっている。


「…ちょっと…また心霊現象?ほんと勘弁して欲しいんだけど…」


 ふいに先ほどの男の名前を思いだした。


「…銀次…」


 …銀次を覚えているのか?…


(かっ…確定だ…19年前のあの時も、こんな風に会話が成立していた…)


「もぉーっ!答えるなーっ!!」


(やはり実在する幽霊…あの時と同じだ)


 胃液が逆流するような緊迫感が全身を包む。自身の鼓膜に激しい心拍数のリズムが反響している。まるで解像度の高いヘッドホンでダイレクトに聞かされている気分だ。


 だが…同時に父、圭佑の事故の詳細を思い出した。


(そうだ…あれは事故なんかじゃない。お父さんは呪い殺されそうになったんだ。コイツら霊に…)


 無性に腹が立った。同時に怒りが恐怖心を越え始める。脈が、耳の奥でドクドクと速く鳴っているのがわかった。高揚し、滑舌がよくなる。


「あ、あなた、銀次とかいう奴の仲間ね?なにが目的なのよ!どうせ伽耶ちゃんが変なのも、あなたたちのせいなんでしょ?」


 …それは違う。聞いてくれ…私の名はアラン・エヴァンス。友美さん、君を守るため19年前から取り憑いている…


「はぁ〜取り憑いてるーっ?冗談はやめてよ!!19年前ってまさかあの時から!?…ってか、そんな前から、なに断りもなく勝手に憑いてるのよー!!」


(ダメだ…私、完全にパニックになってるぞ…なに普通に幽霊と話してるんだ。そもそも、これって夢なんじゃないのか?)


 その時、館内から人の声が聞こえてきた。今度は女の声だ。


「えっ!!」


 私は咄嗟に林の影に隠れ、耳を澄ます。


「誰かいる?ひょっとして!!」


 …そう…君の友人の生村伽耶さんだ…


「やっぱり!!」


 思わず飛び出しそうになった私をアランは静止した。


 …待つんだ。伽耶さん…いや、伽耶さんの意識を支配している者に気付かれる…


「なによっ!ってことは、伽耶ちゃんもあなたみたいな霊に取り憑かれてるっていうの?」


 …そうだ…そして、彼女と接触する前に君に見せたいものがある…


「見せたいもの?」


 …ああ…私の書斎に行ってくれ。それを見れば友美さんの知りたい事は全て分かると思う…


「ふざけないで!いきなり現れて、なに人に指図してるのよ!……って、えっ?私の書斎?……ここ、あなたのお屋敷なの?」


 …そうだ…


(……待てよ!ひょっとしたら、あの事件の真相が分かるかもしれない。……それにしても、なんでこんな目に……。全く、わたしがなにしたっていうのよっ!!)


「分かったわよ!こうなったら,とことん付き合ってあげるわよ。こっちだって、訳も分からず振り回されるのはごめんだわ」


(……真相を暴いて、全部終わらせてやる。でも……アランの書斎って、一体何が置いてあるのよ。嫌な予感しかしないんだけど。ああーっ、もう!…夢なら早く覚めてくれ…)


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