第18話 次元が違うようだ
「邪魔だ」
「なにぃ?」
「銀次のところには自力で行く。コピーには用はない」
佐和子は、伽耶の身体を、内側から操る聖也にそう言い放つと、今度は私の意識に話しかけてきた。
…友美さん、さっきと同じ要領でお願い…
彼女が何を言ってるのか、すぐに理解できた。
私は頷くと、少し遠くから、気づかれないように、伽耶の身体に手を伸ばし、意識を集中する。
光の塊が見えた。伽耶の魂だ。私はそれをシーカーズ・センスで膜をかけ保護した。
それを佐和子に合図で知らせる。彼女はそれを受け、次の瞬間、一気に伽耶との間を詰めた。そして、霊圧のバリアーを瞬時に身に纏い、音速の正拳を伽耶に放つ。
「ぐわあぁーっ!!」
伽耶は不意打ちを喰らったカタチになった。
[時空の断層]からの[霊圧の鎧]、さらに正拳突きへと、流れるような動線の一撃が彼女のみぞおちに決まる。
その結果、聖也の幽体は、新生命体の時と同じように、伽耶の身体から強制排除される。だが…。
(…やった!!って…えっ!?)
排除された聖也の幽体が、まるで磁石のプラスとマイナスが引き寄せられるように、瞬時に伽耶の身体に戻った。
(どういうこと…?)
…そうかっ!幽体はあくまで幽体。聖也本人ではない…そういうことか…
「クックックッ…残念だったな。魂だけの霊体と違って、いくらこの娘に攻撃しようが、俺にはダメージはない」
「フン!なら、聖也本体を殺すまでだ」
「佐和子さん!何を言って…!!」
(そんな!いきなり殺すって…伽耶ちゃんの身体は、どうなるのよ)
…友美さん、落ち着いて…ハッタリだ…佐和子は聖也を煽ってる… 彼女のことだ。何か対策を立ててるはずだ…
アランが意識に語りかける。
(…えっ、そうなの…?)
そういえば、さっきから気になっているものがあった。実は伽耶の胸元から、うっすら糸のようなものが見えていたのだ。それは彼女の動きに比例して、光の屈折を繰り返していた。
(あれは、なんだろう…)
「俺を殺すだと…馬鹿が。おい、佐和子!俺の本体がどこにいるか分かるとでもいうのか!」
「…では私が、シルバーコードを見ることができると言ったら、どうする?」
「ーー!なんだと…!?」
…シルバーコードだって!?またハッタリを…。佐和子とはいえ、そんなもの見えるはずがない…
動揺するアランに、私は首を傾げた。
「ねぇ、アラン。あれのことじゃないの?…ほら、伽耶ちゃんの胸元辺りに、見える銀色の糸みたいなやつ。あれがそのシルバーコードってやつじゃない?」
…えっ!!友美さん!今、なんて!?…
「だから、あれだよ。ところどころ屈折して光ってるでしょ?」
アランは私の指さす方に霊的な視線を向けた。さらに何度もあたりを見渡していたが、どうやら認識できてないようだ。
そして、彼はひとつ、安堵のため息をついた。
…友美さん、どうやら君のシーカーズセンスは、私のそれとは次元が違うようだ…
佐和子も驚いた表情で、こちらを向いた。
「アラン、佐和子さん。なるほど、そういうことか…。なんとなく分かってきた」
…本当に見えてるの?…
佐和子のセリフが脳裏に響く。
(…はい。でも、佐和子さんにも見えてたんじゃないんですか?)
…まさか…ただのハッタリよ…ホントはどうしようか、迷っていたところなの…
(えっ!!…そうなんですか?…)
…友美さん、じゃあ、お願いしてもいい?…
いきなり、気が引き締まる思いがした。
(分かった。佐和子さん、ちょっと待ってて!!アラン、行くわよっ)
…よし、行こう!!…友美さん、君が見えているシルバーコードは聖也の幽体と聖也自身を繋いでいる細いエネルギーの糸なんだ…
「つまり、それを辿っていくと、聖也の本体とご対面っわけね」
…ああ。それに彼は、多分、この通路付近にいるはずだ…
「なんで、そう思うの?」
…聖也は、自分の幽体を遠隔操作して、伽耶さんを操ってる。だが、その精密性は近ければ近いほど、高くなるからだ…
「…っていうことは…」
シルバーコードは通路奥の下り階段付近まで続いていた。
…ああ。聖也はその手前の踊り場に潜んでいる可能性が高い…
通路のつきあたりのドアに手を掛ける。糸は、そのドアを貫通していた。
私達は、それぞれのシーカーズセンスで自身の魂を保護した。
「アラン、この糸を切ったらどうなるの?」
…幽体は二度と本体には帰れないだろう。そうなると、おそらく肉体は死亡する。そして、幽体の方は
帰還すべき拠り所を失い、そのまま伽耶さんの魂に根を張る可能性がある…
「なるほど。ヘビーだね」
…では、開けてくれ…
私は頷いた。
「アラン!決して自分から、攻めないで!!聖也を確認したら、お互いの霊圧を上げて、佐和子さんを呼ぶから!!いい?」
アランは、私のセリフを聞いて、満足そうに笑みを浮かべた。
「どうしたの…何がおかしい?」
…いや…見違えたよ。友美さん…




