第17話 アストラル・プロジェクション
聖也に操られた伽耶が、通路の奥へ歩き出した。私は、そちらに目を向けた。
「アラン、あの先って…」
…地下に続く階段だ…まさか…でも、この先には地下施設しかない…
「どうしたの?」
…友美さん、私の目的は、佐和子が待っている地下施設に、君を連れて行くことだった…
「そして…私はそこで、アランが友美さんを連れてくるのを待ってた。しかし…」
(そうか、だから佐和子さんはアランのピンチを敏感に察知できたのか)
…銀次は…実は最初から、そこにいたのかもしれない…私は友美さんを守るとか言いながら、取り返しのつかない事をしてしまう所だった…
「私も同罪だ。奴は、自分のテリトリーに結界を張っていたんだ。気がつかなかった。まさか、銀次と同じ場所にいたなんて…」
佐和子は、苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。
「銀次!!銀次がいるの!? 地下施設に!?」
(この下に銀次がいる!今朝、私の前にいきなり現れた男がっ!!)
「だったら、何だって言うんだ!!」
前を歩いていた伽耶が、突然大声を出し立ち止まった。
「えっ!?」
驚き、立ち止まる私に、振り向きざま、人の名を呼び捨てる伽耶。
「おい、榊友美!…言っておくが、調子に乗るなよ。あの時はちょっと驚いたがな。だが、俺に同じ手は通じない」
「あの時って、なんのことよ」
(意味がわからない)
私は、答えを求めるようにアランを見た。
…19年前だ…
「19年前…それって、まさかって!!」
「榊圭佑だよ。奴を殺し損ねたところか、榊友美!まさか、お前にあそこまでやられるとわなぁーっ!!」
「…父を、殺し損ねた?」
私の中で19年前のピースが、軽快な音を立てて
ピタッ!ピタ!ピタッ!とハマりだす。
「あれは…お前の仕業だったのか?」
私が発した言葉は、自分でも驚くくらい低く、地這うような声色だ。さらに、その威圧感は、アランと佐和子がこちらに振り向く驚きのリアクションで読み取れた。
…だが、そこまでだ。そこから記憶が…途切れた。
気がついたときには、私は伽耶に馬乗りになり、両手で、彼女の胸ぐらを掴んでいた。
周りが騒がしい。
「やめろ!やめるんだ!友美さん、目を覚ませ!そいつは銀次じゃない!!」
「シーカーズ・センスを解除しなさい!!伽耶さんの心臓を潰す気!?」
アランと佐和子の声が、頭の中で反響する。
見下ろすと、伽耶の顔は、顔面蒼白になっていて、身体全体が痙攣を起こしていた。
(…えっ???)
「うっ、うわああぁぁぁーっ!!」
(!!かっ!伽耶ちゃん!??)
咄嗟に、伽耶の身体から逃げるようにして離れた。
(なんだ、これはっ!!私がやったのかっ?)
「ハァハァ …ハァハァ…ハァァ…」
(何してるんだ…わたしは)
「ゲホッ!!ゲホッ!!」
伽耶がむせ返す。
「おいおい、冗談じゃねぇぞ。危ねぇ奴だな。まったく…何してくれやがる。お前はもう少しで、この娘の息の根を止めるとこだったんだぜ」
「わたし…」
「地下室に近づいたことだし、さっそく怨霊にでも意識を持ってかれたんじゃねえか?」
「…地下室…怨霊…」
その時、思考を遮断するように佐和子が私の頭を抱き抱えた。
「大丈夫よ、友美さん。いい?落ち着いて、よく聞いて…シーカーズ・センスは、特定のスキルを限定するものじゃないわ。あなたにしか体現できない、あなたただけのシーカーズ・センスが必ずあるはずよ。ほかの人のセンスに惑わされないで!」
そして佐和子は何か、勘づいたようだ。改めて伽耶に向き合う。
「それアストラル・プロジェクションだな? なるほど…それが、お前のシーカーズ・センスのスキルか」
…アストラル・プロジェクションだと?…
アランが反応した。
「ハァハァ…アラン、佐和子さんは、なに言ってるの?」
…つまり、彼…聖也が、自分の幽体を意識的にコントロールして、まだ覚醒していない伽耶さんを意のままに操ってるってことだ…
「そんな…。じゃ、じゃあ、伽耶ちゃんが覚醒して自我を取り戻したら?」
…そうなると、おそらくアストラル・プロジェクションだけでは、伽耶さんを自由に操れなくなる。聖也にしても、それまでに我々を銀次の元へ、誘導したいはず…
「お前…聖也とかいったな。つまり、そいつで伽耶さんを操ってるってわけか」
「さすがだな、佐和子。ご名答だ。だから、その娘が死んだところで、俺には何も影響がない」
「私を知っているのか?」
「ああ…よくな。その自信過剰な性格。すぐにマウントを取りたがるところなんて、昔とちっとも変わらねぇな」
「それはお前のことだ。フン!銀次…やはりお前だったか。そして、聖也は…つまり、お前のコピーだな?」
「ほう…」




