第63話 ミスト=アメノサ
リィムが霊装銃を使うと髪色は白金色に変わり、ハッキネンが表に出て来た。そして気怠そうな表情をしていた。
「話は記憶共有で理解した……結構しんどい。」
不服そうなままレピスを睨むが、要望に変化が無い事を察して諦めた表情になった。そして更にハッキネンの様子が変化していった。
その背は……大して縮んだ様には見えなかったかが、明らかに10歳位の青髪青眼の髪は長めで、ちょっとボサボサ頭だけど愛嬌のある可愛らしい少女が姿を現した。
「やっほー! 久しぶりだねぇ! 元気にしてた? 私は元気一杯で外に出たかったんだけどね、ハッキネンに負担かけれないから一日5分だけにしてるんだ!」
大声ではつらつとした声が響くと、クロはすぐに駆け出して少女の胸元に飛び込んで行った。が、飛ぶ混む直前に両手でしっかりとキャッチされて宙ぶらりの状態になった。
「ミーちゃん久しぶり! 会いたかったよ!」
「あはは、クロちゃん久しぶりだねぇ。でもリバちゃんから聞いたけど何ですぐに会いに来なかったかなぁ? ねぇ? 何でかなぁ~?」
ミストは笑顔のまま圧だけで不満を語り出した。
(((あ……コレってリバちゃんとキレ方一緒だ……)))
タツミ達は一度盛大にリバティにキレ散らかされた事が有るので、その時の感覚を思い出しては震えあがった。
「あ、あのね……リバちゃんから説明聞いて無いのかな?」
「私はね~リバちゃんからじゃ無くてクロちゃんから聞きたいんだぁ~? 安定した肉体が有ったのに何百年会いに来なかったのかなぁ~?」
ジワジワとミストの手に力が入り始めてクロが段々と苦しそうに暴れ出した。ここで能力で逃げ出すと言う事も出来たのだろうが、それは火に油を注ぎかねないのでやらなかったのだろう。
「ミーちゃん! それはレピさんとの約束を優先しただけだよ! だからお願い! て、手の力を緩めて!」
「ミスト~そろそろクロが苦しそうだから~止めなさい~? その点に関しては~2人の安全を考えてだったから~責めるなら私にして頂戴~。」
レピスの仲裁が入ると、ミストは渋々ながらも手を緩めて胸元にクロを抱きかかえると氷のブラシを具現化してブラッシングを始めた。
「仕方ないなぁ……レピ姉が言うならクロちゃんを責めないけど……罰としてブラッシングを気のすむまでやるからね。」
「あぁ~久しぶりだぁぁぁ……ミーちゃんゴメンね。」
気の抜けた表情になったクロをミストはブラッシングしながら、改めてタツミ達の方へと向き直った。
「久しぶりだねぇ、ハッキネン以外とはこうやって落ち着いて話すのは初めてだね。改めて私の名前は『ミスト=アメノサ』です。能力名は知っての通り『魔槍の騎士』だよ。あ、ミーちゃんって呼ぶのは家族以外禁止だからね? あ、自己紹介は要らないよ、リバちゃんから聞いてるからね。」
想像以上に軽いノリで話し始めた姿にタツミ達は驚きを隠しきれないまま質問を始めた。
「は、初めましてミスト。ところで5分で我慢しているって事はそれ以上はハッキネンやリィムに負担がかかるって事か?」
「疲労を感じないレベルで5分かなぁ? まぁ存在力を削らないラインは1時間って所で、1週間も経過したらハッキネンちゃんを完全に取り込んじゃうねぇ。」
「存在が取り込まれると……レピスやクロみたいに元の体の持ち主の意思は……」
「当然完全に消えるよぉ? リィムちゃんと同化したままだと二人共だねぇ。だから私の使用上の注意を読んで、正しく使ってね? 大事な人を失いたく無いならね。」
軽いノリのままミストは注意を促す様にタツミに告げる。
「で、私の力を使いこなすって事で話していたみたいだけどぉ……どうやってやるの? レピ姉はどう考えているのかな?」
「ミストの力の制御を~二人に覚えさせると言う方が正しいかしらね~? そうすれば必然的に波長が近くなって~継戦能力が上がると思うのよね~。」
レピスがそう言うと、ミストは少し悩みながらも実例を思い出した様に手をポンと叩いて納得した表情を浮かべた。
「私の『氷の魔槍』と『霜の鎧』を貸すってことかな? リバちゃんがタツミさん達に『火焔翼』や『再生の炎』を貸し出したみたいに。」
「そう言えば……使い慣れた分だけ疲労感が無くなって来た気がするわ。ってちょっと待って。フェニックス・ウィングとかリバイバル・フレイムって名称は初耳なのだけど?」
言われてみて心当たりが有るであろうヒジリが思考を巡らせながら頷き始めた。タツミの場合は別の事情が有って欠損していた生命力の場所に力を入れたので、逆に絶好調になった為にピンとしていなかった。
むしろ直後に気付いた術名の方がヒジリは気になって仕方なかった。
「あれぇ? リバちゃん正式名称を伝えて無かったの?」
「ミスト~リバちゃんが~あの頃は若かったから~名前の読み方を変えたって言ってたでしょう~?」
レピスが笑顔のまま注意するが、これは絶対に止める気が無かったと思わせる雰囲気が有った。するとタツミの月虹丸が収納された腕輪が光るとリバティがタツミの体を奪う様に現れた。
「ミスト! アンタわぁぁぁぁぁ! 絶対に言うなって言ったでしょ!」
「えっと……リバちゃん。強引に出て来るのはどうかと思うんだけど?」
リバティはすぐにミストに詰め寄ると襟首を掴んで前後に大きく揺すり出した。当然抱かれているクロも巻き添えを喰らっていたのは言うまでも無い。
「べ、別に良いんじゃないかな? どっちも素敵な響きだと思うよ?」
ヒジリが暴れているリバティを止める様に声を掛けると、視線がそちらに移って睨みながら訪ねて来た。
「本当に思ってる? 若い頃に付けたから完全に中二病的なノリだから嫌だったのに……いや、その眼差しで分かるから……同情は要らないから!」
ヒジリのフォローも効果が無いまま取り乱しているリバティだが、その様子を見ていたレンがボソリと呟いた。
「もしかして……憑依主が変わる事で、段々と日本人的にそう見えると思って来たのか? と言うかグランド・リバイバーの通称の時点で、元々が絶対に外国人だろ? そんな昔から存在しているなら元々の呼称が一番正しいんじゃないのか?」
「だ、だって……みんなは変とか思わないの?」
リバティは手を止めながら周りを見回すと、全員が黙って頷いていた。
「通り名が英語なのに技が日本語だから変だと思っていたのだけど……そう言う事だったのね。」
「まぁ今の時代に日本人が付けたら……ってなるけど。元々の名前なら気にする方がおかしいわよ。」
ユキとナギが気にする事は無いと言うと、リバティはホッとした表情を浮かべるとそのままタツミと入れ替わって精霊界へ戻った。
「何? この為だけに勝手に自己召喚したのか? 疲労が溜まってる所にやられたから虚脱感がハンパ無いんだが?」
タツミは戻った途端に床にへたり込むと、ヒジリが慌てて倒れない様に体を支えた。
「ホ、ホラ。リバちゃん的には大事な事だったって事だよ。」
ヒジリも愛想笑いをしながらなだめるが、その様子を楽しそうに見ているミストとレピスを見て、確実に狙ってやったと理解した。




