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第49話 質の違い

「レン、考えられる方法はどれ位有る?」


「単純に精霊力をぶつけるか、周囲を破壊して門自体を物理的に破壊する。後はゲート自体を岩なんかで物理的に塞ぐだな……ナギは何か思いついたか?」


「属性が問題の可能性も有るから相性の悪い属性の攻撃を門に当てるとかはどうかしらね?」


「属性相性なら水中に有る事から水属性だとすると、結局は雷属性のタツミの出番になってしまうぞ? 稲葉さんがここに居て俺らで解決しろと言う言動を見たら相性では無さそうだな。」


「だったら同属性ってことが考えられるわよ? それならレンで行けるわよ。でも稲葉さんは神器無しで出来ると言っただけで私達で出来るとは限らないわよ? 状況だけで判断は良くないわよ、ゲームじゃ無いんだから。」


「だったらまずは俺達の精霊力をぶつける所からだな、単独属性なのか、複数属性が必要なのかも考慮する必要が有るな。ユキもいつでも行ける様にしておいてくれ。」


「え? あ、ええ、わかったわ。」


 ナギとレンの会話の速さに驚きながらもユキは相槌を打つが、こういう時の二人の思考回路の速さと戦術を組み立てるセンスには舌を巻いていた。


 考察と同時に可能性の排除と消去法による成功へのプロセスへの話し合いが早いかった。よく漫画なんかでは可能性に賭けるとか言ったりするが、二人の中では失敗が前提ですぐに次の行動へ移る段取りを決めているのだ。


 想定外の事態は一瞬で致命的な隙を生むと理解しているからこそ失敗が当たり前。一発成功なんて有り得ない幻想だと、リアリティを突き詰めて討論をしていた。


「この流れを一通り試してダメなら一旦ここへ戻って来てタツミ君達へ援軍をお願いするわよ。」


「そうだな、俺達で出来る選択肢はこれ位か? 後の懸念は精霊力の出力不足による失敗だが……自分達の実力を測る意味では受け入れるか。」


「だわね。と言う事でユキが最初のアタッカーになるわよ。最終的に3属性で打ち込んでダメだった場合は退避するから、精霊力の消耗には気を付けてね?」


 二人の中で作戦が纏まりユキに確認を促す様に視線を送るが、困惑しながらも最後の一文だけは頭に入っていたのか再確認をする。


「要するに門までの道のりをアンタ達が何とかするから、そこに私の全力の一撃をぶち込めと?」


「ちゃんと聞いてたか? 頼むから動けなくなるまでは辞めろよ? 退避行動はユキに頼らざるを得ないんだからな?」


「そうなると……『フラッシュ・クラッシャー』はお預けね。モード『閃光』までで止めておくわね。」


「流石にあの威力の技をこんな狭い洞窟内でやらないでくれ、生き埋めになるぞ?」


 冷静に出す技を考えているが地形を考えろと言って説教を始める。するとユキは想定していなかった様で慌てて謝っていた。


「後は位置の確認だな。感知した場所はどこらへんだ?」


「ええっと、大雑把な位置だけだけど、丁度この裂け目から見えている水面から少し奥の方に大体20メートル位の所かな?」


「随分と大雑把だわね……探知の精度が謎だわよ。」


 ユキの曖昧な発言にナギが呆れているが、レンにとっては充分な情報だったようで地面に木の枝を使って図を書き始めた。


「俺が精霊力を通して探知した水面下の地形が大体こんなものだ。ソナーの様な反響の仕方で探知しているから完璧では無いが、ユキの話と総合するとここら辺が怪しいな。」


「ナルホド……ユキは精霊力を探知出来て、レンは水中の物理的な物を探知出来ると言う事なのね。」


 ナギは図を見ながら感心していると、稲葉も興味深そうに頷いていた。


「うむ、素晴らしいな。精霊術はイメージの力と言う言葉ピッタリの成長だな。そして特性を利用した戦闘考察力も素晴らしい。」


「褒めても何も出ないぞ。むしろ手伝ってくれるなら楽だが……」

「私達の成長の為に敢えて手出ししないって訳だわよね?」


「分かってるなら宜しい。」


 二人は首を軽く横に振りながら霊装銃に弾丸を補充し直して準備を整える。


「しかし陸上戦なら私の『風の知らせ(ウィンド・ウィスパー)』で全部索敵が完了にするのに……悔しいわね。」


 ナギが不満そうな顔をしているが、流石に水中に風は届かないので今回は別の役割に徹する事にした。


「問題はその海底までどうやって行くのよ? 何か作戦はあるのかしら?」

「ん? そんなのユキがさっき言ってたのをやるしか無いだろ?」

「え?」

「ナギが空気の玉を作って、俺が水流を操作して海中に潜るんだよ。」

「マジで?」

「マジだ。他の案が有るなら是非言ってくれ。」


 ユキは冗談半分で言った自分の案がここで採用されるとは思わず焦り出した。そして漏れなくその乗り心地の悪そうな移動手段に自分も巻き込まれるのだ。


「さて、空気の玉を作るわよ。二人とも私に近づいて。」


 ナギが練習を兼ねて3人を覆う空気の流れを作り出す。つむじ風の様に直径3メートル程のギリギリ入れる程の風のボールに包まれる。


「地上だと砂や土埃が邪魔だわよ……この酸素量なら1回の行動はおよそ5分程度しか無いわよ。」


「了解だ、ユキはいつでも撃てるようにモード『閃光』を……って3分制限だっけか? 5分だっけ?」


「インスタントラーメンと一緒と覚えるな! 3分よ! それ以上は反動が来るから水中に入り次第発動させるからね。」


「分かったウル〇ラ……」

「それ以上言ったらぶっ潰すからね!?」


 レンのジョークにユキは巨大な光のハンマーを具現化させて振りかぶっていた。


「良いから行くわよ。むしろ精霊力の無駄使いをしないで欲しいわよ。」


 ナギが呆れながら二人に準備を促すとユキは意外そうな顔をした。


「ねぇ、昔ならレン君が他の女とこうやって話しててもヤキモチ焼いていたのに、随分と大人しくなってるのね?」


「そう言えばそうだな。昔は火神以外の女子と話していると不機嫌を隠して無かったのにな。」


 2人に不思議そうに聞かれたナギは、ふと視線を上に向けながら唸る様に考え込み始めた。中々自分でも納得できる様に言語化するのに苦戦している。


「ん~うまく言えないけど……多分、よその女に取られる心配がなくなったからだと思うわよ。レンも大概にヘタレだったから。」


「あ~確かに……精霊界に行く前は大学合格したら付き合うとか言ってたんだっけか? それまでは友達以上恋人未満の関係とか言ってたわね。それじゃ、他に意中の男が居るヒジリちゃん以外と仲良く話していたら焦るか。」


 ナギの返答を聞いてユキは腑に落ちた表情をするが、逆にレンは自分のせいで嫉妬深くさせていたのかと驚愕の表情を浮かべていた。


「レン……何でアンタがそんなに驚くのよ。そもそも女心に対しての理解が鈍いのが原因でしょうが! そこら辺はタツミ君と一緒だわよ。いや、気付いておきながらそういう態度を取ってる分、余計にタチが悪いわよ?」


「え……あ……はい、す、スミマセン。」


 半端な態度を取っていたと認識させられたレンは素直に謝ると、横でその様子をニヤニヤとしながら見ているユキが揶揄う。


「で、今は正式に付き合ってるから気にしないと言う事ね。でも浮気は気を付けなさいよ?」


「ユキ……レンにそんな甲斐性が有ると思う? そもそも私をフッた時点でお義姉さんからも制裁が入るわよ。」


「既に姉を取り込んでいると……何て恐ろしい子。」


 ナギの発言にユキが引いている。そしてレンはそんなに甲斐性が無いように見えるのか? と少し落ち込んでいた。


「まぁ……後は……そ、その……ふ、普段の行動からね……ちゃんと好きだって伝わってるから……信頼してるわよ。」


 レンの様子を見てナギはフォローするつもりだったのか、照れながら両手の指を合わせてモジモジしながら小声で呟いた。その言葉を聞いてレンも一拍遅れて顔を赤くしながら返事をする。


「す、好きって言うか……もう、そう言うのは過ぎて……い、愛おしいと……思ってるぞ。」


 一気に甘酸っぱい雰囲気になり、稲葉はニヤニヤとしながら傍観しつつも、ユキの表情は段々と引きつり出した。


「このバカップルが! ケッッッッッ!!!」


 最大限の皮肉と嫌味を込めたユキの舌打ちが盛大に響き渡った。

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