第48話 原因を探れ
「マイナ18の175! マイナ45の300! 前方に10移動するぞ!」
「了解、角度の修正したわよ!」
指示を出しながらも囲まれる事が無いように移動をくり返しながら砲撃を続けている。移動自体も水を操作しているので走ると言うよりは滑る感覚でスムーズに素早く動いていた。
「一気に来るぞ! 14の165! マイナ60の20! 2時方向に30移動後に10の140と160!」
「その調子で良いわよ! 残弾8! 一旦CT入るわよ!」
「了解、俺の霊装銃も使ってチャージをしてくれ!」
次々とサメゾンビを爆散させながらレンとナギは冷静に精霊力の残りを計算しながら再チャージのタイミングを伝える。
段々と慣れて来たのか、水面に浮かぶと同時にだけではなく襲い掛かろうとしていたサメをレンが回避して、宙に舞ったままのサメゾンビにも次々に撃ち込んで行った。
「うわぁ……すでに30以上は倒しているのにまだ出て来るのね。これはどっかに大元が有りそうな気がするわ。」
陸地で見ていたユキは一向に減らないサメゾンビを見ながら自分も探知系の精霊術を使うか悩み始めていた。
そんな事を考えながらも、レンとナギの戦いは異常なまでのコンビネーションに目を奪われていた。二人はまさに阿吽の呼吸と言った感じで、お互いに精霊力の残量を意思疎通しながら適切に補助し合い、段々とレンの頭の動きと視線を見ただけでナギは次弾の位置を把握し始めたのだった。
「そこそこそこぉぉぉぉ!」
ナギのテンションが少しおかしくなっている感じがするが、それ以上に違和感が有るのは段々とサメゾンビの数が増えている事だった。
明らかに異常な速度で二人は殲滅しているのに、水面に浮かんでくる数が増えているのだ。もちろん爆散した死骸は周囲に漂ったままだ。
「レン君! 何か水中に本体と言うか術者みたいな存在は感じないの!?」
「水中にはこいつ等しか感じない! 遠方で操作しているかも知れない! 本当に自然発生しているだけにしては数が不自然過ぎる!」
レンの返事を確認してユキは逆に地上や洞窟の天井の穴の先を疑い始めた。もしかして上から悪さをしている奴がいるかも知れないと踏んだのだ。
「私は念の為に上の方を調べてみるわ! 悪いけど探知中のこっちのフォローもお願いね!」
「な!? 仕方ねぇなあぁぁぁ!」
レンは慌ただしく動いたまま返事すると稲葉から渡されていたサングラスをナギにかけてもらう。ナギもサングラスを付けるとユキに合図を送った。
ユキは霊装銃を使ってアラスティアを召喚し、悠久幻輝結界を展開した。眩い光が洞窟内を包むが、サメゾンビ達は動じる事無く水面に浮上して攻撃を続けていた。
予想どうり視覚には頼っていない事が証明されたが、今度は一部がユキの方へと襲い掛かる。レンの指示を受けてナギの狙撃がそれを防ぐが、先程よりも明らかに難易度が上がったのかレンの頬を汗が伝い始めた。
(洞窟内の精霊力を感じるのよ……光は水でも透過する。そして範囲を広げて隅々まで意識を広げて!)
ユキは背中をレン達に任せて探知に意識を集中させる。しばらくして段々とサメゾンビの動きを精霊力で認識出来るようになり始めた。そして他の反応を感知するべく範囲をさらに広げる。
「ユキ! 洞窟の上を探知するなら南側に集中して! 風の流れから北側からはそう言った精霊力のニオイはしないから!」
光量が増す洞窟内で何とかサングラスで視界を確保しているが、段々とそれも怪しくなってき始めた。
レンは段々と探知に慣れ始めたのか、水中にソナーの様に流している精霊力を頼りにサメゾンビの位置を把握してナギへの指示を続けている。ナギも体の向きをレンと一緒に固定して位置を間違えない様にしていた。
「見つけた! って何よコレ!?」
ユキが何かを発見して大声を上げると悠久幻輝結界を解除した。そしてすぐにレンとナギへこちらへ来るように指示した。
二人はサメゾンビを撃ち倒しながら陸地に戻ると同時に、アラスティアが表に出て光のモーニングスターを具現化する。
「いったん上に逃げるぞ!」
声と同時に鉄球を洞窟の上まで投げて近くの木に巻き付け、二人を抱えると鎖を縮めて天井を抜けて外へと退避した。
「さ、流石に疲れた……で、何が分かったんだ?」
「そうだわね、休憩を挟みながら説明して頂戴。」
レンとナギは想像以上に消耗したのか、天を仰いで大の字で寝転がったままユキに説明を求めた。
「恐らくだけど海底の方に小規模だけど門が開いてるっぽいのよね。」
「「は!? 門が!」」
ユキの発言に二人は慌てて上半身を起こして信じられないと言った顔をしている。
「でね、そのゲートから恐らくだけど精霊力を食べようしてサメゾンビ達が迷い込んでいる様なのよね。だから倒してもキリが無いし、死骸は合っても精霊界に戻った残留思念が再度肉体を得て戻って来てるんじゃないかしら?」
「つまりは門を塞がない限り終わらないって事か。どうりで俺の探知に引っかからない訳だ……あくまで動く物体だけを認識していたからな。」
ユキに説明にレンは納得した表情になるが、問題はその方法だった。
「門を開けたり閉じたりって神器以外に出来るのか? 俺達は持って無いだろ?」
「そうだわね。一度稲葉さんに相談か、タツミ君を連れて来る?」
レンとナギは自分達には手に負えないと判断して、一度戻る事を考えた。しかし不意に後方から人の気配が現れたのだった。
「開けるのは神器が必要だが、閉じるには別に神器でなくても問題無い。ただしかなりの力を必要とするがね。」
声の主の方を振り返ると、そこには海パン姿のままの稲葉が居た。
「どう言う事? さっきまで居なかったわよね? 急にニオイが現れたわよ。」
「それは内緒だ。君の権限外だよ。」
ナギの疑問に稲葉はニヤリと笑いながら回答を拒否した。しかし、そんなやり取りを無視するかのようにレンは稲葉に質問した。
「どうやるんだ? どうせ稲葉さんの手のひらの上なんだろ? ここも偶然とは思えないし、どうせこれが本来の目的なんだろ?」
「そうだ、隠す必要も無いが、遊び半分に仕事半分だ。そして……」
「私達の成長が目的……って事だわよね?」
被せる様にナギが言うと稲葉は黙って頷いた。その様子を一人だけ理解出来ていない様にユキは交互の顔を見ていた。
「そうだ、前にも言ったが若者は成長しないとな。」
「分かったよ。で、どうやったら門を閉じれるんだ……ってコレも自分で考えるべきか。」
稲葉の返事を聞いてレンは答えを聞こうとしたが、すぐにその考えを改めた。何故なら既にヒントは貰っていたからだ。
「そうね、いつでも答えを教えてくれる人が居る訳じゃ無いわよね。だったら自分達でやるしかないわよ。それに神器じゃ無くても大丈夫って聞けただけ大ヒントだわよ。」
「ね、ねぇ……何で二人はそんなに前向きなのかしら? 私は答えを教えてもらえるならそっちの方が良いと思うんだけど?」
レンとナギの回答を聞いて、ユキだけが納得していない表情をしていた。
「言わなくても大丈夫の様だな。そうだ、自分達で試行錯誤して戦闘考察力を鍛えるんだ。ユキ君の場合はヒントが無ければ自分で何とかするポジティブさが有るから気にしていない。」
「何か……それってバカにしてる気がするんですけど?」
「そんな事は無い。褒めているんだがな?」
ユキと稲葉が言い合っているうちにレンとナギは作戦を考え始めていた。




