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第47話 迷える魂

「な、なななな……」

「お、おおおおお、落ち着きなさいよナギ。」

「いや、ユキも落ち着け。アレは一体なんだ?」


 混乱しているナギとユキを落ち着かせる様にレンは冷静に努めようとしてた。自分だってあんな物を見たら混乱するのだが、ここで自分まで混乱しては収集が付かなくなると判断して、一生懸命自制しているのだった。


「恐らくだが……ここは精霊力が濃いからな。俺のように意識だけが漂っていたのを、サメの死体に憑依してそのまま動かしているんじゃないのか?」


「だから腐乱したまま暴れているのか……って何で光の球だけあんなに狙うんだ?」


 真偽が定かで無いガラントの説明に問答する時間も無意味と判断したのか、納得した様子を見せるレンだが、気になっているのは光の球だけを狙って現れている数体のサメゾンビ達の行動だった。


 光に反応するなら今自分達が居る場所の方が理屈に合うのだが、何故かこちらには見向きもしていなかった。


「なぁレン。具現化した際に契約出来なかった下位精霊ってどうなるって言った?」


「確か段々と精霊力を消耗して消滅するんだよな? それで消滅しない為に付近の精霊力を喰うと……」


 そこまで言った時点で3人とも現状を理解した。つまり、光の球ではなく精霊力を喰っているのだ。となると、精霊を召喚している自分達も十分にターゲットになると言う事が理解出来た。


「恐らく霊装銃で精霊力をチャージした時点でこっちに来るぞ。今はだいぶ精霊力が低くなっているからな、今のうちに作戦を考えておけ。」


 ガラントの言葉に3人は霊装銃を手に持って相談を始めた。


「ここで迎え撃つか?」

「いや、ダメね。ここだと狭いからサメの物量で来たら押し出されるわよ。」

「私の幻覚を利用してその間に逃げるとか?」

「目で認識している訳じゃなさそうだ。精霊力に反応しているなら難しいだろう。」

「と言う事は視覚が無いから私がお荷物じゃない。」

「ユキは光の熱量で攻撃できるわよね?」

「いやいや、水に熱を取られるから威力激減になるに決まってるでしょ?」


 今の現状だと光量も乏しく、冷たい洞窟内の水も相まってユキの戦力は期待できそうに無かった。そしてレンとナギを主体として作戦を考える。


「流石に俺も水中戦なんてやった事無いぞ?」

「いや、ここは精霊界じゃ無いんだから普通に溺死するわよ。」

「水上歩行で戦うか? そしてナギが後方から狙撃で援護を……」

「恐らくだけどダメね。狙撃で精霊力を使えばこっちも狙われるから分断されるのが予想されるわよ。」


 戦い方を模索するがフィールドが合って無さ過ぎた。魚と水場で戦うのだ、下手をすれば海底に引き込まれた時点でアウトだ。水の精霊術でも海を割るなんて事は神器持ち並の力が必要になるだろう。


「だったら『空気の玉』を作って水中戦はどうかしら?」


「「空気の玉?」」


 ユキの提案に二人は首をかしげる。そしてその提案は想定外に近い内容だった。


「要するにナギの風の精霊術で空気の玉を作って水中に入る。レン君は水流を操作して空気の玉を動かすってどうかしら?」


「却下だ。間違いなく水中酔いする。」

「そうよ! 私達の乗り物系に対する弱さを甘く見ちゃダメだわよ。」


「そこって威張って言う所なのかしら? じゃあ……もうこうなったらおんぶして戦いなさいよ。」


 ユキが言うにはレンが水上歩行をしつつナギをおんぶして、足元から海水に精霊力を流して水中の探知をする。そして敵の位置を知らせてナギが出てくる前に狙撃すると言う事だった。


「水中の探知は……出来なくも無いが精度の保証は無いぞ?」


「私も実際にやってみてわかったけど悠久幻輝結界の中では闇属性だけは感知できたわ。恐らくだけど練度を上げれば中に有る物は全部把握できるんだと思う。つまりはイメージよ! レン君もここで成長してみなさい!」


 レンの微妙そうな表情に対してユキは説教する。そして精霊術の基本でもあるイメージ力も大事なのだと忠告したのだった。


「確かに……ユキの場合はポジティブだわよね。だからこそイメージ出来て成長してると言う事かしらね。レン、私達も出来ると思って前向きにやるわよ!」


 ナギは何故か急にやる気を出しながら銃を構える。レンも「マジか……」と言いながらも霊装銃構えるとこめかみを銃で撃ち抜いた。


「行くぞガラント! 水上歩行しつつ足裏から精霊力を流して水中探知するぞ!」

「器用な事を考えたな! しっかり集中してイメージしろよ!」


「行くわよパティス! 今回はレンとのコンビネーションだから指示受けは私がやるわよ。高速切り替えをするから『風の弾丸(ウィンド・バレット)』の装填を瞬時にお願いするわよ!」

「了解、お二人さんのアツアツコンビを見せてね!」


 精霊を召喚すると、サメたちの動きにも変化が見られた。光の球を喰い尽くしたのも有るが、再び深く潜って陸地の獲物をどう仕留めようか考えているのだろう。


 その間にレンはナギを背負って水面へと歩を進めて広い場所に陣取ると足裏に精神を集中させていくのだが……


「何か集中が乱れてないか? レン。」

「いや……大丈夫だ、すぐに落ち着くから。心頭滅却……」


 何やら落ち着かない様子のレンに対してガラントが不思議そうにしている。その様子ですぐに何が起きているのか察したナギは顔を赤くしていた。


「レン……気持ちは分かるわよ。でも非常時だからね!」

「分かってる! だから下手に動くな! 余計に背中に感触が伝わる!」

「このスケベ! 命掛かってるんだから後にしなさい!」


「あの二人……こんな時でも痴話ゲンカなの?」


 離れて陸地から見ていたユキは呆れた顔をで二人を眺めていた。確かに小柄で軽いナギはおんぶしても十分に動きやすいだろうと思ったが……人より大きめの胸でレンの集中を乱すとは計算外……いや、計算に入れるべきだっただろう。


 お互い水着姿なので余計にも密着度が上がっているのだ、ある意味必然だったのだがそこはレンの精神力に期待するしかなかった。


「仕方ないだろ! 健全な男子なら普通は! って砲角マイナス75、60度! 続いてマイナス45の30度!」


「了解! 『風の軌跡(ウィンド・バレル)』での破壊重視の『ランチャーモード』で行くわよ!」


 レンの指示が飛んだ瞬間にナギは風を集めて何か見えない肩に担ぐロケットランチャーの様な物を具現化して両手に構える。そして瞬時に指示された方向へ銃口を向けると素早く風の弾丸を撃ち出す。


 瞬時に髪が薄緑色になると風の弾丸を装填して再び黒髪へと変化した。


「次! マイナス64の190度! 24の270度!」

「どんどん来い!」


 次々と撃ち出すと水面に着弾する瞬間にサメゾンビの頭が丁度出てきて命中すると激しく頭部だけでなく体全体を吹き飛ばした。


「うわ~風の弾が貫通しつつも内部で爆発させてるから粉々になってるわね。」


 ユキはその状況を見てこの二人は何だかんだでコンビネーションと言う意味では最強のコンビなのでは? と呆れて見ていた。


 二人は共通の趣味でMMO系のガンシューティングをやっているので狙う角度や相手の位置を伝えるのが物凄く早いが……この二人にしか通じない呼吸と言語だろうなぁとユキは思った。

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