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第41話 敵対組織の存在

「今回は君達だけで来ると言う事で、エレミアとも合わせる予定にしていたのだが。今回の事は他の皆にはまだ内密に願いたい。」


 稲葉は普段の姿に戻ってタツミ達に口止めを依頼する。


「レン達は下手に上位勢に巻き込まれると危険と言う事か?」

「知ってると分かれば狙われるリスクが高いからな。当然の措置になる。」

「だとしたら……リィムとエル君はどうしますか?」


 ヒジリの言葉に稲葉は難しそうな表情をする。そしてしばらく間を置いてから言いずらそうに話し始めた。


「一応……レピさんが言うなって。」

「なア、稲葉。レピさんって誰ダ?」


 エレミアにもレピスの事は話していなかった様で、初耳と言わんばかりに食い入る様に稲葉の顔を覗き込みながら聞いて来た。


「あ~何と言うか……飼い主? そしてタツミ君の義姉だ。」

「義姉? 随分ト面白そうな家庭だナ。」


 再びタツミの方に興味が湧いたエレミアだったが、先程の事を踏まえたのか今度は距離を詰めずに好奇心の視線を向けた。


「他人事だと思って……説明して良いのか?」

「レピさんに関してはダメだ。エレミアも探るな、この時点で意味は分かるな?」


 稲葉が首を横に振って制止すると、意味を理解したエレミアは残念そうな顔をして頷いた。


「さて、お互いに情報を公開しすぎる事は好ましく無い。どこから情報が洩れて対策されるか解らん。」


 稲葉は未だにタツミやヒジリに興味を抱いていたエレミアの質問を止める様に話を終わらせようとした。


「な! イ、稲葉! 酷いじゃないか……もう少し知的好奇心を満たさせロ!」


「ダメだ。さっきも言ったが情報漏洩は危険だ。ここまでの譲歩は同じ特異能力者セカンド・スキラーとしてだが、敵対勢力が有る事も忘れるな。」


 敵対勢力と言う言葉にタツミ達は首をかしげると、稲葉は二人に説明を始めた。


「キミ達だけに言うが、スディレットとは逆に自然信仰と言うか……神聖至上主義のグループが居るんだ。日本で言うなら陰陽師に対しての呪術師の様な物だ。」


「そそ、日本はスディレットが大多数をしめてルがイタリアでは逆でね。私はどちらかと言うと追われる立場なんだヨ。ちなみに向こうでは私達は魔術士ウィザード、向こうは神聖術士ホーリーマジシャンと呼ばれているヨ。」


 エレミアはどんよりとした目のまま補足説明を始めると、再び『嘆きの預言書(エレミア・オラクル)』を取り出した。


「キミ達は特異能力者セカンド・スキラーと戦った事が有るし、キミらも該当者だから知っているだろウが、特異能力者セカンド・スキラーは神器に自身の精神的存在を重ねた神器2個分の能力を持った精神体ダ。」


「ああ、知っている。そして憑依主の肉体が有る限りはその人の能力も使えるんだったよな?」


 タツミが知っている事を補足すると、稲葉とエレミアは頷く。


「そうダ。理論的には憑依主が神器持ちナラ3個分の能力を得ル事になる。」

「実物見てるから知ってるよ……」

「そ、そうだね……」

「キミ達……余計な事を言うな。エレミア、本題に戻ってくれ。」


 脱線しかけた話を稲葉が戻すと、誰かと聞きたがっていたエレミアは残念そうな表情をして話を続けた。


「今から見せるのハ、私の憑依主の精霊術ダ。ページを見ろ。」


 そう言うと、エレミアは嘆きの預言書を二人の前に差し出して見せる。二人は促されるまま覗き込むと難しそうな表情をした。


「これ……イタリア語?」

「た、多分ね……読めない。」

「あ……スマない、日本語に直そう。」


 エレミアは苦笑いしながら預言書に精霊力を込めると、文字がウニョウニョと動き出して形を変えていった。


「コレは……『エレミア・ガーデント:〇月〇日までに日本に亡命しないと死亡』? 何だこれ? 預言か?」


「そうダ。これは断片的ダガ、不幸を回避する為の預言を出していくれる能力ダ。私の能力に影響されたのかシナジーの高い精霊術ダロ?」


 エレミアは微妙に怖い薄ら笑いをしながら自慢して来た。タツミと稲葉は微妙そうな表情をしていたが、ヒジリだけはその文章に違和感を覚えていた。


「ね、ねぇ……エレミアが死亡ってイタリアには特異能力者セカンド・スキラーか、それ並のExTemdedが居るって事ですか?」


「私の知る限り居ないな。ただ、スディレット同様に相手も国をまたいで活動する者が居る。それにエレミアはサポート型だから、アタッカー型と正面から戦ったら厳しいだろう。」


 稲葉がヒジリの疑問に答えると、改めてエレミアの方を見る。


「今回は見てもらいたいのはもう一つある。」

「そうダネ。今回の亡命した情報を見せるヨ。」


 再び預言書の文字が動き出す。そして二人が新たに現れた預言を読むと表情が凍り付いたのだった。


「こ、これは……」

「え? これって私達の事ですか?」

「あア、先程の試合で確信したヨ。」


 二人は顔を上げて視線を向けるとエレミアは静かに頷いた。改めて文章に視線を送ると、そこにはこう書かれていた。


――――――――――――――――――――

全てを凪ぐ力の持ち主と、

爆炎と再生の力の持ち主の協力を仰げ

しかしかの者の仲間の命を重んじれば

仲間には知らせてはならぬ

知る前に太陽へと近づく術を得るべし

その先に有る物を得なければ地の底へ落ちる

月が6周するまでが期限

かの二人の協力を仰ぎて9の龍を揃えるべし

――――――――――――――――――――


「「9の龍?」」

「おそらく上位精霊の上、龍位精霊使いの事では無いかな?」


 タツミ達は首をかしげると稲葉はすぐに推察を述べる。そしてエレミアはタツミ達に視線を移しながら確認する様に言った。


「爆炎と再生の力はヒジリの事だろウ。全てを凪ぐ力はタツミで間違い無いダロ? 先程のティルのエクスプロージョンが壁に当たっタ時にその力を使ったダロ? あの威力なら、いくらこの施設でも何かしら破損スル。」


 タツミは自身の能力を指摘されて少々驚いた顔をするが、バレても構わないと言った表情に戻る。


「全部とは言わないが全属性を利用したキャンセル能力が神器の力だ。」

「全部ではナイか……過信して無いようダネ。」


 各自の精霊術の紹介が終わると、稲葉は改めて二人にこれからの方針を伝え始めた。


「今の預言書は全て極秘事項だ。そしてコレが理由で君達を偶然を装って覚醒させた理由でもある。」


「ヤッパリか……偶然にしては出来過ぎだと思ってたが。」

「だ、だよね。レピスさんが絡んでそうな気はしてたけど。」


 二人は余り驚かずに事実を受け入れていた。過去の精霊界でトラブルが有ればレピスを疑う癖が付いていたのだろう。


「レピさん……信用無いんだな。」


「腹黒過ぎて無いな。」

「いつも何か企んでいる気がするよね……」


 二人のストレートな物言いに稲葉は呆れた表情をしていたが、気を取り直して説明を続けた。


「事の発端は君達が『神の代行者(モーシェ)』を滅ぼした事に有る。彼は敵対組織の精霊界担当だった様だ。」


「滅ぼしたと言うか、レピスに巻き込まれたの方が正しくないか?」

「だ、だよね……別に私達は最初から戦う気は……」


 稲葉は二人の言葉に膝を軽く折れると、体勢を立て直してハンカチで汗を拭きながら弁明を続ける。


「いや、キミ達の場合はヒジリ君にリバちゃんが憑依していた時点で巻き込まれていた様な物だろう?」


「俺達が巻き込まれたって認めてるぞ?」

「そうだね、リバちゃんの復活目的でレピスさんが巻き込んで来たんだから。」


 稲葉はぐうの音も出ない状況になったが、状況説明を続ける様に二人の苦情を無視する事にした。


「その話は置いておいて、敵対組織が気付いたらしく。こちらでの活動を活発化させているのだ。」


「それで、レン達に任務を与えながら成長の余地を見ていたと?」


 タツミが納得した様に確認すると黙って頷く。


「そうだ、相手の情報は未確認の者が多い。出来るだけ表向きはスディレット内の各国の勢力争いと思わせながら鍛えていく予定だ。」


「敵対組織の上位者に遭遇した場合はどうするのですか?」


 ヒジリが心配そうに確認すると、エレミアが不気味な薄ら笑い始めた。


「安心したまエ。稲葉が随行するか、私がコッソリと闇属性の影移動で付近に潜んでいル。」

「エレミア、その笑い方怖いから……」


 目がいっているストーカーの様な笑い方は流石に全員が一歩引くが、エレミアは気にしていない様だ。


「と言う事で、キミ達はそれを意識しつつ他のメンバーのフォローに回って欲しい。もちろん他言無用だ。晴香君にも一切言ってはならん。」


 その言葉を聞いてやっと一連の流れを理解した二人は、一つだけ意見が一致していたのだった。


「「レピスに文句言って良い?」」


 当然の様に外部での事になるので却下されたが、二人の不服そうな顔をなだめる稲葉を見てエレミアは苦労人だなとしみじみと頷いていた。


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