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第38話 雷火爆裂弾

「バカな!? 2体同時召喚ダト!?」


 エレミアはその光景を見て唖然とした。普通の人間が契約出来るのは精霊1体までだ。しかも同時召喚や3属性を持つ方が異常なのだ。


 稀に例外的に2契約を交わす者もいるが、交互に使う等で同時使用は見た事が無い事例だった。


「あくまで神器や精霊有りでの戦いだろ? だったらこれは反則じゃ無いよな。」

「分離状態での戦いなのに、何故コノ精霊は質の高い精霊術を使エル!」


 エレミアは分離状態の精霊は力が大幅に落ちるのを知っていたので、アラスティアの武器や体の動きを見て違和感を覚えていた。


「ふむ、私から教える義理は無いな。」

「そうね、これ以上しゃべらされる前に終わらせましょ。」

「一気に行くぞ。来い雷帝刀・鳳雷」


 召喚されたティルも会話に混ざり、タツミが頷くと同時に再び雷帝刀を具現化する。炎と雷を纏った何とも幻想的な刀身をあらわにした。


「まずは痛んだ筋肉とケガの『自己回復強化』ね。さっさと治すわ。」


 ティルが言うと同時にタツミの体の傷が物凄い勢いで治って行くのが見えた。


「ナ! ソノ回復はどう見ても自己回復強化のレベルじゃ無いだろうガ!」


 エレミアはその回復速度の異常さから叫ぶが、目の前のアラスティアの剣を躱すので精一杯になっていた。


「お前の神器の弱点は光属性には効果が弱くなると言う事と、強い命令は結界内に長く居ないと使えないと言う所か?」


 エレミアは指摘におどろいた表情を浮かべる。言葉は出さなかったがそれだけでタツミは納得した様だった。


「行くぞ! 巻き込まれるなよアラスティア!」

「そもそも巻き込むんじゃない!」


 アラスティアの怒声を合図に雷帝刀の剣先に電気を纏った火球が発生する。それは次第に大きくなり、更に精霊力が圧縮されて行く。


「キミのその力は暴発する!」


 エレミアは咄嗟に危険を感じて言葉を発すると、火球はすぐにその場で爆散した。その余波は物凄く、爆風でエレミアは壁まで吹き飛ばされて打ちつけられた。


「グッ……まさか巻き込む前提の術ナノカ?」


 エレミアは背中に走る痛みをこらえながら前方に視線を向けると、目の前には大きな光の盾を構えたアラスティアが見えた。


「まさか……こっちの視界を塞いでル?」


 盾の後ろで物凄い精霊力が高まっているのを感じるが、何が起きているのか見えないエレミアは預言を発する事が出来ないでいた。


「早く撃て! そんなにはもたないぞ!」


 アラスティアの言葉と同時にエレミアは慌てて強制分離を告げようとするが、言葉が出て来なかった。


(バカな! 言葉に出来ないと言う事は分離させる事が不可能ダト!? どう言う事ダ! 私より上位の力なのカ!?)


「行くよ! 死なないでね!」


 ティルの声が響くと同時に光の大盾とアラスティアの姿が消える。その奥には先程と同じく雷を纏った30㎝程の火球が浮いていた。


「「雷火爆裂弾ライトニング・エクスプロージョン!」」


 タツミとティルの声が同時に響くと同時に、火球は目にも止まらぬ速さで電撃の様に撃ち出される。


「この精霊術は私に……間に合わナイ!」


 エレミアは咄嗟に預言で防ごうとするが、撃ち出された後ではどうしようもないのか、本を盾にする様に咄嗟に構えた。


 そして雷火球はエレミアの手前で大爆発を起こすと、その場にいた全員が吹き飛ばされたのであった。


――――――――――――


「おぃ……もう少し火力下げれたよな?」

「何を言ってるのかしら? 爆裂弾に手加減なんて言葉は有りませんけど?」


 タツミが苦情を言うが、中から聞こえるティルの声は陽気なままで反省の色は見られなかった。


「アルセイン……ちょっとこっちにおいで。」


 タツミの後ろから怖い笑顔のヒジリが顔を出すと、タツミの手を握る。するとティルはタツミの中からヒジリの中へと強制移動させられたのだった。


「ちょっと! 精霊を強制移動なんて!」

「アルセイン、もう少し契約者の言う事は聞こうね?」

「だって久しぶりに暴れれるのに……」

「暴れ過ぎだよ? お仕置きが必要かな?」

「あ……ご、ゴメンナサイ……」


 ヒジリの圧に大人しくなるティルを見ながら、稲葉は引いた表情でタツミに尋ね始めた。


「な、なぁ……ヒジリ君って怒らせちゃダメな子かい?」

「普段は控えめで温厚ですけど、何故かティルには厳しいんだよな。」

「ティル君限定なのかい?」

「それ以外に怒る所は見た事無いな。」

「……君も怒らせるなよ? あの子は怒らせたらダメなタイプだ。」


「稲葉さん、何かおっしゃいましたか?」


「いえ、何も。」


 ヒジリはゆっくりと振り返りながら稲葉に視線を向けると、その圧に耐えかねて稲葉も沈黙してしまった。


「ヒジリ、怒るのは後にしろ。決着はついたのか?」

「あ、そ、そう言えば……勝負は?」


 気まずい空気をアラスティアが制止すると、ヒジリの表情はいつも通りの優しい表情に戻り、タツミも稲葉もホッと胸をなでおろした。


「降参ダ。流石に集団で戦われタラ、こちらが不利ダ。」


 爆発による煙が落ち着いて来ると、エレミアが姿を現して降参ポーズをしながら宣言した。


「よく言うぜ……まだ本気を出して無い癖に。」

「何を言う。キミこそ出して無いダロウ?」


 タツミが平然としている姿を見て皮肉めいた言葉を発するが、エレミアも同じ表情で言葉を返して来た。


「ExTended同士が本気を出したらこの施設が壊れるからね。二人とも配慮してくれて助かったよ。」


 気まずい雰囲気を稲葉が仲裁に入るが、エレミアは全く納得していない様子だった。


「キミは最大で何個の属性を扱えるんダ? 3属性の同時使用デモ、キミには余裕が有る様に見えタガ?」


 エレミアの質問に答えて良いかタツミは悩み、稲葉の方を見ると静かに頷くのを見て答えた。


「アンタには話して良いようだな。俺のメイン属性は雷と火だが、一応全属性使えるし全属性の精霊と契約を結んでいる。」


 その返事にエレミアは驚愕の表情になると、タツミの両肩を掴んで興奮した様子で問いかけ続ける。その距離は吐息がかかる程に近く、タツミは色んな意味でたじろいでいた。


「やはり、先程のは複合精霊術ダネ! 理論だけで出来ないカト思っていたが! ちなみに分離したアラスティアと呼ばれた精霊は何故に力が弱まらなかっタのダ?」


「ああ、それはこの『月虹丸』というタツミが精霊界で手に入れた武器のお陰だ。」


 エレミアの質問にアラスティアが光の装備を解除して一本の日本刀を目の前に出して見せた。


「月虹丸? 先程の神器の雷帝刀とは違うのカイ?」


 不思議そうなエレミアを横目にタツミはアラスティアから月虹丸を受け取ると、刀に生命力を流し込んで見せる。


「この月虹丸は神器に近い性質を持っている。俺の生命力と、契約精霊の精霊力を蓄積することが出来る。」


 その説明で合点がいったのか、エレミアのどんよりとした目は大きく見開かれた。


「ナルホド! 溜めていたキミの生命力を利用して、同化状態と同じ生命力を供給し続けていたと言う事カ! 精霊術は精霊力と生命力が融合しての術ダ、コレは戦術の幅が大きく広がル。」


 肩を掴んだまま感心して月虹丸をマジマジと見つめるエレミアは更に質問を続けた。その様子を見ていたヒジリがゆっくりと近づいて行った。


「で、この状況下だと何体同時に召喚出来るんダイ?」

「あ、あの……そろそろ、そ、その手を離して……」


 タツミの両肩を掴んだままの手にヒジリの手が伸びたのだった。


「ン? キミが私に命令する権限は無いんダガ?」


 急に不機嫌になったエレミアがヒジリに呆れた口調で言い放つと、今度はヒジリも先程までの怖い笑顔になって語りかけた。


「だったら、私とも試合しましょう? いつまでもタツミ君にくっ付かないでくれるかな?」


((あ……これはヤバい……))


 タツミとアラスティアはヒジリが以前はストーカー行動を取る位の重い子だと知っていたので、今のこの状況はとても宜しくないと瞬時に理解した。


 普段はナギの方が嫉妬深いのだが、ヒジリは距離感が近い人に関してはナギとは比較にならない程に相手へ攻撃的になる。恐らくだが、タツミをずっと見ていただけの期間が3年と長かった事も有り、距離感にとても敏感なのだろう。


「アルセイン、ちょ~っと本気を出したいんだけど良いかな?」

「ヒジリ……さっきまで言ってた事は?」

「TPOだよ。それに月虹丸も有るなら大丈夫でしょ?」


 ヒジリの視線がタツミの方に向くと、タツミも意味を理解したらしく黙って頷いたのであった。


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