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第29話 七不思議の終着点

「さて、ここが最後の七不思議の『化石博物館』です!」


 佐々木が意気揚々と説明するが既に時間も遅くなり、22時を過ぎていた。


「時間も時間だけに不気味ね。」

「ですよね……何で会長はあんなに明るいんですか?」


 田中と羽生は佐々木の妙なハイテンションに二人は困惑しながらもお札を握りしめていた。先程までの余裕そうな表情は既に消えていた。


「二人に掛かっていた一時的な精霊具による催眠は解けた様ですね。」

「ですね、平常心に戻ればホラー好きな俺でも多分来ませんよ?」

「むしろ任務の為に強行する佐々木さんの方が催眠にかかってませんか?」


 リィムとエルは佐々木の妙なハイテンションを見ながら引きつった表情をしているが、露骨に出すと他の二人が不安がると思ってかなり我慢をしていた。


「さて、行きましょうか! 目標は館外に有るイルカの化石の見本です。あ、ちなみに化石と言いつつ館外に有るので実はプラスチックだそうです。光劣化も有るので維持費がバカにならないとガイドの方がボヤいてます。」


「ガイドがネタバレして良いんですか? と言うかプラスチックですか!? 化石の博物館じゃ無いんですか!」


 リィムがツッコミを入れるが、そんな事はお構いなしに佐々木は颯爽と入り口前に有る化石へと歩を進める。田中達も置いて行かれる方が怖いのかすぐに後ろをついて行くのだった。



 そして5人が化石の前に到着すると佐々木は台座に手を触れる。


「これで七不思議はコンプリート! さぁ、早く帰ってお祓いに行こう!」


 佐々木は颯爽と来た道を引き返そうとするが、その時に何かが軋む音が聞こえ始めたのだった。


「ねぇ! 何か化石が動くような音が聞こえるんだけど!」

「私だけじゃないの!? 羽生さんも!?」


 二人はエルとリィムを見るが、二人も聞こえているのか既に周囲を警戒している様子が見て幻聴では無いと分かると顔が青ざめていく。


「その様子は聞こえてるのよね!? 会長! 早くお祓いグッズを!」

「わ、分かっている!」


 佐々木はポケットから数珠を取り出して二人に渡しながら周りにお清めの塩をまき始める。


(エル君、どうですか? こんな音がすると言う事は土とか物理的な精霊術で音を作り出しているか、風の精霊術ですかね?)


(いや、風の精霊力の違和感は感じません。そうなると前者か闇の精霊術の可能性の方が高いかと。)


「段々と音が近くなってる? みんな早くここから離れるぞ!」


 段々と音が近くなっている事に気付いた5人はこのまま留まる事が危険と理解出来たのか佐々木が大声を上げると一斉に敷地外へと走り出した。


「ハァハァ……ここまで来れば……」

「一体何なの……」

「ヤッパリ興味本位でやる事じゃ無かったんですよ!」


 人通りの有る道路まで出ると5人は一安心したのか深呼吸をしながらも、田中と羽生は佐々木を攻め始めた。しかしすぐにそんな暇は無いと思い知らされる事になる。


「ケンカは後で! またあの骨が軋む様な音が近づいてきます!」


 エルが叫ぶと3人は耳を澄ませる。すると3方から先程まで聞こえていた音が響いて来るのが理解出来た。


「聞こえないのはこっちだけか! 皆急ぐぞ!」

「もうイヤァァァァ!」

「会長! 後で責任取ってもらいますからね!」

「しゃべる暇が有るなら走れ!」


 再び駆け出すが、エルとリィムの二人だけは余裕の表情で駆けている。他の3人に比べて体力的にも精神的にも余裕がある様に見えた。


「これは誘導されてますか。」

「ええ、私もそう思います。そして恐らく目的地は……」


 二人は先程見た画像からこうなる事を予測していた。しかしどうやって8つ目の目的地へと誘導するのかと思っていたが、まさかこんな古典的な方法とは思っても居なかった。


「人の恐怖心を利用する……古典的ですけど効果的です。」

「俺達はどうします? このまま釣り針にかかりますか?」

「エル君はこのままみんなと一緒に居て下さい。私は隠れます。」


 リィムは懐から素早く霊装銃を取り出してこめかみに銃口を当てて引き金を引くと髪の毛が白金色に変わる。


「記憶共有……了解した。」

「契約者との記憶の共有……便利ですね。」

「エル、気付かれないうちに行け。」


 入れ替わったハッキネンはぶっきらぼうに指示すると、体の周りにダイヤモンドダストの様な氷の光が見え始めた。


氷塵纏衣ひょうじんてんい


 ぼそりと呟く声が聞こえると同時にハッキネンの姿は見えなくなった。正確には氷の塵を利用した光の屈折で姿を視認出来なくしたのだった。


(さて、俺の仕事は全員の安全を守りつつ観察する事ですね。恐らくハッキネンさんとリィムさんは最終目的地へと先回りして準備をするでしょうからね。)


 エルは周囲への警戒をしながら付かづ離れずの距離を維持しながら進んで行く。そして道の分岐点に差し掛かると各自が一息入れる様に立ち止まって酸素を体に取り込み始める。


「音が聞こえなくなった?」

「逃げきれたのかしら?」

「と、取りあえず……い、息を整えましょう……」


 3人は大きく肩で息をしながら呼吸を整えていると、それを見計らった様に再び先程までの音が周囲から響き渡る。


「ま、また! 早くないか?」

「こ、今度は前からも!?」

「せ、先輩! こっち側からは聞こえません!」


 羽生が唯一音が聞こえて来ない道を指差すと全員が頷くと再び走り出した。


(やはり誘導されている。しかしこんな手の込んだ事をどうやって? 設置型の精霊術か? そして単独犯にしては手が込んでいる……複数犯の可能性も有るのか?)


 エルも後ろに付いて行きながら思考を巡らす。今は警戒よりも観察するべきだと判断していた。七不思議が完結させる必要が有るならここで襲って来る筈が無いのだ、目的はその先に有る筈だ。


(外部の人間? それとも精霊が残した何かの条件発動型か? 何にせよ全ての可能性を否定してはいけない状況だな。)


 油断や思い込みは生死に直結する。そんな環境で育って来たエルは頭をフル回転させて一つでも多くの情報を集めていた。


――――――――――――――――――――――――


 一方その頃、8つ目の終着点を予想した場所へと単独で駆け抜けていたハッキネンとリィムはお互いの考察を話し合っていた。


「地図は見た、間違いない。エルの精霊力もそちらに向かっている。」

「推測は当たりのようですが、犯人はどのような人物と推測しますか?」

「リィムが人物と言ってる時点で精霊だけと思って無い。私も同じ。」

「噂を広めて誘導した人物が居なければこんな事は起きませんからね。」

「精霊が勝手に具現化して人に何か伝えるのは『神霊』クラスで無いと無理。」


 二人は人の関与が確定的だと判断していた。そして目の前に最終地点で有ろう場所にたどり着いたのだった。


「スタート地点の学校が終着点……ありがちですけどね。」

「七不思議か、結界を作る為に指定ポイントを巡らせて罠を完成。」

「ええ、私達の動線はここに到着する事で七芒星を描きます。」

「ヘプタグラム……意味は『完全』『調和』そして『保護』。」

「ええ……推測が正しければろくでも無い内容になりそうです。」


 二人は即座に最悪を想定した行動を開始したのだった。


 


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