第28話 異常の発生
生徒会グループは特に何も感じなかったメンバーに関しては帰宅させ、残りのメンバーは落ち着いて話せるファミレスを目指して移動した。
音が聞こえたメンバーはリィムとエル、佐々木のスディレットメンバーと副会長の田中と羽生の女子生徒2名の合計5名になった。
「田中さんと羽生さんは音以外に何か気付いた事は有りますか?」
移動しながら佐々木は二人にそれとなく聞いてみるが、二人は気味悪そうに首を横に振るだけだった。
「急に聞こえてきました、それに曲と言うよりも乱雑に弾いているように聞こえました。」
田中がその時の事を説明すると残りの全員は首をかしげた。
「え? 私はクラシックの様なしっかりとした音楽に聞こえましたよ?」
「俺は重低音のどっしりとした曲調でした。」
「自分は田中さんと同じで乱雑に弾いている感じでした。」
「私は甲高い音がポツリポツリと聞こえる感じでしたね。」
羽生はクラシックの様に、田中と佐々木は乱雑な音、エルは重低音の曲調、リィムは高音が儚く聞こえたと言う。一致したのは田中と佐々木だけだった。
全員の感想が出揃うとまずは羽生が足を止めた。
「これって本当に呪いなのかな? 私達だけ行方不明になっちゃうの!?」
「落ち着いて、大丈夫だから! みんな居るから大丈夫だよ。」
「せ、先輩……」
羽生が不安そうな震える声を絞り出すと、田中が肩にそっと手を添えて強い眼差しで見据えた。
「まぁ暗い所で話すのも不気味だし、そこに入って計画を立てようか。」
佐々木は喫茶店を指差して店内へと誘導したのだった。そしてその店の意味にエルとリィムは気付いていた。
(アレは……私達の町に有った喫茶店と同じ作りですね。)
(ええ、精霊力の適応力が無ければ認識も難しい筈です。)
(と言う事は、今回の件は怪談と言うよりも精霊絡みと言う事ですか。)
二人は小声で話しながら3人の後方から店内へと入ると、そこには良く見慣れた喫茶店の内装そっくりそのままであった。
流石に一瞬驚いたが、その様子を悟られると良くないと思ったのか、すぐに二人は平静を装ってテーブル席に腰を掛けた。
全員が席に着くと佐々木は全員に視線を回した後、ゆっくりと話し始めた。
「さて、現状で違和感を覚えたのは我ら5人なのだが……他のメンバーはここで終了してもらおうと思う。」
その言葉の意味を一瞬の間を開けてから田中と羽生が理解すると顔が青ざめていくのが見えた。
「え? つまり私達は継続って事ですか!?」
「会長、正気ですか!? もし行方不明になったらどうするの!?」
困惑している二人を見ながら佐々木は冷静に言葉を続けた。
「現在、行方不明者が出るときは必ず1名だけだ。同時に出る事は無い。ならば事情を理解している我ら5人だけで最後の7不思議を巡るのが妥当じゃないか?」
その言葉に二人は意味が解らないと言った表情で抗議を続けようとするが、その意味を理解したリィムが補足説明を始めた。
「ナルホド……つまり、犯人が単独犯だから1人しか行方不明にならない。ならば5人の方が安全だし対策もし易いと言う事ですね。」
「そうだ、下手に居残ると孤立した所を狙われる可能性が高いと思う。」
「では敢えてこの5人で最後の七不思議に向かうと言う事ですか?」
佐々木の推論に納得したエルが聞き返すと佐々木は深く頷くが、田中と羽生は引きつった顔のまま首を横に振った。
「な、何を考えているの? どう見ても異常だよ?」
「そ、そうです。危ないと分かっているのに!」
「いや、コレが呪いの類なら既に私達はマーキングされている事になります。だったら敢えて準備をしてこちらから乗り込んだ方が勝算は有ると思いますよ。」
「り、リィムさん……あんなに怖がっていたのに何で乗り気なの!?」
田中がリィムの変わり様に驚きながら抗議する。
「こういう時は逃げた方が危険なんですよ。元々こう言う事も想定していたんですよね?」
リィムは佐々木に視線を移しながら確認すると、佐々木は悪巧みをした表情になりながらカバンから色々な物を取り出した。
「当然! 念の為に知り合いの神主さんからお清めセットを預かっていますから! 後これは魔除けの札だそうです。各自1枚以上持ってください。それに終わった後にお祓いをしてもらう約束も取り付けてますから安心して下さい!」
(これって本気なんでしょうか?)
(いや、オカルトにはオカルトが正しい対処だと思いますから。ある意味コレは事情を知らない人にとっては正しい選択肢だと俺も思います。)
佐々木の様子に呆れながら二人はコソコソ話を続けていたが、意外にも田中達の反応は予想外だった。
「本当ですか! 流石会長です!」
「万が一のお祓いの予約まで……リスクマネジメントは完璧ですね!」
「と言う事で、まずは半端な状態にしないで原因を究明するぞ。それにこの道具を持って何も問題無ければお祓いが成功したか、たまたまの勘違いだったかのどれかになるからね!」
得意気に佐々木が拳を前に出しながらガッツポーズをすると、先程までの不安そうな表情とは裏腹に田中達はやる気に満ちた顔になっていた。
(コレって……精神干渉系の精霊術とか使ってません?)
(お札辺りが何か少し怪しい様な気がしますね。)
お札を注意深く見ていると、何かを察した佐々木は片目を閉じて合図を送って来たので二人は納得した様に大きな溜息をつくのだった。
「さて、最後の七不思議に行きましょう。」
そう言って佐々木が席を立つと田中と羽生は後ろをついて店を出て行った。その後方をエルとリィムは小声で話しながら付いて行く。
「最後は『動く骨格標本』で場所は化石博物館……って現実だったらかなりホラーで面白そうですね。」
「私はそう言うのは結構です。むしろ7つ目にたどり着いても何も起きないと思います。問題はその先です。」
リィムの言葉にエルは少し首をかしげた。
「どう言う事です。7つ目を巡った後に行方不明になるんですよね?」
「逆に言えば7つ目を巡った時には誰かが一緒に見ていると言う事です。つまり本質は7つ目を巡った後、帰宅後以降に何かが起きる筈なんです。」
「ではその後が本当に警戒する所って事ですか?」
しばらく考え込んだ後、リィムは嫌そうな表情で渋々答え始めた。
「一応私も調べたのですが……7不思議って8つ目の不思議の扉を開ける為の物と言う話がありますよね?」
「あ~そう言えばそんな話もありますね。」
「そしてこれを見て下さい。」
そう言ってリィムはスマホを取り出してエルに見せると、そこには市内の地図に七不思議スポットがマークされていた。
「これはスポットですよね、コレがどうしたんですか?」
「この点をこうするとどうなりますか?」
リィムが地図に何かを書き込むとエルの表情が強張るのが分かった。
「ま、まさか……これは偶然では無さそうですね。」
「ええ、私の最悪の想定が合っていれば大掛かりなトラップだと思います。ですからいつでも動けるように準備しておいてください。」
二人はピアノの音辺りからほぼ精霊が絡んだ事件と認識し始めていたが、リィムは念の為に予測していた事が当たったのが逆にこれからの面倒な事件に繋がりそうでウンザリした表情になっていた。
「リィムさん、顔に出てますよ。しかし一体誰がこんな手間のかかる事を? 騒がれたらスディレットが来る事位は予測でき……」
途中まで言いかけてエルもリィムの考えが理解出来た様だった。
「やっとそこに行きましたか……要するに私達は釣られたんですよ。問題は誰がこの釣り針を垂らしたかと言う事です。」
認識が共有された事でリィムは少し安心した表情をすると、二人の警戒レベルが引き上がるのが空気に伝わっていくのだった。




