第25話 北の大地へ
「「「ようこそ!」」」
「よ、宜しくお願いします。」
「短い間ですが宜しくです!」
リィムとエルは北海道の姉妹高へと到着すると、校門には既に歓迎する為に10人程の生徒会の面々が待ち構えていた。
「自分は生徒会長の『佐々木 典晃』です。まずは校長室へご案内しますね。」
眼鏡をかけたいかにもと言った雰囲気の男が前に出て名乗ると案内を始める。二人は囲まれる様になりながら生徒会室へと向かった。
「ず、随分と物々しいですね。」
「俺達が逃げない様にでしょうか?」
「こんな見知らぬ土地でどう逃げるんですか!」
小声で二人が話しているとすぐに3階の校長室へと到着した。生徒会の面々は隣に有った生徒会室に入って行くと、生徒会長の佐々木だけが残りドアをノックした。
「入ります。と言うか勝手に入りますけど。」
返事を待たずに佐々木はドアを開けて二人を中へと誘導しながら中に一緒に入る。
二人は普通の校長室だなと思いながらも並べられたトロフィー等を見ながら視線を一周させる。そして校長が座るべき上座のソファーに佐々木が腰を掛けた。
「え? そっちは上座で校長先生が座るのでは?」
リィムが驚いた声で止めようとすると、佐々木はニヤリと笑みを浮かべて一つの封筒を懐から出してテーブルに置いた。それを二人は覗き込むように見る。
「コレは……また稲葉さんからか……。」
エルが顔に手を当てながら天を仰ぐと、その封筒を持っている佐々木の正体も何となく察しがついた様だった。
「貴方もスディレットの隊員か。」
エルの言葉に佐々木は机の前に準備されていた椅子に座る様に促した。
「そうです。とは言っても私の立場の方が下ですけどね。まずはお掛け下さい。」
二人は先程までの緊張した雰囲気は無くなり、リラックスした様にソファーに腰を掛けた。
「改めて自己紹介します。私は北海道支部の佐々木。学業施設をメインに対応しています。ランクBの精霊術士で属性は『火』を使っております。」
「俺は栗生 エル。風の精霊術士でランクはSSらしい。」
「私はリィムです。氷の精霊使いでランクはSSSです。」
佐々木の改めての自己紹介に二人も返すと、佐々木は先程の封筒から一枚の書類をだして広げて見せた。そこには簡単な文章が書かれていた。
『現場の佐々木君の指示に従って行動してくれ。問題が解決したら早く帰って来ても良いぞ。その時は祭りでも花火でも海でもキャンプでも好きな所へご案内しよう。もしくは現地で観光しても構わんぞ。任務だけはしっかりと頼む。』
その内容を見てリィムとエルはプルプルと肩を震わせた。その様子を見た佐々木は焦り出した。
「す、スミマセン。格下の自分が二人に指示を出すなんて司令は一体何をお考えなんですか! 流石に嫌ですよね? 指令に掛け合って来ます!」
佐々木が慌てて席を立とうとするとエルがその腕を掴んだ。
「ひぃ」と悲鳴に近い声が上がり、佐々木は生きた心地がしなかっただろう。何故なら二人とも下を向いて表情が見えなかったからだ。
「佐々木さん……ここって函館でしたっけ?」
「は、はい……」
「確か海が近いですよね?」
「え、ええ……」
エルが佐々木に尋ねるとその意味を理解したのかリィムも微妙に肩を震わせながら何かを思いついた様な表情になって行くのが見えた。
「思い出しました、確か海鮮丼が有名ですよね。」
「俺は海に行って海水浴をしてみたいですね。」
二人を視線を合わせて頷いてから佐々木の方へと視線を移す。その目は先程までとは違い期待に満ち溢れた目をしていた。
「早く解決しましょう! 何が起きたのですか?」
「早く説明をお願いします!」
まさかの予想外の反応に佐々木は肩から崩れ落ちたが、下手にヘイトを向けられるよりは全然良いと考えて席に座り直した。
「ではこちらの資料を見て下さい。」
佐々木はテーブルに1枚のパンフレットを広げる。それを二人は食い入るように見ると段々とリィムの方の顔色が悪くなっていくのが見えた。
「そう言えば……稲葉さんからの資料にも七不思議って書いてましたね。」
リィムはここ数日の勉強漬けですっかりと抜け落ちていたのだった。思い出して青ざめる彼女をエルは横目で見ながら確認するように言った。
「で、この七不思議の何が問題なんです?」
「ええ、普通の七不思議程度なら怪談話で終わるのですが……この話の出所が不明なのと、全てを試した数人が行方不明になっています。」
「だから何で怪談話の現場に行こうとするんですか?! バカなんですか! 怪談なんて話だけでも要らないのに現場!? どう言う思考回路しているんですか!」
リィムは話の大筋が読めて来たのか全力で拒否の姿勢を現し始めたが、エルは対照的にワクワク顔で話を進める。
「つまりは、俺達でその七不思議を回って原因を探ると言う事ですね!」
「そうですね、勿論スディレットの部隊も後方支援に回ります。後は万が一に何者かによる意図的な物の場合は組織行動をカモフラージュする為に生徒会の一般人学生達も同行します。」
「ナルホド、つまりは肝試しの要領でやりつつ調査を進めるってことですね。」
佐々木はエルの言葉に頷くと、既に行っていないのに混乱し始めているリィムに視線を移した。
「あの……大丈夫ですか?」
「嫌です! 私は宿で待機します! エル君は楽しそうにしているのでどうぞご自由にしてください!」
全力で拒否の姿勢を現しつつ思いっきり佐々木を睨み付けるが、どう見ても駄々をこねている小学生にしか見えないので迫力が足りな過ぎた。
「稲葉司令からの命令なので……残念ながら怒られても拒否権が有りません。」
佐々木は子供をあやす様に微笑みかけるが、その態度に気付いたリィムは今度は憤慨し始める。
「ちょっと待ってください! 今、子供をあやす様な言い方しましたよね?! 私は16歳です! 小学生の子供に対する様な態度は断固として許しませんよ!」
「リィムさん、自分から言ったら認めている様な物ですよ。」
エルが憤慨するリィムをなだめる様に言うが、基本的にエルのフォローはリィムにとってだけは逆効果になる事が多かった。
「誰が認めて……いや、いいんですよ……分かってます、私が小柄なのも幼児体系なのも分かってますよ……だけどね……エル君までそんな事言わなくて良いじゃないですか……別に好きで小柄になった訳じゃ無いんです……」
エルの言葉に一瞬反論しようとしたが、すぐに言葉尻が弱くなると段々と自虐の表情になるのだった。そして面倒臭そうなオーラを全開にしてイジケ始めた。
「さて、静かになっているうちに話を進めて下さい。」
「…………良いんですか?」
「大丈夫です。少し褒めればすぐに元に戻るんで。」
「……ブツブツ……ブツブツ……」
イジケ続けているリィムを見て少し迷いながらも佐々木は話を進め始めた。
「今日からの1週間の滞在期間に1個づつ巡る予定ですが、消化速度次第では日に2個回るのも考えております。目的としては原因の究明が第一ですが、第2に随行者の一般人の安全の確保、第3に誰かの意図によるものの場合はその調査になります。」
「一気に回らないのです?」
エルの言葉に佐々木は頷くと別の地図を広げた。
「今回の七不思議の厄介な点は学校の施設内では無く、学校を起点として学区内の不思議を巡って終点を巡った後に再度学校に戻って来るのです。」
「学校内じゃ無くて学区内!?」
「そうです。ここは中高一貫校で、公立中学だった場合の学区内に七不思議が点在しています。」
「それって学校の七不思議と言うよりも町内の七不思議じゃないですか!」
期待を裏切られたような表情でエルは叫ぶが、佐々木は冷静に切り返した。
「七不思議とは言いましたが誰も『学校の』とは言ってません。」
佐々木はニコリと笑って言い返すとエルは肩と落とすが、取りあえず自分がしたかった肝試しは出来ると思ったのか、すぐに気持ちを切り替える。
「分かりました。では早速調査に行きますか!」
「その前に歓迎のバーベキューをします。まずは校庭に行きましょうか。」
バーベキューと言う言葉を聞いた瞬間、リィムは我に返ったように目を輝かせ、エルも同じ様な目をしたのだった。




