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第24話 夏と言えば

 とある高校の生徒会室にリィムとエルは呼び出されていた。もちろん何か問題を起こしたと言う訳では無い。だが目立つ風貌のせいで余計にも面倒事に巻き込まれやすい体質なのかもしれない。


「という事で、二人には親善交流として姉妹高の交換学生として6泊7日の旅に出て貰いたいんだが?」


「嫌です。」

「お断りします。」


 生徒会長が二人にお願いすると、即答で拒否された。


「一応聞くけど……理由は?」


「私は生徒会に入ったつもりは有りません!」

「同じく俺もです。」


 二人は無表情に近い顔で淡々と拒否を続けた。しかし生徒会長も諦めてはいなかった。


「暑い夏に北海道に行くのだから避暑地にでも行くと思えば良いだろう! それに交換学生は別に生徒会限定にはなっていない!」


「だったら私達じゃなくても良いですよね?」

「同じく、そもそも夏休みは友達と遊ぶ約束をしてるので。」


 二人は心底嫌そうな表情をしながら断り続けるが、毎回の事ながら生徒会長に諦めると言う文字は無い様に見える。


「い~や、拒否は冠婚葬祭以外は認めない。こういう実績を積めば既成事実として生徒会の一員としての自覚が芽生える筈だ。」


「途中から本音がダダモレですよ?」

「自分から既成事実とか言ってるし……」


「ああ、そして向こうの校長からこんな手紙も来ている。開封厳禁と書いているが、何故か君達当てだ。」


 二人は話を聞かない生徒会長に呆れつつも渡された封筒を見ると、宛名に二人の名前が書いてあった。


「何で私達の名前を知ってるのでしょうか?」

「差出人は……あ。」


 エルが封筒をひっくり返して差出人を見ると知っている名前がそこには有った。


「分かりました……行きましょう。た・だ・し! 生徒会とは別件ですからね!」

「同じく……これは行かざるを得ないですね。」


「おぉ! そうか! ついに生徒会の一員としての自覚が芽生えてくれ……」

「「やりません!」」


 生徒会長の言葉を遮る様に二人は声を揃えると、二人は書類を持ったまま生徒会室を後にしたのだった。




「全く……あの人はどこまで手の込んだ事をするのでしょうね。」

「流石に校長の名前を語ってまでやりますか?」


 二人が見た封筒の差出人には『稲葉 黒兎』と書かれていた。それがどういう意味を持つのか察した二人は黙って従うしかないと判断したのだ。


「折角の夏休みが……人生初なのに! 海やプール、キャンプやバーベキューとやりたい事がたくさん有りましたのに!」


 リィムが崩れ落ちる様に地面に両手をつきながら嘆いていると、エルも同じく大きく息を吐いて首を横に振る。


「貴重な夏休みを1週間も……しかもその分の宿題も済ませる事を考えると半分近くが潰れますね。」


 エルの発言にリィムはさらに肩を落とす。二人とも成績が特段に良い訳でも無い。そしてこの高校は進学校なので宿題の量が尋常では無い。


 今までは転校生である二人にクラスの皆が協力的に教えてくれたので何とかなっていたが、旅先ではそれも期待できない。


「ここは……レンさんかヒジリにお願いしますか?」

「いや、あの二人は相方と勉強するから無理では?」

「そうなると、頼れるのはユキだけですか。」


「ちょっと! 人の事を余り物みたいに言わないでくれるかしら!」


 二人の後ろから話を聞いていたユキが顔を赤くしながら声を掛ける。


「あ、ユキ。丁度良かった! 聞いて下さい!」

「その前に消去法で私にした事を詳しく聞こうじゃないの!」

「え? ユキさんが一番教え方が上手いと言う意味だったんですが?」


 怒るユキを無視する様な言い方をするリィムを横に、エルは上手に切り返してユキの機嫌をコントロールする。


「そ、そういう意味なら良いんだけど……」


「そうです。レンさんはスパルタ過ぎて基礎知識が足りない俺達には難しいし、ヒジリさんは丁寧すぎてスピードが足りないんですが、ユキさんは相手に合わせて教えてくれるんで助かるんです!」


「そ、そこまで言うなら別に教えてあげても良いけど……」


 エルの言葉を聞いてユキは機嫌を良くし始める。それを横でリィムは呆れた様に見ていた。


(相変わらず人たらしの所は変わってませんね……)


「何か言いましたか?」

「いえ、相変わらず女性の扱いが上手ですね。」

「???」


 無自覚の発言のエルは首をかしげる。その様子にさらに溜息をつくリィムを見てユキは肩に手を乗せて頷いていた。


「相方がコレだと大変よね。」

「勝手に相方にしないで下さい! 私の理想は優しくて頼りがいの有るカッコいい人なんです!」


 リィムの発言を聞いてユキはエルの方に視線を移すと、大きく溜息をつく。


「相変わらず弟補正が強いわね……姉弟でも無いのに。」

「まぁ姉の様にしてくれたのは事実ですからね。小さい時はよく世話をしてくれましたから。」


 言葉の意味をストレートにしか受け取らないエルにもユキは呆れた表情になるが、これ以上言うのは無粋と思ったのか話を切り上げる事にした。


「で、あんた達が私に頼むって事は何かあったんでしょ? 内容次第では手伝わない事も無いけど。」


 ユキは早々に話を切り上げて事情を聞く事にしたのだが、目の前に差し出された封筒の名前を見て、すぐに察したのか大きなため息をついた。


「みなまで言わなくてもいいわ……。仕方無いから手伝ってあげるわ。でも貸しだからね。」


 最後の一言で良い人を否定する様な言い方をするが、貸しを作った事すら忘れるお人好しなのを二人を知っていた。


「ありがとうございます。ユキが困った時は相談してくださいね。仲間なんですから。」


 リィムは性格を見越した上で返事をすると、ユキも照れ臭そうにしながらカバンを持ち直して前を進んでいく。


「早く行くわよ。時間が勿体無いでしょ?」


 ユキは仲間という言葉がとても好きだった。何故なら友達と言う定義に疑問を思っているからだ。


 その時の状況によって友達にもなり、ただの顔見知りにもなる。そんな風に捉えていたのは彼女の過去の経験に由来するだろう。


 しかしユキは生死を共にして乗り越えた今の仲間と言う言葉に特別な絆を感じていた。なので基本的には仲間と思っている相手には甘い面が多かった。


「そう言えば、封筒の中身は何て書いてあるのかしら? 内容を聞かないまま引き受けちゃったけど。」


 ユキは封筒の中身を確認したそうに言いながら確認を取ると、二人はおもむろに封筒を開けて、中に入っていた文章に目を通す。


「な……何ですかコレは?」


 リィムがワナワナと震えながら書類を握っている手に力が入って行く。その隣ではエルが首をかしげながら不思議そうにしていた。


「な、何て書いてあるのよ?」


「北海道〇〇高校へ交換留学生として潜入し、原因不明の事件の解決を依頼する。尚、内容としては当該の七不思議を参考にされたし。」


 随分と古めかしい言葉が出て来たなとユキは呆れ顔をしているが、エルは七不思議と言う単語自体が理解出来ていない様だった。


 一方で理解していたリィムは手に力が入りながらも顔が青くなり始めているのにユキは気付いた。


「ま、まさか……リィムってホラー系苦手なの?」


 その一言にビクッと体を跳ね上がらせると、動揺した動きのまま封筒に紙をしまうと一気にまくし立て始めた。


「べ、別に作り物なんて、こ、怖くな、無いですよ? と言うかこのご時世に7不思議とかチープな怪談なんて、こ、怖い訳無いじゃないですか!」


「声が上ずっているけど?」


「そ、そもそもホラーの需要って何ですか!? 何でわざわざ怖いものが好きだなんておかしい人種が居るんですか!? 何事も平和が一番です! そう! 怖い事なんて世の中に無くて良いんですよ!」


 ホラーと言う単語が出て来てくると、エルもやっと内容を察したらしく手を叩いて頷く。


「ナルホド! 七不思議とは学校版のホラー映画みたいな物ですか! それは少し楽しみですね! 俺的には肝試しみたいな事もやってみたいです!」


「バカですか! 何でわざわざ怖い事をするんです! 私は絶対に嫌ですからね!」


 二人の口論が始まるが、その様子を見ているユキは呆れた表情をしながら眺めていた。


(ホラーと言うか、非科学的な現象の代表ともいえる精霊を使う私達が怖いって……どうなのかしら?)

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