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第七話 意志を揺らす天使と悪魔は通りすがり

「これは……」


 アリスはイリスが出した金貨の量の多さに驚いている。ノアやセシルも目を見開いた状態で固まり、その場の空気は完全に凍った。


「今すぐに用意出来るものはこれだけなのですが、ダメでしょうか」


「いえいえ、担保としては十分すぎる量です。やれます」


「なら交渉成立ね、どうもありがとう。私は用があるからもう行きますわ」


「分かりました。ではまた」


 イリスはやり切った感全開の顔でアリスとの交渉場を離れる。ノアとセシルはそんな表情のイリスを横目にイリスについて行く。


「大丈夫か? あんなものを対価にしちゃって。結構な大損だと思うだけど」


「そんな事は無いですわ。あれを差し引いても欲しかった物ですから」


「ふーん、まあイリスが良いならいいけどさ」


 微笑みながら答えるイリスにノアは納得はしないが理解する。という具合に頭に入れる。




 帰りの馬車の中でイリスが護衛の依頼費の話を始める。


「そういえば依頼費決めていなかったですわね。いくら払えばいいかしら?」


「金貨千枚!」


 混じりっけ無しに冗談で言うとイリスがメモ帳をポケットから取りだして「金貨、千枚」と言いながら書いていく。


 まさか本気にするとは思っていないノアは慌ててそれを止める。


「ちょちょ、冗談、ジョーダンだってば」


「え? 冗談だったんですが! こんな些細な事を話している時でも笑いを取ろうとするノア様、素敵です!」


「それは過剰評価じゃない!?」


 口では言っているが本当の所は心の中でニヤけてしまっている。なんなら若干ノアの頬を赤らめているかもしれない。


 ああ〜、俺を見るイリスの輝いた目が痛い。


 こんな感じにイリスとイチャついているとセシルの視線が苦笑いの中に明らかな殺気を醸し出している。


 それに気づいたノアはすぐさまセシルに弁明を始める。


「これはあくまで仕事の話だから! 正当な理由があるから!」


「本当ですか〜?」


 口調はゆるい。顔は可愛い。だが! あれは完全に信じていない顔だッ! 焦るなノア、何とか埋め合わせを考えるのだ。俺なら出来る!!


 こんな具合に頭をフル回転させているとセシルが「じゃあこうしたら許してあげます」と言い出した。


 勝ったな。ノアは心内サムズアップしながらさぁ何でも来い! と構えているとセシルが許すための条件を言い出す。


「私と結婚してください」


「は?」


 いや確かになんでもこいって言ったけど、これは予測がつか……ありえるな。とノアは謎に納得してしまう。


「その申し出は聞き捨てなりませんわ」


 ほらほら出てきた出てきた! 俺の結婚の話になると絶ッ対二人が出てくる! やばい、これ絶対めんどくなるやつじゃん。


「貴方もしつこいですわね。私のノア様にご執心なのは分かりますがもう少し自重したらどうですか?」


「何て戯れ言を。ノアはこのセシルの物なんだから!」


「何を仰って? ノア様は我がカルタニア家に婿入りが確定しているのですわ。ノア様が私に堕ちるのも時間の問題でしてよ」


「え? なに俺イリスと結婚するとしたら婿入りなの? てか堕ちるってなに!? 俺もヤンデレ化するの!? しないよ俺!」


 というノアの叫びは2人には届かず、ノアの心と共に残念ながら無くなっていく。


「そんなにノアと仲良くしたいならあくまで親友じゃダメなのですか?」


「貴女は正気がおわりで? 婚約するのに親友関係、実際には婚約しないって文がめちゃくちゃですわよ! 国語をやり直しできたらどうですの?」


「ちょっと待って二人とも白熱しす――」


「ノアは黙っていてください!」

「ノア様はお静かにしてくださいまし!」


「だからなんでこんな時だけ息ぴったりなんだよ!」


 本気でこの二人本当は仲良いんじゃないの、と思いたくなる。そんな事聞くと間違いないなくボコボコにされるから聞かないが。


イリスとセシルの理不尽加減にノアは呆れながらため息をつく。


 というかプロポーズって男がするものじゃなかったけ? 俺かっこよくやりたいよ。




 なんてため息と共に考えていると頭に"多様性"という悪魔の囁きが響き渡る。


(へへ、二人とも貰っちゃったら良いじゃないか)


(誰だッ!)


 突然の声に意識を持っていくとそこには紫色の髪をしたやけに可愛い男の娘が立っていた。


(僕は通りすがりの悪魔だよ。人生は強欲に生きなくちゃ! そうさ! 君はそういう生き方をする、それでいいじゃないか。これからは多様性の時代と言うじゃない。それで理屈は完璧だよ)


(二人とも俺の女。二人の女に囲まれて生活していく)


 ノアは生唾を飲み込む。


(うんうん。これは不倫じゃない。あくまでも複婚、一夫多妻制なんだよ。だから大丈夫)


(それもありかも――)


(そこまでよ)


(今度は誰だッ!)


 今度は黄色の髪をした少女が立っていた。ノアは彼女に意識を集中する。


(私はとうりすがりの天使よ)


(どんだけとうりすがりが居るんだよ! 何ここ天使やら悪魔やらのお散歩コースになっているの!?)


 早くも天使のご登場にノアは(もしかして)と呟き作り話とかでよく見るあの状況を想像をする。


(私の自己紹介は別にいいわ。それよりも悪魔ッ! 貴方なんて事をこの子に入れ知恵しているの!)


(この子って俺まさかの子供扱い!?)


(入れ知恵なんて人聞きの悪い。僕はただこの子が可哀想だったら道しるべをだね)


 悪魔が気の抜けた弁明をする。すると天使が怒りを滲ませながら、


(そんな言い訳が曲がり通るとでも? そりゃ私だってこの子が可愛い。可愛いからこそいつも隣に居てあげたい)


 天使は一呼吸してからノアのためになることをはっきりと伝える。


(でも悪い事を吹き込んで楽に貪欲な道を歩かせるのは間違っていると主張するわ!)


(なにこのお姉ちゃん感! てか俺を可愛いって言ったな!)


(ごめんなさい! そうよね。男の子だもんね。ちなみに私はノアくんのお姉ちゃんになりたいな)


(僕の方が君の姉にピッタリだと思うけどね。もし、なった暁には楽しいこといっぱい教えてあ・げ・る)


(もう訳が分からん)


 なんか最後の方やけに色気があったような。もしかしてボクっ娘? いやいやこれで男だった時のショックはいかほどか。


 すると天使はハッと思いついた顔をして指を立てながら(じゃあこうしましょう)と前置きしてから告げる。


(どっちがノアのお姉ちゃんにふさわしいか勝負しましょう!)


 自称天使は自信満々に悪魔に向かって宣戦布告するのだった。

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