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番外EX ギルドサイドの問題

「おい!! もっと早く仕事しろよ! まだまだこっちには山積みなんだぞ!!」


「やってます!! でもこんな量を要求されて無理です。人間の許容範囲を超えています!!」


「なに言ってんだ、ばーか。辞めて行ったノアって輩はこの程度の仕事、あくびしながら半日で片付けてたぞ!」


 事務部の部長は顔を真っ赤にして怒る。辺りには怒号が響き渡る。


「あいつが出来たんだ。ゴミみたいなあいつが出来て、なんでお前たちが出来ないんだよ!!」


「うそでしょ!? この量を一人でこなすなんて無理、絶対に無理!!」


「だがあいつは一人でやってたんだよ。俺わかったかもしれない。居なくなって気付いた。ギルドにノアと言う人間は必要だった、ってな」


「たかが一人居なくなった程度でこんなにも回らないなんて、彼は一体何者?」


 その場はノアを追放した怒りとノアの仕事スキルの高さに困惑の空気が辺りに漂う。


「クソのゴミのアホのクズのザコ虫がァ! なんでったんでこんな事になりあがった! 全てはあのギルマスのせいだ。あのクソ野郎が追放したがために、クソッ!」


「誰のせいでギルドがダメになったって?」


「ギルドマスター!? なんでこんな所に!!」


「そりゃギルドの中が荒れていると聞いてね。それで少し見回りに来たんだよ」


「そ、そうですか」


「それよりも君、誰のせいでこうなったと?」


「いや、それは」


 アデリンの圧力で空気はとてつもなく重くなる。アデリンから放たれる気迫は質問を超えて、拷問の域に達しているかもしれない。


 部長は顔を真っ青にして今にも失神しそうだ。


「それで? 誰のせいでこうなったと言うのかね? 君」


「ああもう、こうなったら言ってやるよ! そうだよ、ご察しの通りにお前のせいだよ! お前がノアを追放なんてしなかったらこんな事にはならなかったんだ!」


「そうかなるほど、ならば出ていけ。私の判断に間違いがあると思うなら出ていけ! いや、現時刻をもってお前を追放する!」


 そしてアデリンはそのままポケットから一枚の紙を取り出すとその紙を握りしめて部長を殴りつける。


「ぐはッ! いてて、ん? 何だこの紙――ッ!!」


 そこには解雇通告と書かれていた。


「いつの間にこんな物を書いていたのか。お前は俺を追放する気でいたのか!?」


「何言ってんだ、馬鹿者。この私がお前ごときを見てる訳が無いだろ」


「じゃあなんで」


「決まっている。いつどこで誰が問題も起こしてもいいように、ギルドに働く全員の解雇通告書を事前に作ってあるのさ」


「――ッ!!」


 ここでその場に居た全員が(さと)った。この女、アデリンは狂っていると。そして刃向かっては行けない人だと。


「まっ、そういう事でよろしくね」


 部長、いや元部長は膝から崩れ落ちる。顔を真っ青にして冷や汗を床に落としながら震えている。


「なんなんだよ。あの女」


 元部長が言葉を零すとすぐさま騎士がやってきて無理やり元部長を拘束して持っていく。


「これがギルマスのやり方、なのか……」


 怒号や叫び声が聞こえていた職場はどこへやら、空気は冷たく、静まり返っていた。


「……まぁ、仕事再開しよっか」


「そうですね」


 その言葉にその部の全員が頷くと席に座る。

 果てしない仕事量と恐怖の象徴と化したギルドマスター、その場は絶望で満ちるのだった。




 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 事件は突然やってくる。


 荒れ果てた職場にミスが起きない訳もなく、今度は人事で問題が起きる。


「大変です!! 人事をまとめた書類がありません!!」


「なんだって!? という事は」


「えぇ、個人情報が流れたという訳です」


「いつ、誰が、どこで、どうやってやったんだクソっ!」


「そんな事言ってても仕方ないですよ。とにかく、犯人の特定とこの話が流れていかないようにしないと!!」


「流れを止めるって、君は川に流れて行った水だけをすくい上げる気かい?」


「その表現は分かりませんが、そうでもしないともっと大変な事になりますよ!!」


 人事のチーフは腕を組みながら唸り声を上げて考える。


「まずは全職員に伝達を……いや、この事は俺たち二人の秘密にしよう」


「なんで、ですか?」


「この事がギルマスの耳に届いてみろ、あの人に伝わったら人事の一斉解雇は免れないぞ」


「そんな鬼みたいな事はしないと思いますが」


「いや、そんな事はない。あの人はミスを犯した人物に対しては容赦がない。同じ人間として考えているのなら間違いだぞ」


「それって人間性が欠けているとかですか?」


「欠けているなんてもんじゃない。存在しないレベルで考えた方がいい。長年あいつの元で働いている俺だから言えることだ」


 女社員はギルマスの噂に顔を青くする。そして決心したように言葉を放つ。


「分かりました。隠し通しましょう、この事実」


「いい判断だ」


「何がいい判断なんですか? 私にも教えてください」


「――ッ!!」


 すぐに振り返るとそこには案の定アデリンがいた。チーフは歯を食いしばりながらアデリンに問いをかける。


「い、いつからそこにいたんですか?」


「そんな事どうでも良いでしょ? それよりも何がいい判断なんですか? ギルドの改善のために私に教えてください」


「あなたには関係のない事です」


「ギルドの事なのに?」


「いえ、個人的な話なのでギルドには関係の無いことです」


 その苦しい言い訳にアデリンは「ふーん」とつぶやく。


 意外と押し通れるか、と考えたが現実ではそう上手くは行かない。


「つまりは君、働いてる最中に仕事に関係のない事考えてたんだ」


「なっ!? それは言葉の綾で……」


「いやいや、こういう事でしょ? どこが違うの?」


「それは」


 詰んでいたのだ。あの話を聞かれていた時点で、いや、もしかしたら隠すという話をした時点で詰んでいたのかもしれない。


「じゃあ君、解雇ね」


「は?」


「だって仕事中に関係ないこと考えたんでしょ、それだったら解雇するしかないよね。大丈夫、人員不足になる事はないから。だってギルドに就職したい人はたくさんいるんだもの」


 ノアがいなくなったギルドでは誰もまともな判断を取れなくなっていたのだった。

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