第三話 王族のお嬢様は一目惚れする
「俺はこれからどうすればいい感じ?」
「もし可能であれば、これからカルタニア家にご招待したいと思う所存でございます」
「家にセシルって人がいるんだけど、どうすればいい?」
関係は無いがもし泊まる事になったらセシルに心配かけてしまうので一応聞いておく。
「セシル様は女性なのかしら?」
「ま、まあそうだな」
「チッ、はい、問題ありませんわ」
「今舌打ちしたよね!!」
明らかな舌打ち、それもかなり強めの物だ。何かノアが無礼をしたかと心配をする。
がよく良く考えれば今までタメ口で喋っていた。無礼があるとしたらここだろう。
「いいえ、していませんわ。それよりもそのセシル様を連れてこないといけませんわよ」
「は、はぁー。そうだな」
絶対舌打ちしたと思うんだけどなー、と内心つぶやいていると王族のお嬢様を歩かせて大丈夫なの? と変な心配をする。
隣で歩くイリスは心なしか笑顔だし、まぁいいか。と楽観視する事にした。
「そう言えば貴方を名前を聞いていませんでした。良ければ教えて頂けます?」
家に着くまでの短い時間。イリスがそんな事を聞いてきた。
「ああ、そう言えばそうだったな。俺の名前はノア・レインズだ」
「いいお名前ですね!」
そんなイリスの言葉にノアはドキッとしながらもイリスは隣で「ノア・レインズ様。このお方が私の運命の人」とか呟いでいる。
ん? ウンメイノヒト?
その言葉の意味を理解したノアは全てにおいて脳の処理が出来なくなった。
すると変化に鋭いのかイリスが心配そうに、
「ノア様、さっきからお顔が赤くなったり白くなったり変化がすごいですよ。大丈夫ですか? まさか持病がおありで!?」
なに、俺そんなに顔変わってるの? やばいじゃん。だが原因は病気では無いのであくまで冷静をとりつつ、
「病気は特に無いよ。ほら顔色変わり治まって来たでしょ」
「そ、そう言われてみれば」
「この子多分チョロいな」
「え? 何か言ったかしら?」
「なんでも無い。ただの独り言さ」
「は、はぁ、左様ですか」
な、ほら言っただろ。こいつ絶対チョロいよ。いや俺は誰に雄弁してるんだ? と考えているとイリスが困惑した様子でノアの顔をのぞき込む。
「でも何かありましたら我が王家。カルタニア家に何時でも助けを求めもよろしいですわよ。王家は王国一権力がありますの!」
「でも最近、ギルドより弱いじゃん」
「――ッ!」
そうなのである。この完全権力社会において金は絶対的な力を持つ。そのため保有資産の多いギルドの方が今は強くなってしまっているのが現状だ。
このまま行けばこの国土を丸ごとギルドに買収されてしまい、このカルタニア王国は無くなってしまう。地味に国家存続の危機である。
「ま、まぁ。ギルドなんて一介の企業ですわ。企業一つに負けるほど王家は落ちこぼれてはなくてよ」
「そうですか」
「そうなんですわよ」
「語尾にですわよって使い方合ってるのかよ」
なんでもイリスと駄弁っていると家がもう目の前だった。ノアが「家に着いたよ」と言うとイリスが一言感想を言う。
「何ともこじんまりとした……いいお家でございますね」
「こじんまりって絶対"ちっぽけな家だな〜"って意味だよね!」
「それは言葉の綾と言うものでしてよ」
「ホントの事なんかい!」
と漫才の様な会話をしていると家の扉が突然開き、セシルが「ノアおかえり〜」と出迎えて来た。
「ああ、ただいま。俺が家の前に居るってよく分かったな」
「話し声で分かりますよ〜っと、この方は一体どちらで?」
「お初にお目にかかります。私の名前はイリス・カルタニアと申しますわ。貴女がセシル様で間違いなくて?」
「は、はい」
その返しにイリスはセシルに向かって怒りを滲ませるようになった。ノアはイリスって気難しい奴なんだなっと考える。
「ちょっと待ってください。カルタニアって王家じゃないですよね」
「はい。我がカルタニア家は王家でございましてよ」
瞬間セシルの顔は真っ白になり体が硬直した。これが正当な反応である。
ノアが王家の人と聞いて驚かないのはノア自身がいつも冷静沈着だからである。クールガイだからである。
「えっと、そんなすごいお方が家になんの用でしょうか?」
「私は先程ひったくりに会い、その時に助けに来てくれたのがノア様でございます」
「あー、何となく状況が分かってきました」
セシルはコクコクと首を振り、納得した表情を見せるとなぜかノアの方に視線を向け睨んできた。
がすぐに「仕方ないか」と呟き、セシルの睨みタイムは幕を閉じた。
「はい、なのでノア様にはお礼をしたく思いまして」
「お礼、ですか?」
「そうです、なのでこれからカルタニア家に来て頂けます?」
「私は良いですけど、ノアは良いですか?」
「ああ、俺もいいぜ」
「では、今すぐ手配しますね!」
とイリスは手を叩き顔を明るくして喜ぶ。するとイリスはポケットからなにか物を取り出しそれに向かって何か話している。
「はい、馬車の手配が終わりました。すぐ来れるみたいですよ」
「何やっていたの?」
「この魔力機に向かって話すと遠くの人と会話ができるんですよ」
「ほへぇー」
技術の進歩に驚いているとセシルが「無礼が無いように」とノアに伝えてきた。それを聞いたのかイリスが微笑みながらノアに伝える。
「ノア様は恩人ですので無礼など気にしなくてもよろしいですよ」
「恩人って大げさな」
「いいえ、王家に仕えていない人が王家の人間を助けたら、私達は恩義しかありませんわ」
「さいですか」
そうこう駄弁っているうちに時間はあっという間に過ぎていった。
本当にすぐに馬車が来た。その迫力を前にノアは、
「おお! なんてゴージャス!」
と大興奮していた。
「いやー、ホントこれカッケーな」
「ノア、可愛い」
セシルがなんか言っていたがそんなことはお構い無しにノアは目を輝かせる。
「ノア様、セシル様。早く乗ってくださいまし」
「おう、そうだった。イリス」
ノアは「よっこいしょ」と言いながら馬車の中に入りソファーに腰をかける。
「随分とふかふかだなこれ」
「その素材はカルタニアで最も優れた素材を使っておりますの。お気に召したご様子で何よりです」
「やべぇ。王族やべぇ」
と言っているとセシルが乗り、馬車がゆっくりと動き出す。ちなみにノアは馬車に乗った事はこれが初めてである。
早く動いてく窓の景色にノアは今だ目を輝かせている。そんなノアの事を見つめてうっとりしている人がセシルとイリス。
「なあイリス。ただ助けた人になんでここまでしてくれるの?」
「それはこれからノア様がただの恩人では無くなるからですわ」
「??」
イリスの答えにノアは思わず小首を傾げる。イリスの返したその言葉の真意を知るためには経験が足りなさ過ぎたノアであった。
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