お買い物 私は子供ですか?
「食料品全てですね。何も無いんです、香辛料なども欲しいです。でもその前に、こちらの文字を覚えたいのですが、何かないでしょうか?」
この世界、言語の壁は無いのに文字に関しては、全く違うみたいです。
なぜ疑問形かと言うと、私も街に入ってから気が付いたのですよ。看板の文字が・・・
多分文字だよね・・・ 全く読めないどころか、向こうの世界でも似た物が無い。先輩方、何故に『ひらがな』を普及してくれ無かったの・・・ 見た目に合わせて『ローマ字』でも良かったけど・・・
「初歩的な物で有れば、紙屋に文字盤が有りますよ。ご案内します」
薦めて貰ったのは、私達にも馴染みの有る子供学習文字盤表だった。手の平サイズの四角い板に、一文字と裏に絵が描いて有る物。今更だけど頑張るわ。
その他に挿絵を基準に絵本を二冊買った。
「次は手芸店と園芸店に行きたいです」
「それは・・・ どういう店でしょう」
「!?・・・・ ええっと、手芸店は、布やリボン・毛糸などを扱う店で、園芸店は野菜や花の苗木などを扱う店ですけど・・・」
「ああ! 布などは服屋が扱っています。ご案内します、どうぞこちらへ」
案内された店は、服屋と言うより布屋だろう! 細い棒に布が巻かれ、見本のように服が飾られていた。布の方か断然多い。これは布屋だ! 今から布屋と言え!!
「麻奈様、此処では、まず布を選び店の者が服を縫ってくれるのです。飾りなども好きに注文して好みに仕上げてくれますわ。布だけ買って自分で仕立てる事も出来ます」
其れは俗に言う、オートクチュールでは無いですか? すごい!
「あら! この柄が麻奈様にお似合いになりますわ! 首元にレースを付けて、腰は幅広のリボンで結びましょうね! 共布で帽子も作りましょう! まあ、この織は軽いのにとても暖かいですわ、是非コートを作りましょう! こちらの布は色が綺麗ですね、スカートを作ると良いですわ。下に重ねたペチコートを付ければ更に防寒にも成りますし、スッキリと軽やかな広がりを作る事が出来ますもの! 後は、あれも良いですね、いえ! 向うの物の方が似合いますわ」
カリーネさんのテンションが急上昇。ウキウキと布を広げ楽しそうです。あっちに突進。こっちに突進。いつの間にか布の山を築いています。
私が着るの? 私?・・・ 本当に私???
レース、ヒラヒラァ~ フリル、モリモリ~ 無理でしょぉー
「まって! カリーネさん、私は着ませんよ! そんなヒラヒラ恥ずかしくて着れません! 考えて下さいよ、こんなヒラヒラ、まして大きなリボン? そんな子供可愛い服、今更着れる訳無いじゃないですか」
私の苦情をカリーネさんだけでは無く、黙って傍観していた男子3人も、首を倒しながら「なぜ?」的な顔をしている。
「まぁー 何を言ってらっしゃいます! 今だからこそですよ。愛らしい服というのはその時しか着られないのです。背伸びしたいお年頃とは思いますが、この先着たくとも着られなくなるのです、今しか着られないドレスを着られた方が宜しいのです」
へっ? 愛らしい? 背伸びって、してないよぉー そこ! うんうん、首振らない!
いやぁー これ変だよね・・・ もしかして、カリーネさん達の目は、外人モード?
「カリーネさん? 私の事、何歳だと思っているのかしら? バルデュール様も勘違いなさっているとか?」
一度皆で顔を見合わせて話し合い。
「私20歳です! 此方の成人が何歳かは知りませんが、向こうでは大人なのですよ!」
バル様、口だけでは無く目も押さえて下さい。本当に瞳が飛び出てしまいますよ。
アランさん、顎が外れたなら、アッパー見舞いましょうか。
カリーネさん、私は病気では有りません。べたべた触らないで。其れとも胸が小さいと言いたいのかぁー!!
ロイクさんだけです。流石は家令です、予想外の事にも動じていません。と思っていたら、意識が飛んでいたとの事・・・
暴れたろーかぁー!! なんですかぁー! やっと大人に成って、自由を勝ち取ったと思っていた矢先に異世界放り込まれて、でもって心機一転頑張って見ようかと思えばまた子供って!
グレルぞ! グレてやる!! 子供扱いするなら無視だぁー!!
「そっ、そうか! いや、そろそろじゃないかとは思っていたのだが、女性に歳を聞くのもな・・・ そうだろ、ロイク!」
何を言ってんですか! 成長を見てきた訳では無いくせに『そろそろ』なんて言葉使うな! 何が『なっ!』だ! ロイクさんも『左様で』じゃないでしょ!
アランさん、薬局前の人形のように首振らないで!!
「私、17~8かしらって、肌艶で予想しておりましたわ!」
うそつき~! 17歳でも着ないんじゃないですか!! 此処まで子供扱いされると、怒りよりも情けなくなってくる。
子供は嫌なの! 子供は!! 泣けてくるわ・・・
「・・・・もういです・・・・」
実際に潤みだした目を隠すと、大人4人に宥められた。
傍から見たら、頭一つ・二つ高い4人に囲まれた私は、本当に子供に見えただろう。
「解りました。今日は品揃えだけ確認して、後日ゆっくりと・ひ・と・り・で・見に来ますね」
カリーネさんが悲鳴を上げたが知らん顔。フンだ!
店を出て次は園芸店だが、関連商品として服屋が扱うなら、園芸店は無く、八百屋が扱っているのかな? 聞いてみたら案の定だった。因みに飼料店は無いそうだ。農家と酪農家がお互いにトレードし合っているからとの事。
チクショー! テンション下げ下げ!!
仕方ない今日は大人しく、食料だけ買って後日一人でぶらつこう。
ええ、一人で。
周りを見た感じ、黒髪・黒い瞳を見かけるから、服装さえ変えれば私は目立たない様だし。
順番にローソク・油・酒・スパイスと買って行った。金額だけを見れば日本の物価より安いが、この世界の平均月収が如何程か解らない。だからと言って、『いくらですか』とも聞けない。
この世界の油分は殆どが動物性で、食用やローソクなどの加工品に使われているそうだ。ハゼや松・漆など森で採取できる物やヒマワリや紅花は無いのかな?
お酒はワインやビールが有り、種類も複数ある様だ、ゆっくりと飲み比べなきゃ フフフ・・・
スパイスは・・・・ 先輩・・・ 進歩していないみたいです。塩と胡椒が数種類しか有りません。ワインが有るのだから、ビネガーも有ると思っていたのに・・・
ハーブ系は何もないわ・・・・
「さあ次は粉屋に参りましょう。其の後野菜・肉・魚、あと・・・」
「えっ、まって! 無理です!! そんなに積めませんよ。ローソクとスパイスは自分で担いだとしても、油とお酒は重いです。此れ以上はシエルが可哀そうです」
買った側から店員が持ち去っていくので、実際の重量は測らないが、それらの品は私ひとり分以上の重さだと思う。木箱に詰めて鞍に括り、その上私まで乗るなんてとても出来ないのに、まだ買うのか!
「今日はもう良いです。場所は覚えたので明日は一人で来ますから、帰りましょう」
・・・・・・・・・
「ふっ! ははははは」
「ふふふふふふふっ!」
「大丈夫ですよ。シエルはとても力持ちで、私と藤倉殿を載せても十分走る事が出来ますよ」
「それにシエルは麻奈様を乗せる為の馬です。買った物は用意した馬車に乗せておりますわ。ご安心を」
そうなんだ・・・ 笑われて恥ずかしいけど、良かった・・・
麻奈の買い物はホノボノしませんね~
子供の振りして置けばよかった事も有るのに・・・ てな事が有るかも。
やらせたい事が色々有るんですが・・・ どうなるかワシャ知らん




