初めてのお買いもの
GWも終わり、暫しのんびりと出来ます。タイムリーにも某TV番組で子供による「初めてのお使い」が放送され、ほのぼのと見ていました。
あれは何度見ても癒されます。
「お早うございます、バルデュール様」
呼び鈴替わりの鐘が鳴り、私は直ぐに表に出て、バル様御一行を出迎えた。
バル様の他にダンディーな紳士が一人。今日はカリーネさんは来ていない様子。
昨日、嫌な子だったから呆れただろうな・・・ 別に良いけどさ。いや、良い訳じゃないけど、人付き合い苦手なんだもの・・・
はぁー
あー、また凝視されちゃったわ。
食事の後、インナーはそのままにパーカーと上着とズボンを履き替えた。
今は、ボーダー柄のセーターとフリース打ちのスリムジーンズ。薄地ウールの大判ストールを斜めに折った間に、細身のベルトを通し腰に巻いてある。裾が不ぞろいなスカートの様だが腰は女の命です。
日が昇って来たのに空気が明け方と変わらずヒンヤリとして寒い。気温が上がらないんだよね・・・
セーターは外に出し、その上から牛革のウエストバッグをゆったりと斜め掛け。首にはネックウォーマー、頭にはセーターとお揃いのニット帽。耳までスッポリ入る優れ物。コートはお尻丈のダウンコート。足元はボア敷きのスノブーツで、手袋はフリース、保温と防水に優れている。ヌクヌクだ。
私としては完璧!!
「・・・・ ああ・・・ お早う藤倉殿、夕べは眠れただろうか」
「はい! ぐっすりでした。朝も清々しく起きる事が出来ました! フフフ」
「そうか、それは何よりだ」
「一つ伺っても良いですか? この世界の人達は、畑を作る際どの様に作っているのでしょう。種を蒔く前に一度地面を掘り起こしますよね」
「・・・・農耕馬に、大きな櫛のような器具を引かせていたと思うが」
やった! 私たちの世界でも、かつて行なっていた方法だ。
「それって借りること出来ますか? 近々と春先に?」
バル様は首を傾げながら、後ろに控えるダンディーさんに耳打ちしてる。
「手配は出来るが、何に使うのだ」
「もちろん畑を作ります」
何かを整理する様に黙り込むと、眉間を抑え
「麻奈殿は『ガーデニング』がしたいと言っていたのではないのか?」
「そうですよ。ですから地面を耕したいんです。このままだと土が硬くて根が張りませんから」
「ガーデニングとは、農業の事なのか?」
「ちょっと違いますね。簡単に言えば、庭を花で飾るのです」
私も首を傾げてしまう。する事自体はそう変わらないが結果は違う。誰が何と言おうとも出来上がりや目的は違うのだ。
「口で説明するのは難しいですね。皆さんとは概念や環境、娯楽が微妙に違うのかも知れません。見て判断してもらう事は出来ませんか? 先ずは1~2年、時間を下さい」
「いや、時間はいくらでも使ってくれて構わない。好きな事をして良いんだよ、いくらでも手を貸すから。ただ危ない事だけはしないで欲しい」
「は~い、大丈夫です、危険な事はしません」
よし! 労働力ゲット! お馬さんいらっしゃーい♡
「私欲しい物のリストを作ったのです。食料の他に、園芸店や手芸店や燃料店、飼料店も見たいです。その他にも今すぐでは無いのですが、庭が落ち着いたら、鶏や合鴨も飼いたいです」
何処までも膨らむ私の夢。あちらでは無謀と思われる事も、今朝の様な事が有るのなら、この世界で何とか成るかもとしれないと思う。
私は少し興奮している様です。ええ、興奮しています。この勢いのまま、町まで徒歩で行けそうですよ。
その代わりに、バル様+ダンディーさんは呆れていました。
良いのです。恥はかき捨て、私異世界人ですから。
「とても楽しみです」
色々と考えれば笑いが止まりません。にっこりと笑へば、バル様も笑ってくれました。
「処で、聞いても良いだろうか。土地の形が昨日と違う様だが・・・ 何か有ったのだろうか」
「そうなんです! 今朝この庭のデザインを考えていて、こうだったら良いなって思ったら、地面が揺れたんです。で、収まったらこうなっていて・・・ 思い描いた通りなんです」
「ふむ・・・・ 此処に住まう者に合わせているのか・・・ まあ、藤倉殿に不都合が無いので有ればそれで良いと思う」
バル様は地形の変わった地面を見ながら、何かしら考えている。
「この神域だからか・・・ 其れとも彼女ならどこでも・・・」
ブツブツと何だろう? 私に関係している様だけど。まっいいか、必要なら言って来るだろうし。下手に首突っ込まない方が良い事も有るしね。
考え込んでいる間にもう一度リストをチェックしておこっと。
「君に乗ってもらう馬を連れてきた。大人しい性格だから、大丈夫だと思うが無理なら私と相乗り「私自分で乗りたいです」」
うん、バル様の言葉、遮っちゃった。
バル様にそう言うと、後ろに控えていた黒服のダンディーさんに合図をし、一頭の馬を私の前まで引かせてきた。
「家令のロイクだ」
「はじめまして」
「ロイクと申します、お目にかかれ光栄に存じます。何か御座いましたら、何なりとお言いつけ下さいませ」
見た目40歳位かな、丁重にお辞儀を返してくれた。
バル様が私に用意してくれたのは、シエルと云う名前の雄馬で、鼻筋と右前脚が白い栗毛の馬だった。賢そうな馬で、お眼目が可愛い。だがあんまりすり寄って欲しくない。飛ばされそうです。流石は『馬力』ですね。
初心者体験で乗った程度の私に合わせて、練習がてらゆっくりと街に向かう。
町まで馬でゆっくりと2時間弱といった処かな? 歩こうと思ったら行け無い距離じゃ無いわ。寧ろ山あり・谷ありじゃ無いから楽勝よ。山ガールを舐めないでよね。
途中に櫓が有り、常時兵士が詰めているそうで、此処の人たちが私に気付き領主に連絡したそうだ。
町に近づくと繁栄ぶりが良くわかる。入り口横に兵の詰め所が有って、街中の揉め事は此処の皆さんが引き受けているそうで、交番といった役割の様だ。
私達に気付いた兵士の皆さんに敬礼されました。
町の中は綺麗です。区画整理が整っている様で、入口付近は、他領の商人や旅人用に宿屋や食堂が立ち並んでいて、旅行鞄かな? 大きめな鞄を持った人達が出入りしてる。そこを過ぎた周りを民家、さらに過ぎると市場。
左手に川が流れていて、川も交通手段の一つだろう、所々にボートが係留されている。川と市場の間に商家、その対岸は金持ちの住居、一等地になっている様です。
通りや川で区切っていて、判り易い。
市場の中は車両禁止の様で、馬や馬車は走っていない。代わりに手押し車が行き来しています。如何やら市場の一角に馬や馬車を預ける場所が有る様で、私達はそこに向かった。
「閣下、お待ちしておりました」
「アラン、今日は宜しく頼む。カリーネ準備は」
「出来ております」
「市場の責任者のアランだ。何か困った事が有れば彼に言うと良いだろう。頼むぞ」
前半は私に、後半はアランさんに。
私は笑顔で挨拶をすると、白髪の混じりだしたアランさんが目じりに皺をよせながら返してくれた。
見た目、人の良さそうな小父さんだが、何故だ! こういった世話役って、みんな小太りのプクプク笑顔キャラなんだよね。お腹を針で刺したら、ピュッて飛んで行ってしまいそうだよ。
そしてカリーネさんは此方で待機でしたか。
「カリーネさんお早うございます。昨日は有難うございました」
「お早うございます。今日は女性同士でしか入れない店も有りますのでご案内しますね」
「お願いします」
昨日あんなに不愉快な思いをさせてしまったのに、にっこりと笑って挨拶を返してくれる。流石大人だ。
こういう女性にならないといけないわね。カリーネさんは淑女の鏡、ぜひ手本にしなくては。
女同士というと、下着とアレですね。確かに毎月必要です。女同士でこそこそと話をしていると。
「買い物しながら、説明しましょう。何が必要ですか?」
アランさん、スッカリ忘れていました。
ごめんなさい、井戸端会議に花が咲きました。私だって目的の為なら饒舌に成るのだよ。
今日、もう一話投稿します。




