異世界の客人 エルネスト -1
私の名は、エルネスト・セン・バルデュール。 当家はこのファンバルーセ帝国の公爵位を賜り、代々古くから北東に位置するバルデュール領の領主を務めている。山で区切られた東領を兄が北領を私が統括する立場にある。
新年を迎えて一月が過ぎようとしている。
昨年は山火事もなく、実りも通常道理で可もなく不可もなくといったところか。強いて言えば帝都への交通手段としての「トンネル」作業が思う様に行かないのが悩みだが・・・
この道が開通すれば海路ばかりの現在より、もっと多くの品々の取引が叶い領民の暮しも豊になるだろう。現在は山向こうの兄が一手に請け負い船で運ばれて来るが、日数の関係や積載量など不足する事もある。一年を通して航海は出来るが、冬場はどうしても海が荒れる日が多い、其れに伴い危険が増える。
「どうしたものか・・・ ? 」
「・・・・ここ・・・ よん・・・・・・」
廊下に人の気配がする。
コン・コン・コン
「・・・ 構わない、入れ」
家令のロイクが入ってきた。
どうしたと言うのだ、何時も身嗜みに隙の無い男が、僅かに前髪を乱して入ってきた。走って来たのだろうか、額に薄っすらと汗を搔いている。
平静を装うとしているのか、殊更ゆっくりと
「失礼いたしますエルネスト様。ただ今、第一物見台より急使が参りました」
「急使だと? よし、通せ」
物見台はこの街と山を繋ぐ道筋にある。トンネルで何か起きたのか?
使者の挨拶を遮り要件を質すと
「はっ! ただ今、『神域』に客人の姿を確認いたしました!」
身体中の熱が一気に上がる。
子供の頃より、異世界の客人は私の憧れだ。
神によりこの世が開かれてから、幾度となく客人は現れ、その度に、この世は変化していったのだ。其の変化も様々で、急激に変わる事も有れば気付かず、数年後に気付く事もある。いつの間にかそれが当たり前に成っていて、「誰が・・・」と、思う時に気付くのだ。
客人のもたらす恩恵は、私たちの目の前に有る物を「 ーこれだー 」と気付かせてくれる知識だ。
早く会いたい。
若い女性と言うなら、身なりを整えた方が良いだろう。ロイクに着替える間に簡単な用意をするように命じた。
馬を走らせ、「神域」へ入る。
馬車一台分の道を抜けると目の前が開けた場所で馬から降り、一度自分の連れて来た侍女に食事の入った籠を確認させた。
門というべき場所に有る鐘を鳴らし、中へと問いかける。
「突然の訪問をお許し頂きたい。私はこの地の統括を任されている、エルネスト・セン・バルデュール。異世界よりお越しの方に御挨拶がしたく参上いたしました」
どんな方だろう、窓に影が見えたが、なかなか出てこない。警戒しているのだろう。やはり侍女を連れてきて良かった。
じっと待っていると、ゆっくりと扉が開き、中から少女が顔を出た。
「!・・ エルネスト様・・・」
「何という事だ・・・ 」
侍女が息を吞むのも解る。幼い・・・ 未だ、奉公にも上がれぬ歳では無いのか?
不憫でならない、知らぬ世界に放り出され、さぞ心細かっただろうに。
「カリーネ、怖がらせない様に、あの子が落ち着くまでじっとしていよう」
「はい」
暫くすると、少女がゆっくりと出てくる。なんて恰好だろう、男の子の様では無いか。まさか、あちらの世界で虐げられていたのか? 神が憐れんでお連れになったのだろうか?
少女はゆっくりと、しかし私の手の届かない位置で止まり、私の後ろに控えているカリーネを見て微かにほほ笑んだ。
やはり侍女を連れてきて良かった。
少女の口から柔らかくハッキリとした声が紡がれる。
バル様感覚として、麻奈は12・3歳位に見てるかも。
逆にバル様は何歳に見えるのかな? 何歳にしよう・・・・
バルデュール家は侯爵→公爵に変わりました。
バル様自身は伯爵位を帝王から貰ってます。




