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婚約者に好きな人がいると言われ、スパダリ幼馴染にのりかえることにした  作者: みみぢあん


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9/21

9話 イザークの婚約者3


 私を見てイザークお兄様は苦笑する。


「レティシア嬢は婚約当初から嫉妬深くて。……実は年々、彼女の束縛が激しくなっていたんだ」


「レティシア嬢がそういう人だとは知らなかったわ」

(とても綺麗だから、お兄様にピッタリの女性だとしか思わなかった)


「……それで最近は彼女の嫉妬が静まるまで、社交は休んでいたし。アンリエッタにも迷惑がかかりそうだから、君に会わないようにしていたけど……」


「その話なら、イザーク卿のお母様もおっしゃっていたわ」

 イザークお兄様の話に、お母様が付けくわえた。


「まぁ、公爵夫人が?」


「ええ。レティシア嬢をエスコートして夜会に出席すると。イザーク卿にベッタリとくっついて、殿方同士の話にまで彼女が嫉妬して邪魔をするから困ると」


「殿方にまで⁉」

(自分がお兄様に注目されないと。お兄様が話す相手にまで、嫉妬して怒るということかしら?)


 まるで小さな子供のようだわ。

 イザークお兄様を見ると、肩を竦めて笑っている。……きっと婚約者を持て余していたのだろう。 


「結婚すれば少しは落ちつくだろうと、思っていましたが……」 


 そんな人と結婚するなんて。さすがにイザークお兄様が可哀そうになって来た。


「私は社交デビュー前だから。知らなかったわ……」

(イザークお兄様は未婚の令嬢たちに人気があるから、レティシア嬢が心配する気持ちもわかるけど。でも、やりすぎだわ)


「ねぇ、お兄様。つまり私がエミール様から聞いた『好きな人がいる』という話は嘘なのね?」

(エミール様がレティシア嬢にそう入れ知恵されたのなら)


 イザークお兄様は、私に申しわけなさそうに答えた。


「エミール卿はたぶん……レティシア嬢に君が私の『恋人』だと吹き込まれて、不安を煽られたのだと思うよ」


「全部エミール様の嘘……」

「たぶんね」


「……ああ、だから。好きな人なんて、本当は存在していないから。エミール様は『自分は浮気をしていない』と言い張っていたのだわ!」


「本当にすまない、アンリエッタ。私の方が婚約者との問題に、君を巻きこんでいたんだよ」


 そう言ってイザークお兄様は私に頭を下げた。


「や、やめて! お兄様は悪くないわ!」


「アンリエッタの言うとおりですよ、イザーク卿。むしろ冷静に対応してくれたおかげで。こちらもエミール卿の行動に問題があるとわかった」

 それまで黙って、私たちのやり取りを見ていたお父様もお兄様を慰めた。


「そうよ、お兄様」


「ありがとうございます」

 お兄様はホッ… とため息をつく。 


「それでバラスター公爵家は、今後どうするのか決めましたか?」

「はい。父上と相談して……先日、バラスター公爵家から正式にロスモア伯爵家に抗議し、婚約を破棄することを伝えました」


 伯爵家は全面的に非を認め、婚約破棄を受け入れると。昨日、バラスター公爵家に手紙が届いたそうだ。


 この問題の全容が綺麗に明かされてから、イザークお兄様は報告に来たのだ。


「なるほど、そうでしたか。良い縁組だったのに残念でしたね、イザーク卿」


「ええ。ロスモア伯爵は話の真偽を確かめるため、アップトン男爵家にも連絡を取ったそうですから……」


 チラリとお兄様は私を見た。

 私はフンッ! ……と鼻で(わら)って、お兄様の話を引き継いだ。


「今頃、エミール様は自分の嘘について、ご両親に問い詰められているでしょうね。彼が悪いのよ!」


 私を疑い、嘘までついて一方的に責めたてた。そのうえ私の話を聞こうともしなかった。婚約者失格だわ。


「そうだね。エミール卿が他人のレティシア嬢の話を受け入れず。もっと婚約者のアンリエッタを信じていたら、こんなことにはならなかった」 


「ええ。そしてエミール様が私の話を聞き入れ、嘘をついたことをすぐに謝ってくれたら……こんな大騒ぎにはならなかったわ」

(私も彼を好きでいられたのに。嘘だと聞いても、私の気持ちは戻らない)



「他に好きな令嬢がいてもエミール君の『気の迷い』だから、結婚するまでには落ちつくだろうと… アップトン男爵と話し合い、見守ることにしていたが……」

 お父様はそう言うと… そのまま考えこんでしまう。


 今まではエミール様の『気の迷い』が消えるまで、私が我慢すれば良いという流れだった。

 でもその『気の迷い』が嘘だったのだ。私を騙したのだ。


 これでお父様の、エミール様への信頼が完全に崩れた。  

 このまま私たちの婚約も、解消されるかもしれない。




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