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婚約者に好きな人がいると言われ、スパダリ幼馴染にのりかえることにした  作者: みみぢあん


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10/21

10話 別れ


 結局、私はエミール様の嘘の告白を聞いてから、二週間も学園を休んだ。 


 ようやく意を決して学園へ行くと。

 予想通りエミール様に『話がしたい』……と学園の裏庭に呼び出された。



「全部、僕の嘘だったと知っているだろう? だから君からフェアウェル子爵に、婚約は解消しないで欲しいと頼んでくれないか?」


 私には『黙って我慢しろ』という姿勢だったお父様も。

 さすがに他人の言葉に流されて起こした、エミール様の短絡的な問題行動を黙って見てはいられなくなり。

 私たちが別れるための書類を作り始めた。 


 ──何より婚約の解消は、私自身が強く望んでいるから。エミール様の話を、お父様に伝える気はない。


「今さら、なんのためにですか?」


 自分でも驚くほど、冷たい声で答えた。

 エミール様に掛ける私の声に、熱が戻ることは今後、一生ないだろう。


(そんな話よりも、あなたは私に嘘を吐いたことを謝る方が先でしょう? そんなことも出来ないほど未熟なの⁉)


「僕は君が好きだから。どうしても確かめたかっただけなんだよ。ロスモア伯爵令嬢に、君たちが付き合っていると聞いて、嫉妬で死にそうだったよ!」


 この程度の話では私の心は動かないし。熱も戻らない。完全に私の恋は終ったのだと、改めて自覚した。


「嫉妬したから私に嘘を吐いて傷つけたの? あなたは信じてくれないでしょうけれど。私はエミール様のことが、本当に好きだったのよ⁉」


(それなのに……あなたは私を傷つける選択をした。そのことに少しは躊躇したのかしら? きっとしなかったでしょうね)


 以前なら飛びあがって喜んでいたはずの、エミール様の告白がどうでも良く感じた。それどころか白々しくさえ思えて、増々私の心から熱を奪って行く。


「嘘をつくな! あの時、君はイザーク卿が好きだと言っただろう? 僕がどれだけ傷ついたと思っているんだ⁉ 君が浮気を認めて、僕にきちんと謝罪して、彼と別れたら。僕は君を許す気でいたのに」


「ほら、また私の言葉を信じない。だからあなたが私を好きだという言葉も、私は信じないわ」


(自分の方が被害者だというのね? あきれた。わざわざ、あの時の気持ちを説明して、納得させる気にもならない)


 でも、これが本音を伝える最後の機会だから。エミール様が信じなくても、私の気持ちを正直に話す。



「……イザークお兄様は、何もかも完璧で特別なの。だから平凡な私には合わないのよ。大好きなお兄様だからこそ、完璧な女性と結婚して欲しいわ」


「何だよ! イザーク卿の自慢をしているのか⁉」


「いいえ、違う。正直、お兄様の恋人や奥様になる女性は、すごく苦労すると思う。いくらお兄様が大好きでも、私はそんな苦労はしたくない。だから私は妹で満足だわ」


「そ、そんなの嘘だ! 僕は信じないぞ、アンリエッタ」


 エミール様の瞳が揺れた。少しは私の言葉を聞く気になったのかもしれない。

 きっと同じ男性の目から見ても、イザークお兄様が完璧なのが分かるのだろう。


「平凡な私はね、平凡な幸せが欲しいの。特別ではなくても良かった。だから、私と同じで完ぺきではない、あなたが好きだったわ」


 人より不器用で、言葉が足りない時があるけど。そんなあなたのことが好きだったから。

 エミール様を見ていると、少しずつ気持ちが読めるようになって。

 私たちの気持ちが通じ合って行くのだと……それが嬉しかったのに。


 ……それも、もう終わり。


「嘘だ! アンリエッタ、僕はそういう嘘は聞き飽きたよ」


「結婚するのがアナタで私は幸運だと、ずっと思っていたのに。私の気持ちを信じて欲しかった」

(これだけ言っても、この人は信じてくれない)


 私の気持ちはエミール様の心に一つも届かない。通じ合えない。

 このまま結婚したら、こんなふうに私たちはケンカを続けることになる。

 そしてすぐに離婚するのだ。だから結婚出来ない。


「僕だってずっと、君が好きだったさ! でも君は、君は……っ!」

「今は……私を傷つけたあなたが大嫌いよ!」


 私はイライラとして、エミール様の言い訳を遮るように言い放った。


「アンリエッタ!」


「婚約破棄の書類が完成したら、すぐにアップトン男爵家に届けるそうです。 これであなたもイザークお兄様のことで、悩むことはなくなるわ」


 婚約解消ではなく。お父様は婚約破棄をして、アップトン男爵家から違約金の支払いを請求することに決めた。 


 それほどエミール様の行動は誠実さの欠片も無く。フェアウェル子爵家にとって迷惑だったからだ。


「政略結婚だから。おたがい恋愛感情なんて持たなければ、こんな問題は起きなかったのにね」


「そんな……僕はただ、嫉妬に狂いそうで。君の気持ちを確かめたかっただけなのに! 本当に婚約解消をする気なんて無かったよ!」


「さようなら」


 あなたは最後まで謝らないのね。私が別れの挨拶をして、クルリと背を向けると。エミール様が呼び止めるように叫んだ。


「やっぱり君は、イザーク卿と結婚する気なんだな⁉」


「卒業まであと二年あるけれど。……学園で会っても、話しかけないで下さい。エミール卿」 

(もう、うんざり!  こんな人と話す価値も無い)


 私から恋心が消えてなくなり冷静になると、エミール様には良いところなど一つもなく、欠点しか見つからない。


 ハァ――――… と私は大きなため息をついて、歩き去った。

 




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