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婚約者に好きな人がいると言われ、スパダリ幼馴染にのりかえることにした  作者: みみぢあん


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20/21

20話 留学


 隣国へ来て早々、私の留学期間は緊張の連続で。想像以上に厳しい二年間になりそうだと予感がした。


 私の保護者となる王弟殿下は、とても思慮深く物静かな男性だけど。伯母様(妃殿下)は、王弟殿下の二倍はパワフルで豪快な女性だった。


『甥の婚約者なら私の姪だわ』

 ……と初対面の時に私が妃殿下と呼ぶと、怒られたので。伯母様と呼ばせてもらうことになった。



「イザークのお嫁さんになるのなら、王族と関わる経験をたくさん積まないと。アンリエッタはきっと苦労するわ」


「そ、そうでしょうか?」

「ええ、もちろんよ。……でも大丈夫よ、私が鍛えてあげるから」

「鍛える……?」

 

 隣国で私が通っている学園が休日になるたびに。伯母様は私を自分の公務に同行させた。


 そのうえ、元王女殿下の侍女だったお母様仕込みの礼儀作法が、私にもしっかりと身に付いていると知ると。


 ──なんと伯母様は……


「あなたと年の近い、第三王女殿下のお話し相手になってあげて。王子殿下とは違い、あの子は王宮を出ることが出来ないから。気を許せる友だちがいないのよ」


 つまり第三王女殿下は私のように、学園に通うことさえ許されないのだ。


「わかりました。私もこちらに来たばかりで友人が一人もいないので、嬉しいです」


「そう、良かったわ。すごく良いだから、あなたも気に入るわ。仲良くしてあげてね、アンリエッタ」


 そう言って明るく笑うと、伯母様は私にハグをして頬にキスをする。私も伯母様につられて、傍にいるといつも自然と笑みがこぼれる。


「はい、伯母様!」

「ふふふっ……もちろん、アンリエッタも良いよ。イザークが欲しがるだけはあるわね」


「/////////……あ、ありがとうございます」


 伯母様は王族の中でもとても気さくな方で、私をよく抱きしめてくれる。そんな姿を不作法だと陰口をたたく貴族たちがたまにいるけれど。


 異国の地に来て寂しいだろうと、本当の娘のように接してくれる伯母様は、厳しいけれど根は心の温かい人なのだ。



 私は王女殿下に会うために、伯母様の指示で王宮の出入りを許されたが。

 王族同士の権力争いを間近で目撃することとなり。何度もヒヤリとするような経験までした。



「お……伯母様。今日は本当に生きた心地がしませんでしたわ」

「あら、今日は何があったの?」


 晩餐の席で昼間あったことを報告すると。伯母様にカラカラと笑われた。


「それが……王妃様と側妃様から、お二人同時にお茶に招待されてしまいまして」

「まぁ!」


 王妃様と側妃様はすごく仲が悪い。二人とも同じ年頃の王子殿下を産んでいるから。今は王太子の座を実家ぐるみで争っているのだ。


(本当にあの時は頭が真っ白になって……パニックを起こさなかっただけでも、自分を褒めてやりたいわ)


「それで私……どちらの招待を受ければ良いかわからなくて」 


「ああ、あの二人ね。私に媚びを売りたい人たちだけど。私が相手にしないから……今度はあなたを取り込んで、私を攻略しようという訳ね」


 伯母様の公務に付いて回って分かったことだけど。


 王宮をほとんど出ない王妃様や側妃様よりも。地方の仕事でも嫌がらずに行く伯母様(王弟妃殿下)は、貴族…平民…と身分に関係無く人気がある。


 二人の王子殿下の王太子争いで、どちらの陣営も伯母様の人気にあやかろうとしているのだ。


 晩餐の席には王弟殿下と招待されたイザークもいて。伯母様と私の会話を殿方二人は、穏やかに微笑みながら聞いていた。


 コレも私にとっては貴重な学びの場だから。イザークは一切、口出しをしないのだ。


 夫妻の御子様は、すでに二人とも成人していて。近隣の国へ嫁いでいる。



「それでアンリエッタ、妃たちにはどう答えたの?」

「今日は伯母様との約束があるからと……お断りしましたが」


「それで良いわ。どう? 王族って怖いでしょう。でもアンリエッタも公爵夫人になれば、こういう経験をするようになるのよ」

「はい、伯母様。頑張ります」


 私の顔を見て伯母様は満足そうにうなずいた。

 伯母様の教えかたは、とても厳しく乱暴に見えるが。短期間で学ばなけれがいけない私には、とても有効なのだ。


「イザークからもそんな話を聞きました。本当に想像以上でした」

(帰国すればイザークは王太子殿下の側近になる。そうなれば私も、自然と王族と関わることになるから。これは必要な経験なのだわ)


 向かい側に座るイザークと目が合い、ニコリと微笑まれる。 

『よく頑張ったね』と労われているとわかり、私も微笑み返す。


 イザークが一緒に付いて来てくれて、本当に良かった。おかげで私は、この試練に挫折しないで踏みとどまっていられる。


 微笑み合う私たちを見て、伯母様と王弟殿下もニコリと笑う。


「度胸と判断力を身につけるための訓練だと思いなさい。素質はじゅうぶんあるから、あなたなら必ず出来るわ。アンリエッタ」


「はい。伯母様」

「ふふっ…… 良いね。何かあっても大丈夫よ。私と王弟殿下がしっかり守ってあげるから」

「はい」




 ―――2年後。


 王弟殿下と、伯母様。お友だちとなった第三王女殿下。そして有意義な経験をさせてくれた王家に、敬意と親愛をあらわし。


 私は成人の儀式を母国ではなく、隣国で受けることにした。



 母国で暮らしていたら、絶対に出来なかった経験をたくさんして、私は自分に誇りを持てるようになった。




次が最終話になります。

ここまでお付き合い下さりありがとうございます!

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