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婚約者に好きな人がいると言われ、スパダリ幼馴染にのりかえることにした  作者: みみぢあん


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12/21

12話 バラスター公爵家の提案


 イザークお兄様とバラスター公爵夫人を、家族(※弟不在)で迎え、居間に落ちつくと。

 最初にイザークお兄様が口を開いた。



「私の問題に君まで巻き込んでしまって……アンリエッタ、本当にすまない。学園で辛い思いをしていると聞いたよ」


「ええ。本当に思ったよりも騒ぎが大きくなってしまって、私も驚いているの」

(一番の原因は元婚約者のエミール様が、学園中で言いふらしているのが原因だと思う。恥知らずなうえに口まで軽いなんて……!)


 ついついイザークお兄様が相手だと、甘えたくなってしまうからいけない。

 お兄様の穏やかな声を聞くと、急に今までの悔しさが込みあげて来て、声をあげてわんわんと泣きたくなった。 


 ……だけど公爵夫人もいるし。私を心配する家族も見ているから。気軽に泣いたり出来ない。

 目の前にいるのがイザークお兄様だけなら、迷わず泣いていただろう。


 涙がこぼれないよう、ググッ! と眉間に力を入れると。私は気力を振り絞ってお兄様と公爵夫人に笑って見せた。


 そんな私の心情をおもんばかり、公爵夫人は優しい慰めの言葉を口にする。


「今年、アンリエッタは社交デビューをするはずだったのに。……来年に延期することにしたそうね? 私も楽しみにしていたのに、残念だけど仕方ないわね」


 公爵夫人は私が産まれた時から、自分の娘のよう可愛がってくれる。だから私の社交デビューを、楽しみにして待っていたのが本当のことだと分かる。


「はい、公爵夫人。本当に理不尽な話です」


 私はションボリとうなずいた。私も人並みにデビューを待ち望んでいたから。


 学園内の話はすでに社交界の話題へと飛び火して。そんなところに私がデビューしたら、火に油を注ぎ醜聞のまとになってしまう。

 それを知っていて自分から飛び込むのは、精々虫ぐらいだ。


「小さな赤ちゃんの頃から見てきた、あなたのデビューを楽しみにしていたのに。本当に残念だわ……」


 白くほっそりとした手を私の方へのばし。公爵夫人は私の手を撫でた。

 公爵夫人の心からの言葉に、私は少しだけ癒される。


「はい」

(ダメだわ。こんなに優しい言葉をかけられたら……また涙がこぼれそう)


 ──たぶん、来年デビューしても微妙だと思う。……今年起きた私の醜聞が、社交デビューで再び火がつくかもしれないから。


 醜聞とは一度起こすと、そうやって一生付いて回るのだ。こうなると私の結婚も絶望的だろう。

 いよいよ神殿で女神様に仕えることを考えなければならない。


(私は本当に傷モノになってしまったのね……)


 私と公爵夫人のやりとりを、静かに見守っていたイザークお兄様が、話し始めた。


「それで実はフェアウェル子爵家の皆様に、バラスター公爵家から提案があります」


「ほぅ……提案とは?」

 お父様がお兄様に聞き返した。


「アンリエッタを隣国の伯母上のところへ、行儀見習いに行かせてはどうかと思いまして」


「娘を行儀見習い……ですか?」

「はい」

「イザーク卿の伯母上と言えば……まさか!」


 お父様が顔色を変えて慌て始めると、お父様の隣に座っていたお母様がさらりと答えた。


「隣国の王弟殿下に嫁がれた、公爵夫人の姉君。……我が国の第二王女殿下のところですね」

「はい、子爵夫人」


 驚愕するお父様にお兄様はニコニコと微笑む。

 公爵夫人と仲が良いお母様の方は、前もってこの話を聞いていたらしく。別段、慌てる様子もなく公爵夫人と一緒に微笑んでいる。


 ……それもどこか、楽し気な雰囲気をかもし出しながら。



「……っ⁉」

 私はと言えば、お父様と一緒に驚愕していた。


「うふふっ……どうかしら? さすがに隣国までは醜聞も届いてないから、アンリエッタも今年デビュー出来るわよ」

 ……と楽しそうにバラスター公爵夫人が微笑む。


 ──提案だと言いながら。

 次に放ったイザークお兄様の言葉で、この話はすでに決定事項なのだと悟った。


「手紙で先方に伝えたら、快く受け入れることを承諾してくれました。アンリエッタのために、準備を整えてくれています」


 隣国の王家相手に、手配を終えていると言うのなら。断れる段階はとっくに過ぎている。ヘタに断れば外交問題になるからだ。


「私が行儀見習いに行くのですか⁉」

(隣国の王弟殿下と妃殿下のもとへ? 平凡な子爵令嬢に、なんてムチャぶりなの⁉)


 どう反応して良いのか分からず、私は唖然とした。おかげで涙が引っ込んだけど。


 イザークお兄様は私にニコリと微笑み。次にお父様にも微笑みかけた。

 ……そして追いつめるように返事の催促をする。


「隣国も公用語を使っているから、言葉に苦労することもないしね。どうでしょうかフェアウェル子爵?」


「……」

 私が言葉を失い、呆然としていると。


「うふふっ……もちろんアンリエッタは、行きたいわよね?」

 ……と私は公爵夫人にさらなる追い打ちをかけられた。


「で……ですが、隣国の王族の元へとなると……我が国との外交的な問題が、出て来るのではありませんか?」

 こんな中でお父様は果敢にも小さく反抗すると。


 イザークお兄様はすべて考えてあると、余裕をもって答える。


「ええ、そこでもう一つ提案があります。アンリエッタを私の婚約者として行かせるのです」


「……っ⁉」

「……っ⁉」

 私とお父様は二人一緒に息をのんだ。





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