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喫茶店ローズ  作者: 環状線在住送り犬
喫茶店ローズ第3章
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96/129

間羅の国編2話「暇だ」

場面は変わり、喫茶店「ローズ」。

午後の店内には、ゆったりとした時間が流れていた。


客の姿も少なく、店内には時計の針が進む音と、厨房から聞こえる小さな物音だけが響いている。


そんな中――。


「…………暇だ」


カウンターの奥で、エドワードが完全にだらけていた。

椅子に深く腰を沈め、背もたれに身体を預けている。燕尾服の襟元もいつもより少し緩んでおり、普段の隙のない立ち姿からは想像できないほど気が抜けていた。

頬杖をついたまま、ぼんやりと天井を見る。


「……何も起こらない」


隣ではアルフレッドが楽しそうにエドワードを眺めていた。


「エド兄、暇そうだねー」

「見れば分かるだろ」

「じゃあ何かしてくれば?」

「嫌だ」

「即答だ」


エドワードはさらに椅子へ沈み込む。


「僕は今、何もしたくない」

「珍しいねー」

「いつも働いているんだ。たまにはいいだろ」

「アレクシアに怒られるよ?」

「……」


エドワードがゆっくりアルフレッドを見る。


「余計なことを言うな」


その時、厨房からオスカーが顔を出した。


「え、エドワードさん……大丈夫ですか……?」

「大丈夫だ」

「で、でも……なんというか……すごく……」

「だらしない?」

「……はい」

「正直だな」


エドワードはため息をついた。

そこへアンナがやってくる。


「エドワードさん、今日はずっとそこにいらっしゃいますね」

「そうだ」

「お仕事は……?」

「客が来たらする」

「来なかったら?」

「しない」


アンナは少し考えてから、にこっと笑った。


「すごく暇なんですね」

「……アンナまで言うのか」


アルフレッドが吹き出す。


「ははは!エド兄、人気者だね!」

「嬉しくない」


そんな緩みきった午後だった。

相変わらずエドワードはカウンターの椅子に深く腰掛け、完全にやる気を失っていた。


そこへ、店の奥からアレクシアが現れる。


「エドワード」

「何?」

「買い物、行ってきて」

「嫌だ」


返事が早かった。


アレクシアは無言でエドワードを見る。


「……何だ、その目は」


「店の食材が足りないの。行ってきて」


「颯太に頼めばいいだろ」

「颯太は別の仕事を頼んでる」

「エリオットは?」

「紅茶の管理中」

「セドリック」

「トイレ掃除してる」

「ガブリエル」

「力仕事を頼んでる」

「悟真は?」

「どこかに行ったわよ!!!」


エドワードは黙った。

そして、ゆっくりとアルフレッドを見る。

アルフレッドは満面の笑みだった。


「エド兄、頑張ってねー」

「……裏切り者め」

「何で!?」


アレクシアは買い物用の袋とメモをエドワードへ渡す。


「これ、全部お願い。忘れないでね」


エドワードはメモを見る。


「……多いな」

「店長命令」

「……」


エドワードはしばらく黙り込んだ後、渋々立ち上がった。


「分かったよ。行けばいいんだろ」

「そう」

「まったく……僕は元暗殺者だぞ」


アレクシアは平然と答える。


「今は喫茶店の店員でしょ」

「……それを言われると弱いな」


アルフレッドが笑いながら手を振る。


「いってらっしゃーい、エド兄!」

「うるさい」


エドワードは買い物袋を持ち、店の扉へ向かう。

しかし、扉の前で一度だけ振り返った。


「……何か追加で買うものは?」


アレクシアが少し考える。


「ないわ。メモに書いたものだけでいい」

「了解」


そう言ってエドワードは店を出ていった。

扉が閉まる。

アルフレッドがぽつりと言った。


「なんだかんだ言って、アレクシアの命令にはちゃんと従うよね」


アレクシアはカウンターへ戻りながら答えた。


「長い付き合いだからね」


その頃、エドワードは一人、買い物袋を片手に商店街を歩いていた。


「……面倒くさい」


そして、メモを開く。


「……卵、牛乳、野菜、パン……」


一つずつ確認しながら歩く。


「……僕はいったい何をしているんだ」

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