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喫茶店ローズ  作者: 環状線在住送り犬
喫茶店ローズ第2章〜ヴァレンティア王国編〜
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喫茶店ローズ第2章 喫茶店ローズ〜ヴァレンティア王国編26話「やっと出られたね」

地下水道の出口を抜けると、眩しい陽光が三人を包んだ。

冷たい石の世界から一転、城の外れに広がる森の空気が肌を撫でる。


「やっと出られたね」


アルフレッドが大きく息をつく。

エドワードは周囲を素早く見渡した。


「まだ安心はできない。ここから――」


その瞬間だった。

乾いた銃声が静寂を切り裂く。


――パンッ!


「っ!」


アレクシアの身体が大きく揺れた。


「アレクシア!」


赤い染みが白いシャツにじわりと広がり、彼女はその場に膝をつく。


「かはっ……!」


苦しそうに息を漏らし、胸元を押さえる。

エドワードの表情が一変した。


「アレクシア!」


彼女を支えたその手に、温かい血が流れ込んでくる。

アルフレッドも咄嗟に銃を構え、銃声のした方向を睨みつけた。

城壁の上。

深紅のドレスをまとったルクレツィアが、煙の立つ銃を静かに下ろしていた。

その隣では、拘束されたセリオが目を見開いている。


「やめろ!!」


必死の叫びが城壁から響き渡る。


「ルクレツィア!」


セリオは拘束を振りほどこうともがく。


「どうして……どうして彼女を撃ったんだ!」


ルクレツィアは穏やかな微笑みを浮かべたまま答える。


「逃げるからですわ」

「そんな理由で!」

「王子様」


ルクレツィアの笑みは崩れない。


「あなたを惑わせる存在を、そのまま見逃すわけにはまいりません」


セリオは震える拳を握り締めた。

眼下では、アレクシアが苦しそうに呼吸を繰り返している。


「アレクシア……!」


その姿を見た瞬間、胸の奥が締めつけられる。

助けたい、今すぐ駆け寄りたい。

だが、拘束された身体は一歩も動かせない。

無力感だけが全身を支配していく。


「くそっ…!」


歯を食いしばるセリオの瞳には、悔しさと怒りが滲んでいた。

一方、エドワードはアレクシアの傷口を素早く確認する。


「……やばいね」


短い言葉だった。

その声音には、普段の冷静さの奥に隠しきれない焦りが混じっていた。

アルフレッドも周囲を見回す。


「追っ手が来る!」


城門から兵士たちが次々と姿を現し始める。


「エド兄!」

「ああ」


エドワードは迷わなかった。

アレクシアを静かに抱き上げる。

彼女は意識を保とうとするものの、苦しげに眉を寄せる。


「……ごめん……」

「喋るな」


エドワードは短く言った。


「絶対に助ける」


アルフレッドは追ってくる兵士たちへ数発の威嚇射撃を放ち、その隙を作る。


「行け!」


エドワードはアレクシアを抱えたまま森へ駆け出した。

アルフレッドもすぐ後に続く。

城壁の上から、その背中を見つめることしかできないセリオは、拳を震わせながら呟いた。


「……お願いだ」


その声は、風に消えそうなほど小さかった。


「生きていてくれ、アレクシア……」

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