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喫茶店ローズ  作者: 環状線在住送り犬
喫茶店ローズ第2章〜ヴァレンティア王国編〜
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〜喫茶店ローズ第2章 喫茶店ローズ〜ヴァレンティア王国編23話「着地」

床が崩れ落ちた瞬間、三人の視界は暗闇に飲み込まれた。

耳元を風が唸り、石壁が凄まじい速さで流れていく。


だが――。


「着地」


エドワードが短く呟く。

その直後、彼は空中で体勢を整え、軽やかに床へ降り立った。

ほぼ同時に、アルフレッドも猫のようなしなやかな動きで着地する。


「はい、お疲れ様〜」


そう言って片手を振る余裕まで見せた。

アレクシアも受け身を取りながら転がり、すぐに立ち上がる。


「……痛っ」


膝を軽く押さえながら周囲を見回す。

そこは薄暗い地下通路だった。

古びた石造りの壁。

湿った空気。

天井からは水滴が一定の間隔で落ち、静かな音が響いている。

エドワードは埃を払いながら周囲を見渡した。


「案の定だね」


アルフレッドも苦笑する。


「殺す気ならもっと深い穴にするだろうし」

「つまり?」


アレクシアが尋ねる。

エドワードは壁を指先で軽く叩いた。


「ここは処刑場じゃない。侵入者を閉じ込めるための地下通路だ」

「なるほどね」


アレクシアは小さく息を吐く。


「……無事でよかった」


その一言に、エドワードは肩をすくめた。


「僕らをあの程度で始末できるなら、昔に死んでる」


アルフレッドも笑う。


「それより、出口探そうよ。セリオ君が泣きそうな顔してたし」


アレクシアの表情が引き締まる。


「……助けに戻らないと」


エドワードは静かに頷いた。


「もちろん」


その蒼い瞳は、すでに地下通路の先を見据えていた。


「この城の地下構造は……昔と大きく変わっていなければ、王族区画へ繋がる抜け道がある」


アルフレッドが口角を上げる。


「じゃあ近道だ」


三人は迷うことなく暗い地下通路を駆け出した。


一方その頃――。


崩れ落ちた床の前に立ち尽くしたセリオは、顔色を失っていた。


「アレクシア!!」


叫び声が石造りの部屋に響く。

しかし返事はない。

拳を強く握り締めたセリオは、今にも駆け出そうとする。


その前へ、ルクレツィアがゆっくりと歩み出た。

彼女は扇子で口元を隠しながら、優雅に微笑む。


「ご安心なさい、王子様」


その微笑みは、どこまでも冷たかった。


「すぐには死なないでしょう。あの方々、見たところ普通の旅人ではありませんもの」


セリオは鋭く睨み返す。


「……もし彼女たちに何かあったら、僕は絶対に君を許さない」


その言葉にも、ルクレツィアは微笑みを崩さなかった。


「それは困りましたわ」


そう言いながらも、その瞳だけは獲物を追う猛禽のように細く光っていた。

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