↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喫茶店ローズ  作者: 環状線在住送り犬
喫茶店ローズ第3章
PR
118/129

間羅の国編24話「二度目はない」

九条玄斎は、目の前に集まった全員を静かに見渡した。

エドワード、鷹司、源蔵、花都、霧島、そして夏芽。

これだけの人数が揃っている。

普通なら、圧倒的に有利なはずだった。


だが――。

玄斎が一歩踏み出した。


「――来い」


その瞬間だった。


「――ッ!」


玄斎の姿が、一瞬で視界から消えた。


「速い!」


花都が反応した直後、玄斎はすでに彼女の懐へ入り込んでいた。


「花都!」


源蔵が叫ぶ。

花都は咄嗟に身を引く。

しかし、玄斎の刀が目の前を通過する。

花都は紙一重でかわした。


「……っ!」


その隙に源蔵が前へ出る。


「おおおっ!」


源蔵が力強く踏み込む。

だが――玄斎はその一撃を受け止めることすらしなかった。

身体を僅かにずらし、源蔵の攻撃を完全に空振りさせる。


「なっ――」


そのまま源蔵の懐へ入り込む。


「ぐっ……!」


源蔵が吹き飛ばされた。


「源蔵!」


エドワードが動く。

だが、その瞬間には玄斎がすでにエドワードへ向かっていた。


「――!」


ガキィンッ!


エドワードの刀と玄斎の刀がぶつかる。

一撃、二撃、三撃。

エドワードは必死に受ける。

しかし――押されている。


「……くっ!」


鷹司が横から斬り込む。

玄斎はそれすら読んでいた。

身体を回転させ、鷹司の刀をかわす。


「……!」


鷹司の目が細くなる。


「読まれている……」


玄斎は二人の間を抜けた。

その動きに一切の無駄がない。

霧島が玄斎の進路を塞ぐ。


「――止まれ」


玄斎は足を止めた。

霧島と玄斎の視線がぶつかる。

霧島は拳を握る。


「ここから先は、俺が相手だ」


玄斎は静かに問う。


「お前も強さを求めるのか?」

「違う」


霧島は淡々と答えた。


「娘と一緒に帰るだけだ。そして、お袋の墓参りをする。それだけだ」


玄斎が踏み込む。

霧島は迎え撃つ。

だが――。


「――!」


一瞬だった。

霧島の身体が弾き飛ばされる。


「お父さん!」


夏芽が駆け出そうとする。


「来るな!」


霧島が叫ぶ。

しかし玄斎は、すでに夏芽へ視線を向けていた。


「……お前もか」


夏芽は刀を抜く。


「……はい」


玄斎が構える。

夏芽も構えた。

その瞬間――。

エドワードが低く呟いた。


「……おかしい」


鷹司が横目で見る。


「何がだ?」

「強すぎる」


エドワードの表情から、余裕が完全に消えていた。


「こいつは……ただの剣士じゃない」


玄斎の身体能力、反応速度、判断力。

そして、異常なまでの持久力。

まるで――人間の限界そのものを無視している。

エドワードは玄斎を見据える。


「……あの薬の影響か」


玄斎は答えない。

ただ刀を構える。

そして――。

再び、全員へ向かって踏み込んだ。

エドワードは、九条玄斎に一瞬たりとも隙を与えなかった。


玄斎が踏み込めば、エドワードも踏み込む。

刀が交わる。

弾かれる。

それでもエドワードは退かない。


「――ッ!」


玄斎が横へ回り込もうとする。

その動きを読んだエドワードが先に間合いを詰めた。


ガキィンッ!


玄斎の刀を受け止める。

そのまま押し返す。

九条玄斎が踏み込んだ、その瞬間――。


「――させるか!」


エドワードが前へ出た。


ガキィンッ!


玄斎の刀を真正面から受け止める。

そのまま押し返すことはしない。

玄斎が次の動きへ移ろうとした瞬間、エドワードが刀を滑らせ、進路を塞ぐ。


「……!」


玄斎が横へ動く。

だが、エドワードも同時に動いた。

一歩。また一歩。


玄斎が距離を取ろうとすれば詰める。

斬り込もうとすれば受ける。

反撃しようとすれば、さらに先に刀を置く。

徹底している。

九条玄斎に――一瞬たりとも隙を与えない。


「ほう……」


玄斎が初めて僅かに目を細めた。


エドワードは息を乱しながらも、玄斎から視線を外さない。


「君がどれだけ強かろうと……」


玄斎が刀を振る。


エドワードは受け流す。


「僕がここで止まったら、後ろにいる人たちが危険になるんでね!」


再び踏み込む。


「ならば、お前はいつまで持つ?」


玄斎が問いかける。


エドワードは答えない。


ただ斬る、受ける、弾く。

そしてまた斬る。

玄斎が攻撃に転じるたび、エドワードがその動きを潰していく。


「……!」


鷹司がその光景を見ていた。


「なるほど……」


源蔵も息を呑む。


「エドワードの奴……」


花都が続ける。


「ずっと玄斎を押さえ込んでる……!」


霧島も治郎も黙って見ていた。

エドワードは明らかに限界に近づいている。

それでも退かない。


「……僕はね」


玄斎の刀を受け止めながら、エドワードが低く呟く。


「さっき、一度負けたんだ」


玄斎が押し込む。


「だから――」


エドワードは踏み込んだ。


「二度目はない!」


刀が激しくぶつかる。

玄斎の動きが、ほんの一瞬だけ止まった。

その僅かな瞬間を――エドワードは決して逃さなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。