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喫茶店ローズ  作者: 環状線在住送り犬
喫茶店ローズ第3章
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間羅の国編18話「絶対に……許さないから」

「仲間思いはいいことだ、美琳」


沈博は静かにそう言った。

美琳はバイザー越しに兄を睨みつける。


「うるさい、バカ兄貴」


その瞬間だった。

美琳がサイバー銃を抜き、沈博へ向けて発砲する。


「っ!」


沈博は身体を僅かに傾け、飛んできた攻撃をかわした。

同時に紫鈴が動く。


「来るアル!」


ジンドウが大型サイバー砲を構え、すぐさま援護に入った。


「ロウ!」


ロウが短く頷く。

大きな身体が一気に前へ出る。

美琳はバイザーに表示される情報を次々と確認しながら、射撃位置を変えていく。


「そこ!」


しかし――。

沈博は美琳の射撃をことごとくかわしていく。


「嘘でしょ……!」


美琳が舌打ちする。

弾道補正、予測射撃、電子解析。

美琳が得意とする技術を最大限に使っている。それでも沈博は、まるで最初から攻撃の軌道を読んでいるかのように動いていた。


「美琳!」


ジンドウが叫ぶ。

紫鈴が一瞬で距離を詰めていた。


「悪いアルね!」


美琳が身を翻してかわす。

だが、その直後――。


「ぐっ!」


ジンドウの大型火力支援ユニットが弾かれた。


「なに……!?」


ジンドウが体勢を崩す。

そこへロウが割って入り、紫鈴の動きを止める。

ロウは無言のまま周囲にあった棒状の器具を掴み、紫鈴へ振り下ろす。

紫鈴はそれを受け流した。


「……やるアルね」


ロウの暗い琥珀色の瞳が鋭くなる。

しかし――。

紫鈴は一歩も引かない。

ロウが攻撃の間合いを変えるたび、紫鈴は正確に対応していく。

その一方で、沈博は美琳とジンドウを相手にしていた。


「くそっ!」


ジンドウが防御シールドを展開する。

沈博は正面から無理に突破しようとはしなかった。

一瞬だけ視線を動かし、シールドの弱い部分を見抜く。


「そこか」

「なっ――!」


衝撃でジンドウが後ろへ下がる。

美琳がすぐに射撃する。

だが、沈博はその射線から離れながら、美琳との距離を一気に詰めた。


「速――」


美琳が言い終わる前に、武器を持つ手を押さえられる。


「兄貴……!」

「無理をするな、美琳」

「誰が……!」

「兄貴が妹を可愛がるのは当然だろ」


美琳は強引に振りほどき、後ろへ飛び退く。

その表情には悔しさが浮かんでいた。


「……強すぎるでしょ、バカ兄貴!」

「お前も強くなったな」

「上から目線で言うな!」


美琳が再び銃を構える。

しかし、状況は明らかだった。

美琳たちは一人ひとりの能力こそ高い。

だが、沈博と紫鈴は、それを上回る実戦経験と技術を持っている。

ジンドウの火力支援も、ロウの近接戦闘も、美琳の電子戦も、決定打にならない。


そして――。

すずらは後方から全員の状態を確認していた。


「……みなさん、少し下がってください」


穏やかな声だった。

だが、その表情はいつもの柔らかなものではない。


「このままでは、怪我をしてしまいます」


大和も息を切らしながら構える。


「……俺も、まだやれる」


美琳が横目で大和を見る。


「無茶しないで!」

「お前に言われたくない!」

「私はいいの!」

「よくないだろ!」


そのやり取りの間にも、沈博と紫鈴は静かに構えていた。

沈博が美琳を見る。


「美琳」

「何よ」

「まだ続けるか?」


美琳は銃を握り直した。


「当たり前でしょ」


そして、五人は再び身構えた。

沈博と紫鈴を相手に――戦いはまだ終わっていなかった。

戦いは続いていた。


美琳が電子解析を駆使して射撃を続け、ジンドウが後方から援護する。大和も必死に動き、すずらは全員の位置を確認しながら隙を探していた。


そして、ロウは一人で紫鈴の前に立っていた。

無言のまま、周囲の道具を拾っては即座に武器として使う。

紫鈴の攻撃をかわし、受け流し、距離を詰める。

これまで何度もそうしてきた。

だが――。


「……!」


ロウが一瞬、動きを止めた。

紫鈴はその僅かな隙を見逃さなかった。

次の瞬間、ロウの身体が大きく弾かれる。


「ロウ!」


ジンドウが叫ぶ。

ロウは壁際まで飛ばされ、そのまま床へ倒れ込んだ。


「……っ」


いつもなら、すぐに立ち上がる。

しかし今回は違った。

ロウは起き上がろうとして、片腕に力を込める。

だが――身体が動かない。


「ロウさん!」


すずらが駆け寄る。

ロウの呼吸は荒く、意識も明らかに弱っていた。

すずらはすぐに状態を確認する。


「……動かないでください」


いつもの柔らかな声だった。

しかし、その目だけは真剣だった。


「かなり危険な状態です。今すぐ処置が必要です」

「ロウ!」


ジンドウが駆け寄ろうとする。

だが、沈博がその前に立ちはだかった。


「……通すわけにはいかない」

「どけ!」


ジンドウが怒鳴る。

沈博は動かない。

その間に、美琳が兄へ銃を向けた。


「兄貴……!」


声が震えていた。


「そこをどいて。じゃないと――」


沈博は黙って美琳を見る。


「……撃つ」


美琳の指が引き金にかかる。

一方、床に倒れたロウは、僅かに顔を上げた。


「……あ」

「喋んな!」


ジンドウが叫ぶ。

すずらはロウのそばで応急処置を始める。


「大丈夫です。わたしがいますから。今は動かないでくださいね」


ロウは返事をしない。

ただ、すずらの指示に従うように目を閉じた。

ジンドウは拳を強く握りしめる。


「……くそっ」


これまで何度も危険な場所を一緒にくぐり抜けてきた。

どれだけ追い詰められても、ロウだけは倒れなかった。

そのロウが――今、動けない。

美琳もそれを見て、唇を噛んだ。


「……兄貴」


沈博は何も言わない。

美琳の表情が変わる。


「絶対に……許さないから」

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