case9 探索編 2
やはり、日陰に居ようとビーチは熱かった。と言う訳で姫はフラフラと町をさまよい歩いていた。
あっちへフラフラ、こっちへフラフラ、自由気ままに見知らぬ土地を探索する姫に呼びかける声があった。
姫が居なくなることなど日常茶飯事、GPS代わりの二尾隠しの首輪もある事だし、そもそもここは絶海の孤島、迷惑をかけるにしてもボヤで終わるだろうと言う事でほっておいた。
「こっちはカードをオープンにしたんだ。そっちも少しは開示しちゃどうだ」
倫太郎、捨て身の言いくるめに、翔子はため息を吐きつつ、それに付き合う。
「開示と言っても、私が知っていることは些細な事よ。
依頼はリゾート開発の元受企業から文書で届いたの」
「ほーん、そりゃお行儀のよい事で」
倫太郎の事務所はドの付く零細探偵社、アポどころか、駆け込みの依頼も多い所なので、企業相手の依頼も多く取り扱っている、豊前シークレットサービスとは大きな違いがあった。
そして、依頼文書に書かれていた内容と言うのは――
「……なんか違うくねぇか?」
「そうなのよね」
――原因不明の妨害に有っているので、その究明と対策を願うと言った依頼文書だった。
「まぁ、考えてみりゃ、自前の迎撃態勢が万全ならば、お前の所に依頼することもないからな」
「それはそうね。
所で倫太郎君、化け狸のマミ蔵は、確かに『術は効果なかった』って言ったのよね」
「ああそうだ。奴らにしても、術が効いてりゃ態々外部の者を招き入れる必要はねぇ」
「となると、どちらかが虚偽の報告をしている?」
「そう言う事なら怪しいのは狸どもの方だ。奴らが俺をハメて、元々その企業の持ち物だった勾玉を奪取しようとしてるとかか?」
「んー、それもあまり考えにくいわね、あの企業はごく普通の企業よ。そんな曰くつきのプライズを持っているとは考えにくいわ」
「「ん~~~」」
議論は夏の日差しの様に結論が出ることないまま茹で上がる。どちらかが虚言を弄しているのか。それとも……。
二つ島はその名の通り、二つの島からなっている。とは言え小さい方の島は岩と言ってもいいほど小さなもので、人が住めるような土地ではない。精々が小さな祠が立っている程度のものだ。
そして、化け狸たちはそこを根城としていた。
「おう、探偵殿。さっそくの訪問ありがたい事じゃて」
満潮時には徒歩で渡れるその島に訪れた倫太郎たちを出迎えたのは、キセルをふかしたマミ蔵だった。
「それで、そのご婦人たちはどなたかの?」
「お初におめりかかりますわ、マミ蔵様。私、豊前翔子と申します、こちらは秘書の添田明。
私たちは、分かり易くいってみれば、貴方の敵でございますわ」
そう言い、翔子はにっこりとほほ笑んだのだった。
「ほう、敵とな」
「ええ、貴方が妨害した、あるいはしようとした建設会社が送り込んだ刺客でございますわ」
「なるほど、なるほど。して探偵殿、これはどういうことかの?」
「あっ?別に殴り合いで解決しろとは言われてねぇだろ、話し合いでも解決は解決だ」
「ほう、それでは交渉をしてくれると?」
「ああ、だがその前にお前さんの依頼に少々理解不能な所が出て来た、そんで意見のすり合わせを行いたいってとこだ」
倫太郎はそう言うと、翔子から聞いた依頼内容をマミ蔵に説明したのだった。
「ふむ、奇妙じゃのう」
そう言って、マミ蔵は眉を顰める。倫太郎はその表情の揺れを見逃さないようにじっとマミ蔵を見る。
相手の嘘を見抜くのは、生粋の詐欺師である姫の方が得意なのだが、居ないものはしょうが無い。
倫太郎の見立てでは、マミ蔵の反応に不自然な所は無かった。それはすなわち、マミ蔵たちはやっぱり自分たちの術が効いていなかったと思っていると言う事であった。
「だろ?そのこいつは、現場が奇妙な事になってるってんで依頼されたんだ、お前の説明とは食い違ってる」
「具体的に、どういった『変な事』が有ったのかのう?」
「それは、私どもから説明させていただきますわ。明」
はい、翔子様と明は返事をし、事件の詳細が書かれた書類を読み上げた。
「……ふむ、それじゃあ記憶があやふやになっていると言う事かの?」
「はい、結論から言えばそうでございます」
マミ蔵のまとめに、明は頭を縦に振る。
「ふーむ、儂らが術を掛けた前後で、特に変化は無かったでのう」
「と、なると……」
「やはり、第三者の存在が疑われますわね」
翔子は、倫太郎の発言を引き継ぎ、そう結論付ける。
魅了などの、精神操作系の術を仕掛けられた人物に、術を上書きするためには、普通に術を仕掛けるよりも遥かに難易度が高い。
その場合は、掛けようとする人間の抵抗力を突破する戦いではなく、術者同士の力量比べと言う戦いとなるのだが……。
「ぶっちゃけ、お前らの魅了術の実力ってのはどの程度なんだ?」
倫太郎の、明け透けな物言いに、マミ蔵は苦笑いをしながら答える。
「そうじゃのう、儂らが得意としているのは変化の術や、幻覚の術で、魅了の術に自信満々と言う訳じゃないのう。正直な話勾玉の力を借りたとしても専門家とやり合うのは難しいかもしれんのう」
「参考までにお聞きしますが、専門家と言うのに心当たりはございますか?」
好奇心と向上心に溢れた、明の質問にマミ蔵が返した返事はこうだった。
「ふむ、個体としては悪名名高き金毛白面他色々おるが、種族として得意としておるのは、先ずは化け狐か、後はそこな探偵殿が面倒を見ておる化け猫なんぞが得意としておるのう」
「姫さんですか……そう言えば倫太郎さん、姫さんは今何をしてるんですか?」
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姫に探索させる上手い動機が思いつきませんでしたorz




