case9 探索編 1
「にゃ~んで、うけちゃったかにゃ~。どう考えても胡散臭い依頼だったのににゃ~」
「どの口が言ってやがるどの口が」
姫は、以前自分が倫太郎をはめようとしたこと(case4)を棚に上げ、マミ蔵の依頼を受けた倫太郎をグチグチとなじる。
「まぁまぁ、姫さん。依頼料はちゃんと日本円で頂けましたし」
それについては、『これを見抜けなかったら狸の妖術の方が上手って事だよな(笑)』と倫太郎に挑発された姫自身が血眼になり確認した。
なんでも、その金は『捕らぬ狸の皮算用』と言う貸金業者を運営して稼いだ金らしい。狸は猫と違った分野で人を利用し、たくましく生きているらしい。
「それにしても押し込み強盗だにゃんて、それこそ両手が後ろに回ることになるにゃ」
「はっ、そんな不細工な真似はしねぇ……って言いたいところだが、確かにその危険があるんだよな」
「えっ?何時もの忍術でぱぱーとやるんじゃないんですか?」
そう、河童忍術には、水遁空気羽織と言う、光学迷彩の術があるのだが……。
「問題は、狸どもの術も見破られちまっているって事なんだよな」
この平成も終わろうとしている世の中で、大入道の変化を見せて現場作業員を震え上がらせても、工事の妨害は難しいと言う事で、化け狸たちは洗脳術を使ったそうだが、効果は見られなかったらしい。
「にゃん、それは狸どもの術がちゃちだっただけじゃにゃいのか?」
「それだったら、話は早いんだがな。あの勾玉の持つ雰囲気は本物だった100倍は盛りすぎだとは思うが、10倍ぐらいなら何とかなるかもしれん」
それは、過去に様々なプライズに触れて来た倫太郎の直感であった、あの勾玉は本物だと倫太郎の鼻が告げていた。
同時に、狸たちが全てを話している訳でないことも告げていたが。まぁ依頼の段階で腹に一物抱えているのは人間だって同じ事とスルーしておいた。
「まぁ取りあえず現場百辺と行こうか、ちょうど熱くなってきたことだし、島巡りも悪くはないだろ」
旅費はあっち持ちだしな。と言って倫太郎は遠出の準備を始めるのであった。
「海だーーーー!!!」「海ですよ!!!」
「にゃ~にを浮かれているのかにゃこの人間どもは」
海である。
隠れたリゾート地として知る人ぞ知る二つ島の海岸には、お肌の曲がり角なんて何のその、私は永遠の17歳だを信条とする鈴子と、現役バリバリ本物の17歳、スポーツタイプの水着が眩しい添田明の姿があった。
「……なんでお前らが居るんだ?」
「あら、それは私の台詞なんですけど?」
そして波打ち際ではしゃぐ2人をを見守る影が2つあった、一つは、中折帽とサングラスはそのままに、黒スーツを脱ぎ、Tシャツ短パンの姿の倫太郎と。
パレオタイプの水着を着、ビーチパラソルの下で優雅に寝そべる、豊前シークレットサービス社長、豊前翔子だった。
翔子は、灼熱の太陽に辟易していた姫を、パラソルの影に笑顔で招き入れつつ話を続ける。
「私たちは、仕事の一環でしてよ。明の昇進祝いも兼ねて、1日早めに現場入りして骨休め中ですの」
この狭い島で、翔子の所に依頼が来るような案件……。倫太郎は悪い予感に頭痛を抱きつつも、こう切り出した。
「……もしかしなくても、開発がらみの仕事か?」
「あら、共同任務なんて話は聞いておりませんけど……もしかして」
やはり、真っ当な探偵社には真っ当な依頼主から仕事が来るものだと、倫太郎は心の墨で思いつつ、決めに決めてタバコを一服。煙と共にぼそりと切り出す。
「どうやら今回――」
「若様!若様――!!」
「……なんだ、鈴子」
ビーチ中に響き渡る、若様コールを発しながら、鈴子が駆けてくる。その後ろには申し訳なさそうな顔をした明も一緒だ。
「なんか今回、明ちゃんとは敵みたいですよ!あとビーチは禁煙です!」
「俺が今言おうとした台詞だよ!」
「むー!分かってるなら吸わないで下さいよ、頭悪い」
「そっちじゃねぇよ!」
ギャーギャーと、下らない言い争いをする人間たちを尻目に、姫はパクリと、翔子の傍に有ったマスカットを一つ拝借したのであった。
※犬猫に、ブドウ類を食べさせると中毒症状を起こす危険性があるので止めましょう。
敵対関係ははっきりとしている。拳でケリを付ける前に、交渉をしよう。と、倫太郎は切り出す。
女子供に手を上げないのが彼のハードボイルドだ。けして、翔子だけならともかく、おまけで明もついて来るとなれば、二人を相手に戦うのは厳しいと判断した訳ではない。
「私としても、仕事が早く解決できるなら何よりですわ」
翔子は倫太郎の内心を読みとって、ニマニマと笑いながらそう返事をしたのであった。
どうせ調べれば、直ぐにわかる事と、倫太郎はマミ蔵から貰ったカードをオープンする。
「と言う訳で、狸どもの目的はそのプライズだ。後はおまけに生存権を保証してやればいいだろう。いっそのことどこぞのキツネ村の様に、そのリゾート施設で餌付けしちまうってのはどうだ?」
「プライズの事は了解しました。そう言ったものを拾ってないか確認してみますわ。後半については、経営アドバイスまでは請け負っていませんが、提案してみますわ」
「助かる。まー言ってみれば今回は地元(狸)の同意を得ずに、突然工事が始まっちまったのが原因だ。幸いマミ蔵は人間たちの事情や動機にも理解がある、上手くまとめてくれればすんなりいくんじゃねぇか?」
「全く他人事ね、面倒くさい事をこっちに丸投げするつもりじゃないでしょうね」
話の流れがおかしな方向に行きつつあるのを察知した翔子は、ジト目で倫太郎にくぎを刺す。
「ばっばっか野郎、俺は決して、交渉事をお前に丸投げしようなんて思っちゃいないのぜ」
「あっきれた。いい明、貴方はこんな駄目男に捕まっちゃだめよ」
翔子はそう言いつつ、鈴子に同情の眼差しを送る。
「なっなんですか、翔子さん。その目はやめてくださいよ。私は唯のアルバイトですってば」
急に矛先が向いてしまい、焦る鈴子に、同情の視線を送る明。倫太郎はその光景を他人事のようにぼうっと眺めていたが、ふと姫が居なくなっているのを気づいたのだった。
次の展開がががががが……




