へぇ、デートかよ
「どうだった?」
「奥から三軒目のたこ焼きが一番大きいですわ。値段も他と同じですし、たこ焼きはそこですわね」
「かき氷は一番手前の店がフレーバーが一番多い。ただ、中央に近いかき氷店はミルクがかけ放題だ」
「悩みますわね、量的には?」
「どこも変わらない」
酒とツマミに走るガブロと『無頼』。
一人で甘い物の出店をはしごするマジャリス。
そんな連中から離れ、まずは一度、出店を全て確認したリリウムとラベンドラは。
「焼きそばは正直どこも大差ないな」
「クレープも同じですわ」
数多く出店している出店の中で、どこの店で買うのがコスパがいいか。
花火大会に来ているのに、出店を回ることに全力を注ぐそんな二人。
「よし、まずはたこせんからいくぞ」
「おーですわ」
そんな二人が一軒目に選んだお店は、たこ焼き二つをえびせんで挟んだ通称たこせん。
大人しく列に並ぶ二人の姿を見ながら、
「意外と外人さん多いし、あんまり目立っては無いな」
と、翔はつぶやく。
ただ、これは日本人目線の話であり、花火大会の会場に居る外国人的には、
(あれはどこの国のやつだ?)
などと、出身国が想像出来ず、困惑していたりするのだが。
「カケル、あれ何?」
というか、自分よりも身長の低い外国人と手を繋ぎ、ましてやその外国人は浴衣で着飾っているという翔の方が、目立つ存在だったりする。
「あれはラムネですね。飲みます?」
「飲んでみる」
アメノサが興味を示したラムネを二本買い、手渡して。
「おっと」
開けたら吹きこぼれたラムネを、急いで飲み始める翔。
「……? 飲めない」
なお、アメノサはラムネの飲み方が分からず、しっかりと中のビー玉で蓋をしてしまっている様子。
「むぅ……」
舌で押し込み、何とか隙間から飲もうとするも、流れてくる量は微々たるもの。
そんな格闘をしているアメノサに。
「いったん戻して。ここのくぼみにビー玉をハメるんですよ」
ラムネの飲み方をレクチャー。
「……なるほど。美味しい」
「良かったです」
外国人にラムネの飲み方をレクチャーする。
ラブコメであれば定番のイベントを見せつけられている周囲の人間は一体どんな感情なのだろうか。
まぁ、答えはどでかい舌打ちなわけであるが。
「……うん?」
「なんか、騒がしい?」
ラムネを片手に、もう片手はしっかり繋いで翔とアメノサが歩いていると、一段と騒がしい出店を発見。
そこでは、
「だ~! また折れた!」
「おっちゃん! もう一回!!」
「最初から割れてたって! 新しいのにしてよ!!」
と、子供たちが大はしゃぎ。
その出店とは……。
「型抜きか」
「どういうお店?」
「決められた型通りに抜くんです。成功すると……ここではお金が貰えますね」
「やる!!」
と、説明もそこそこにフンスと鼻息を荒くしたアメノサ。
なお、その脳内は、お金が一杯=翔と長く居られる、という単純な物だったりする。
「二枚ください」
「?」
「俺もやります」
そうして翔も参戦し、没頭すること……五分。
「まぁ、無理ですね」
「むー!」
失敗しては挑戦を繰り返し、二人で千円の出費をしたところで、悟る。
これは成功できないやつだ、と。
「他のを行きましょう」
「そうする」
息まいたのに、一枚も完成しなかった。
その事実に、ほんのちょっぴりと落ち込んだアメノサであったが、このすぐ後に翔に買って貰ったベビーカステラで即座に回復。
そして、この二人と入れ違いになる様に入ってきた一人の外国人。
もっと言うならば、超が付く甘党のエルフによって、この型抜き屋は大損害を被るのだが。
視点は一度、酒飲み達へと移そうと思う。
*
「あんたら全然みねぇ顔なのに日本語うめぇな」
「国に合った言葉を学ぶのは当然じゃろうが。ほれ、もっと飲め」
「あんたも連れも、酒がつえぇな! おら、こっちにもまだまだあるぞ!!」
……何故だかガブロと『無頼』の二人は、本部の設営委員会の人間と意気投合しており。
全員で宴会よろしく酒とツマミを広げていたりする。
ちなみにこの場所に辿り着いた理由は、ガブロの言う、
「酒の匂いがする」
という方向へと足を進めていただけなのだが。
「おう! 焼き鳥の皮とモモのタレだ」
「スマンのぅ、買い出しになぞ行かせて」
「いいっていいって。その分金を出して貰ったんだからさ」
そんな宴会よろしい場所での支払いは、ガブロと『無頼』のお小遣い全額で賄われている。
なお、花火大会本部の人間と言う事で、出店で買う商品のほとんどが本部料金となっている為、他の異世界組よりも多く飲み食い出来ているのは内緒。
――たった一人のエルフを除いて。
「にしても、観光でこの場所の花火大会たぁ、あんたらも好きだねぇ」
「豪勢な代物だと聞いている。期待外れにならねぇと良いがな」
「何言ってやがんだ。ここの花火大会は文字通り世界一よ」
「ほぉ」
もう少しで始まる花火大会。
その様子を欠片も知らない『無頼』がそんな事を口走り。
一瞬だけ険悪なムードになるも、そんなムードを和ませるのは当然酒。
「焼き鳥とお好み焼き、焼きそば以外にツマミ要ります?」
「一旦そんなもんでいいんじゃねぇか?」
「イカ焼きのゲソを頼む」
「それもありましたね」
果たしてこの二人は、花火大会が始まる前に、本部の設営委員会を潰さないだろうか……。
マジャリスの毒牙に掛かった型抜き屋が膝から崩れ落ちるまで残り十五分。




