姉貴は予約席
「……なんて?」
「だから、旦那が花火大会に行ってみたいんだって」
新婚旅行という名の日本巡りを終えた姉貴たち夫婦。
旦那はホテルに泊まり、姉貴はそんなに多くない自分の荷物を整理するための実家である俺の家に帰省。
で、突然そんな事を言い出した、と。
「行けばいいじゃん」
「足はどうするのよ」
そして、行きたいなら勝手に行けば? と返した俺に、わざわざそんな話をした理由を明確に伝えてくる姉貴。
己の足があるだろ。
歩け。
「花火大会会場まで車で行けると思うとかエアプかな?」
「電車もバスも密室サウナになるって知らないとか花火大会エアプかな?」
という微笑ましい煽りあいの後、ある程度離れた場所のコインパーキングに車を停めて歩くことで合意。
ちなみにコインパーキングの代金は当然姉貴持ち。
「なんで花火大会会場に近い知り合いを作っておかないのよ」
「その為だけに作る友人とか友人じゃねぇだろ」
なんて暴論もスルーしつつ、異世界組に来る時間ずらしてもらわないとなぁ、と思っていたところ。
「異世界組も来るでしょ?」
なんて、無茶な事を。
「車、何人乗りとお思いで?」
「あの人らなら私の場所まで転移とかいけるって」
そういえば、リリウムさんの髪束を持ってるんだっけ……。
その魔力を辿ってくれば、可能なのか……?
「その辺は異世界組と要相談じゃない?」
「あと、浴衣着せたいのよね」
「異世界組に?」
「旦那に」
さいで。
まぁ、日本文化体験と言う事でいいんでない?
「そっか。異世界組にも着せたいわね……」
「エルフや『無頼』さんはいいとして、ガブロさん似合うかな……」
「戦国時代の武将とかそっち方面になりそう」
「あー……確かに」
誰か忘れたけど、男で身長が低い猛将みたいな人居たよね?
そもそも戦国時代は平均身長が今より低かったし。
「あんた、着付け出来る?」
「小学校の選択授業で取って無いから無理」
「近場で浴衣レンタル出来る場所に予約入れとくわね」
「もちろんその代金も?」
「私が出す」
「神様仏様姉貴様」
というわけで、異世界組の浴衣体験&花火大会という、日本文化体験の始まり始まり。
*
「多少の動きにくさはありますけれど、襲ってくる魔物も居ませんし」
黄色を基調に、白い花柄の描かれた浴衣姿のリリウムさん。
「カケル達の先祖は、こういった服を着ていたのか?」
シンプルな鼠色の浴衣のラベンドラさん。
「足回りだけだな。上半身は可動域は制限されちゃいねぇ」
濃い藍色の浴衣の『無頼』さん。
「甘い物がいっぱい出ているのだろう? 早くいくぞ!」
白い浴衣に黒いひし形模様の浴衣のマジャリスさん。
「……変じゃない?」
白い生地に、アサガオのような青と紫の模様が入った着物のアメノサさん。
「腹がキツイわい……」
緑色で濃淡のコントラストがある浴衣の、風呂上りお相撲さんスタイルガブロさん。
皆さん似合ってますよ。
「はい、カケル」
「?」
「異世界組の出店代」
で、本日のご飯は花火大会会場の出店で済ませようって姉貴が言いだし。
出店の料金理解してるのか? と言ったら、こんにゃくでビンタされました。
もちろん比喩。こんにゃくとは札束の事である。
で、交渉の結果、流石に一人一万あれば足りるだろうというか足りるように買えって話がまとまり。
今こうして異世界組にお小遣いとして提供した次第。
「補充はありません。なのでしっかり考えて使うように」
「「はーい」」
「お酒や飲み物もそれから支払うように。あと、お酒飲む場合は節度を持って。トラブルになったら許しませんからね」
「「はーい!」」
「困った事があったら俺を探してください。分かった人ー」
「「はーい!!」」
よろしい。
「じゃあ……散!!」
という事で思い思いに動き出すリリウムさん達。
さぁまずは真っ先に飲み物を販売している出店に向かうガブロさんと『無頼』さん。
値段を確認し……顎に手を当て。
あー結構考え込んでいますね。思ったよりも値段が高かった、と言ったところでしょうか。
どうやらまずは三本ほど購入するみたいです。
さぁそして、まっしぐらにわたあめに向かったマジャリスさん。
わたあめを受け取り、ご機嫌に食べながらりんご飴へ突入。
りんご飴を受け取ってチョコバナナへと足を運びます。
「カケル」
「どうしました?」
脳内で実況してたらアメノサさんから声をかけられた。
アメノサさん、屋台に向かってなかったのか。
「行こ」
と言って差し出される手。
まぁ、受けないと男ではないわな。
というわけで、手を繋いで二人で屋台へ。
「カケルは何を食べるの?」
「ん~……たこ焼き、イカ焼き、焼きそばとかはし巻きですかね」
主に屋台の代表なのばかりだけれど。
結局そういうのが一番ハズレが無い。
美味しいとはまぁ断言しないでおこう。
「じゃあ、一緒に買う」
「だったらシェアしましょう。そっちの方が色々と食べられますし」
「する」
という事で、アメノサさんと二人で回りましょ。
……これってもしかしてデートなのでは?
「最初は何?」
「たこ焼きですかね。一番シェアしやすいですし」
「ん」




