一部の桃源郷
……はぁ。
連れて行くか……。
ぜんっぜん気が進まないけど。
「さーけ! さーけ! さーけ! さーけ!」
「にーく! にーく! にーく! にーく!」
「どちらかだけです」
「じゃあ酒!」
「だな!!」
はぁ……。
久しぶりに六人揃って来たと思ったら、登場早々酒酒酒とお酒の大合唱ですわよ。
誰がって?
もちろんガブロさんと『無頼』さんよ。
ちなみに他エルフの三人やアメノサさんも……。
「もっと色々な知見を得たい」
だの、
「たまにはお酒飲みたい」
とか言って止めないんだもん。
という事で、今日の晩御飯は――居酒屋に決定。
――はぁ。
*
いやぁ、とりあえず近くの居酒屋に片っ端から連絡して、今から宴会コースで七人が受け入れて貰えるかを確認。
流石に急すぎていろんなお店から申し訳ありませんと言われたけど、謝るのはこちらの方なのよ。
そんな中、ご用意出来ますと言って貰えた居酒屋に向かってるなう。
なお、流石に俺の車に7人は無理なので、完全に気配遮断をした上でお店の近くまで転移することに。
現代は魔力が薄いとか言ってたけど、当たり前に転移が完了。
なんと言うか、エレベーターに乗ってるみたいな感覚だったよ、転移。
てなわけでお店に到着。
「先ほど連絡した臥龍岡です」
「お待ちしておりました、奥の座敷へどうぞ」
という事でお店に入り、案内に従って奥のお座敷へ。
とりあえず異世界組は奥に入って。
注文を取る俺が一番手前に居ないとダメだろうからさ。
「落ち着く雰囲気の内装ですわね」
「個室なのがいいな」
「自分たちだけの時間を過ごせる」
「酒酒酒酒」
「とうとう酒としか発さなくなったぞ……」
そこまでいったらもう医者が匙を投げるレベルなのでは?
いや、知らんけど。
「ご人数分の宴会コース、プレミアム飲み放題付きでお間違いありませんか?」
「はい、大丈夫です」
「お車でお越しの方は……」
「居ないので大丈夫です」
「かしこまりました。すぐにお持ちしますね。最初のドリンクはいかがいたしましょう?」
「とりあえず生中人数分で」
「かしこまりました」
さて、とりあえずは大丈夫かな……。
「生中とは?」
「生ビール中ジョッキの略です。とりあえず一番最初に頼む定番のお酒ですね」
「ビールか」
「マジャリスさんは苦いの駄目でしたっけ……」
「まぁ、飲めなくはない」
あんまりエルフ組がビール飲んでるイメージ無かったなそういえば。
まぁ、飲めなかったらガブロさんに渡せば勝手に飲み干してくれるでしょ。
「前菜の小鉢です。うにく、揚げ出し豆腐、さつま揚げとなっております」
というわけで最初に来ますは前菜の小鉢たち。
にしても、前菜からうにくとは飛ばしますなぁ。
「カケル、料理の説明を」
「牛肉を炙ってウニを乗せた物、豆腐を上げて出汁をかけたもの、魚のすり身を練って油で揚げたものですね」
「ビールがキンッキンに冷えてて美味いぞい」
――こんのドワーフ。
まずは乾杯まで飲み干すのを待てぃ。
……はぁ、しゃーなし。
「またビールでいいですか?」
「うむ」
とりあえず注文しまして。
先に飲み干したのが悪いんだからね?
「じゃ、皆さん、好きに飲んでください。かんぱーい!」
「「かんぱーい!!」」
……ガブロさん?
あれ? わしのは? みたいにキョロキョロしないの。
たった今飲み干したのはあなたでしょう?
ほら、二杯目が来ましたから。
「乾杯」
「お、おう」
流石に先に一人で飲み干したことを反省したかな?
俺との控えめな乾杯で我慢してもろて。
「くーっ! この喉ごし! このキレ! ここのビールは最高だな!!」
「香りが華やかで飲みやすい。苦みも、そんなに強くないかも」
「よく冷やされているから爽快感がいいな」
まぁ、お店でジョッキで飲むビールと、家で缶から飲むビールはやっぱり違うよね。
「カケル、俺もこれお代わり」
「はいはい」
『無頼』さんもあっさり飲み干して二杯目の生中。
よくもまぁそんなに飲めるものだよ、最初から。
「これ美味いな」
「肉との相性がいい」
「お肉もウニもとろけるようですわ」
「もう少し食べたい」
「あまり量が多いとくどくなる。それに、あくまで食事の始まりの料理だ。これくらいがちょうどいい」
「むぅ」
皆さん最初にうにくから頂いてるようで。
俺もいただきますかね。
――あー、うめぇ。
表面が炙られた肉とウニの約束された勝利の味わい。
肉の脂とウニとがまた合うのよね。
ウニの風味と味わいがお肉の旨味を倍増させる。
そうして旨味が広がった口の中にビールを一気に流し込む!
ふしゅぅううう。最高。
「こちらは素朴な味だな」
「だがそれがいい」
「こっちには日本酒を合わせたいぞい」
「焼酎も合うだろうな」
「これ私好き」
揚げ出し豆腐ね。
居酒屋の定番よね。
この出汁がまたお店によって個性があるから好きなんだよね。
「……魚介の出汁をベースに醤油か?」
「だと思います。少々甘いのは砂糖ではなく醤油自体が甘いんだと思いますね」
「なるほど……」
ラベンドラさんと揚げ出し豆腐の出汁について議論中。
砂糖を入れた甘さってよりは、九州の方の甘い醤油っぽさある。
普通に美味しい。
「魚のすり身揚げか」
「噛むほどに魚の旨味が出てきますわね」
「これなら再現簡単そう」
「塩をどれくらいすり身に混ぜるかだと思うぞ。少なければここまでまとまらない、多すぎれば味が辛くなり過ぎる」
「後でレシピよろ」
「まぁ、構わんが」
そしてさつま揚げ。
さつま揚げもだけどさ、ちくわとか、カマボコとか、大好きなんだよね。
子供のころに、大人になったらカマボコを板に付いたまま食べようって思ってたくらい。
……ちゃんとやったよ?
「お刺身の盛り合わせになります」
「「おお!」」
そして、みんなが前菜の小鉢を丁度平らげたタイミングで、刺身盛りが登場。
さてさて、どんなお刺身たちでしょうか。
――あ、飲み物の注文お願いします。




