テッテレー
かつてここまで様々なもんじゃを食べた夜があっただろうか?
いや、無い。
ってくらいにはもんじゃを食べましたわよ。
……俺が食べたの、全体の5%くらいだけれど。
「結構来ますね、腹に」
「粉物ではありますもの。そりゃあ膨れもしますわ」
「酒も一緒に飲んでいるなら尚更だ」
「じゃが、味の濃い食べ物の後に流し込む酒は最高じゃろう?」
「おっしゃる通りで」
で、残りの95%を食べた方々ですけれども。
流石に結構きてるらしい。
まぁ、もんじゃはちゃんと一巡したんですけどね、メニュー表にあるのを。
店員さんが呼び出されるたびに、『嘘……だろ……』みたいな表情してましたわ。
あと、二個目以降のもんじゃはラベンドラさんが完璧に作り上げてくれてた。
流石エルフ、一度見ただけで覚えちゃうとかどうかしてるぜ。
あの、割とマジで、日本に住み着いて伝統工芸とか習わない?
どこも後継者が足りてないんですよ……。
「そろそろデザートにするか」
「となると、スコブコの実はマストじゃな」
「……あるんです?」
マジャリスさんのデザート移行の宣言に、自然に乗っかるガブロさん。
そして、そこで、これまで何も伝えていなかったソクサルムさんを除く三人のエルフがこちらの意図を理解。
メニュー表を広げ、牡蠣が乗っているページを、『鉄板焼き』という文字を手で美味い具合に隠して見せる。
「ほら。ここの物は色が多少違うが、形状は変わらん」
「確かに……ここにあるという事は焼くんです?」
「そうだ。焼いて食べると風味と甘味が強くなる」
「食感もクリーミィになりますわ」
「こっちの味に慣れると俺たちの食べ慣れたスコブコの実に違和感を感じるようになるぞ」
信じられるか?
これ、事前の打ち合わせゼロなんだぜ?
ただのガブロさんが仕掛けたいたずらに、他の三人が便乗しているだけなんだぜ?
さて、と。
俺は無関係を装って飲み物を取ってくるか。
「カケルも食べるか?」
「ん~、そうですねぇ。俺の分は一つでお願いします」
チッ。
逃げようとしたのに無理やりに注文という形で参加させられた。
……マジャリスさんの目が、『逃がすか』とでも言いたげだな。
心外な。
ちょっと蚊帳の外に出てようとしただけなのにな。
「よし、店員を呼ぶか」
で、ここがエルフ達の真骨頂。
ここで他のデザートを頼めば、メニュー表で違うページに表記されている事をソクサルムさんが不審に思うかもしれない。
そうなったら、この異世界牡蠣バナナは現代では牡蠣バナナでは無いですよドッキリが不発に終わる可能性がある。
それを踏まえ、あえて牡蠣の注文の身に留め、違和感を無くしたというわけだ。
――一瞬デザートのページをめくろうとしたエルフが一名いたけど、めくる前にメニュー表を取り上げられたのは言うまでもない。
*
「来た来た」
「既に外皮を剥かれているんですね」
で、届いた牡蠣は鉄板で焼く前提なのでもちろん殻は無い。
ちなみに言うまでも無いけど牡蠣はしっかりと火を通して食べましょう。
地獄を見るぞ(3敗)。
加熱調理用を生で食べるなんてもってのほかだぞ。
流石にそれはやった事無いけど。
「しっかりと火を通すぞ」
「お任せします」
で、ソクサルムさん、どうやらラベンドラさんの事を信用してるっぽい。
もんじゃやお好み焼きの時もそうだったけど、ラベンドラさんが調理したりするのに口出ししないし。
……だからこそ、牡蠣バナナドッキリが成立したんですけれども。
「まずはそのままで、我々の知る物との違いをはっきりと感じた方がいい」
「そうしましょう」
ちなみにこれはラベンドラさんの優しさね。
レモン汁はまだいいにしても、塩や醤油、ソースをかけると果物じゃないってバレちゃうからね。
あえてそのまま食べさせる。
そして俺らは、その反応を見るために、ソクサルムさんより先には食べない、ってのを行えば。
「では、失礼して」
現代の牡蠣が、ソクサルムさんの口の中へ。
――そして、
「――――ケポ」
~NICE BOAT~
――とはなりませんでした。
いやまぁ、一瞬危なかったんだけど、危険を察知したリリウムさんが即座にソクサルムさんを連れて転移魔法。
数分の後、涙目になったソクサルムさんを連れて帰還。
なお、帰還したソクサルムさんから俺らは残さず睨まれた模様。
「その……大丈夫です?」
「騙しましたね?」
「最初に言い出したのはガブロだ」
「ですわ。私たちはその食べ物がスコブコの実とは口にしていませんもの」
「お、お前ら!?」
「本当のデザートを頼んでいいか? 血糖値が下がって来て頭が痛い」
マジャリスさんや。
あなたは今まで何を食べていらしたので?
メロンソーダにソフトクリーム入れて食ってたやろがい。
「ガブロさんには後日報復するとして」
「ちょっ!?」
「果物ではないと知って食べれば、美味しいものですね」
「レモン汁やソースも合いますよ」
「……それを最初に伝えて貰えれば気が付けたんですけれどねぇ?」
「ヒッ」
「やめておきなさいソクサルム。カケルに何かあれば、神様が黙っていませんわよ?」
「多少くらいは大目に見て貰えませんかね? 私は騙された被害者なのですが……」
「一か月夢にこの食べ物が出てくるぞ」
「……やめておきますか」
何をされる予定だったのかは分からないけど、とりあえず助かったっぽい?
まぁ、ガブロさんは助かってないんですけど。
ちなみに後から聞いた話、三日間お酒を飲んでも一切何も感じなくなってしまったらしいと聞きました。
ソクサルムさん、マジで俺に何をしようとしてたのだ?




