来ちゃったよ……
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
……おい、この空気どうにかしろよ。
「……つまりここは、あなた方だけがアクセスできる秘密の場所……という事で?」
「そうなのだが、我々もここに来ることが出来たのは最初はたまたまで……」
「とりあえず挨拶をしろ。この場所の管理者が驚いているだろう?」
「これはこれは、大変申し訳ございません」
何やらひと悶着あったようだが、初めて俺の家に来たエルフは、俺へと向き直ると。
「私、ストレプト・カーパス・ソクサルムと申します」
「あー……名前だけは何度か伺っております」
物腰柔らかに、ゆっくりとお辞儀しながら、自己紹介をするのだった。
*
まぁなんか一人増えましたけれど?
もうここまで来たら多分誤差だよ。
というわけで一行を車に……は定員オーバーで乗せられなかったから、徒歩+電車でお目当てのお店へ。
もちろん、道中もソクサルムさんがあれは? としきりに質問していたけれど、リリウムさんの、
「あまりキョロキョロするのは品がありませんわよ? それと、何か聞くなら念話になさい」
という言葉にそういうものか、と納得したのか、静かになった。
少なくとも俺的には。
マジャリスさんやラベンドラさんが時折顔をしかめてたから、多分引っ切り無しに色々と質問してるんだろうな。
――いやあの、おたくらも初めて外食に連れて行った時は似たようなものだったからね?
かつての自分らと同じと思って、優しく接してあげなよ?
「それで? 今日は何を食うんじゃい?」
「お好み焼きの食べ放題にしようかなと」
唯一念話を受信してないらしいガブロさんの質問に答え、足を止める。
チェーン店ではないんだけど、一人最低二千円でお好み焼きやもんじゃ焼きを食べ放題可能なお店があるわけでして。
本日はそこへご招待。
「『無頼』やアメノサは焼肉や寿司に連れて行っていたようだが?」
「タイミングが合わなかったですね」
御冗談を。
この四人を回転寿司なんかに連れて行ったら、いくらかかると思ってんだ。
なお、答えは分からない模様。
分からないから怖いんですけどね。
「待ってください? アメノサさんも彼やこの場所の存在をご存じなのです?」
「私達に勝手に付いてきましたもの。それでバレましたわ」
「転移魔法のセキュリティを見直すきっかけとなった」
「そうですか……」
とりあえず、店の前で立ち止まらないでもろて。
さっさと入りますわよ。
「いらっしゃい!!」
「六人です」
「奥の座敷へどうぞー!!」
という事で奥のお座敷へ。
もちろん、テーブルの中央に鉄板がある席ね。
「……ほう?」
「注文したら自分で焼いて、好きに食べるスタイルです」
「なるほど」
まぁ、もんじゃ焼きは店員さんが鉄板に広げるまではやってくれるけどね。
おおよそ一般人はもんじゃ焼きを焼いた経験はほとんど無いか、あっても浅い。
その点、このお店のスタッフはもんじゃ焼きの教育をされているという事なので、餅は餅屋。
いや、お好み焼き屋だけども。
「デラックスコースにしますよ。アルコールは?」
「無論」
「ワインは無いのか」
「今日はハイボールですわね」
まぁね。
流石にワインは置いてませんわよ。
そこだけは我慢してもろて。
「……」
「? どうかしました?」
「――。いえ、その……色々と面喰ってまして」
ソクサルムさん、メニュー見ながら硬直してましたけど。
そんな変かね?
「これらは誰かが描いているのですか? それとも、どこかからの映像の転写で?」
「……写真ですね」
驚いてたのはメニューに載ってるサンプル写真か。
そういや、異世界に写真って無いのかな?
みんなメニューについては驚いて無かったから、そんなもんだと思ってたんだけど……。
「腕の良い絵描きが描いたわけじゃないのか」
「てっきり時間停止魔法と幽閉魔法を使ってページに永遠に閉じ込めていたものかと……」
「なわけあるか」
あ、ちゃんと疑問に思ってたんだ。
でも、それぞれ好きに解釈していたと。
もう一回言っとこうか、そんなわけあるか!!
「とりあえず頼まないか?」
「そうですね、すみませーん!」
既にお腹がペコペコらしいマジャリスさんの言葉に従い、店員さん召喚の呪文を。
即座に駆け付ける店員さんに、
「食べ放題デラックスコース6人分、アルコール付き飲み放題コースで」
「かしこまりました。最初にお持ちするメニューはいかがしましょう?」
「俺はミックス玉、飲み物はコーラで。皆さんは?」
「私は海鮮玉。黒烏龍茶を」
「わしはトリプル豚玉、生ビールを頼む」
「私は餅チーズ玉にしますわ。飲み物はレモンサワー濃いめで」
「豚キムチ餅チーズミックス玉。飲み物はメロンソーダ」
とオーダー。
……ん? 一人分足りないな?
ソクサルムさんか。
まだ悩んでる?
「ソクサルム。時間制限無いならどれだけ食べても値段は定額だ。悩むのならさっさと注文して回数を稼いだ方がいいぞ?」
「そうじゃそうじゃ」
「……では、月見チーズ玉を。それと……このハイボールとやらを一つ」
「かしこまりました」
と、それぞれのオーダーを復唱し、テーブルの鉄板に火を点けて立ち去る店員さん。
その直後から、ソクサルムさん、リリウムさん、マジャリスさん、ラベンドラさんの顔がキョロキョロと動きながらも、会話などは発生してない辺り、また色々と念話で質問してるんだろうなぁ。
「カケル、カケル」
「どうしました?」
そんなエルフ達をよそに、コソコソと俺にメニュー表を見せてきたガブロさんは。
「あとでデザートと言ってこれを注文しよう」
そう言って、悪い笑みを浮かべながら、一品料理の所にある焼き牡蠣を指差すガブロさん。
――お主も悪よのぅ。




