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33 58階層


なんて可愛らしいのかしら…


背丈は私よりだいぶ低いのだけれど

年齢は私よりも年上?

私よりも上という事は

エルフか精霊の類だとは思うんだけど…


艶のある長い黒髪、

少女と大人の中間の様な美貌は

スッと通った鼻立ちにピンク色の薄い唇

小さな顔のラインはまるで彫刻の様だ。

肌はシミひとつない白磁の様な美しさで、

起伏の少ない少し痩せすぎに見える身体は、

病弱とは真反対の力強さがある。


肩から二の腕のあたりには

黒い鱗が張り付いており

大きな虹色の瞳は宝石の様に美しい。


時折スルトさんのほうをじっと見つめて

ほうけた様な顔をして居るのが可笑しい。


見つめられている彼は水色の

明るい色の髪を無造作に後ろで束ねていて、

真剣な眼差しでお兄様と話中だ。


スルトさんはと言うと

かなり中性的な見た目で

エルフの目から見てもかなりの

美少年だと思う。


「ふふふ♪

お兄様よりよっぽどエルフっぽいかも」

そう思うと少し笑みが溢れる。


ーーーーーーーー


1000年以上人の手があまり入らず

自然が豊かなエドガード大森林には

精霊が多く集まりやすく瘴気も他の森に

比べると少し薄い。


魔素が濃く集まるスポットも多く、

魔法の発動がしやすいのは確かだ。


しかし魔素の状態そのままでは

人族にとっては大変扱いづらく、

そのまま無理やり魔力に転用して使う

事も不可能では無いが、

特殊な訓練を積むか才能が無ければ難しい。

しかもすぐに魔力酔いと言う状態に陥りやすい。


なので一旦魔法式内で精錬濾過した後に

使用する事になる。

魔素収束

魔力精錬

目的の魔法式

基本的にこの三つを組み合わせた

物を一般的に魔法と呼ぶ。

魔素とは何かという話しになると、

魔法論者や魔素研究者などの熱い議論を

呼ぶことになるので割愛しよう。


良く言い伝えとして聞く伝承では、


曰くまだ世界が誕生する前、

2柱の神は気まぐれに

花を植えて育てたが、

ある日神が花の世話をしている時

うっかり棘で怪我をしてしまう。


その傷は見る間に身体を蝕んで、

やがてその神は命を落とす。


残された神は激怒して、

花を引き抜いてばら撒くが、

しかし引き抜いた花は死んでしまった神との唯一のつながりであった事に気づき、

深い悲しみに打たれて涙を流す。


落ちた涙と花が混ざり合って

大地ができ世界が誕生する。

死んでしまった神は花たちを愛して

いた為その身体を形作っていた力で

その大地を満たした。

と言う伝承だ。


魔素や魔法は実際どうしてできたのか、

それがなんなのか実際のところは

よく分かっていないが、

この世界にある全ての物に親和性が高く、

あらゆる物に魔素が関わっている。

魔素はこの世の法則に従い

法則は魔素の動きに従う。

虫や動物・植物はもちろん

物や建築まで全てに魔素が宿る事が

分かっていて

知性がある生物や一部の道具などは

本能的にこの魔素を使う事が出来る。

大陸では100年程前に

マリアウォーレンと言う研究者が

書いた著書が有名だ。


ダンジョンもそうだが生成の条件や

理由などは一切分かっていない。


「私、まだ生きられるの?」


私にかけられていた呪いは

かなり強力なもので数10年かけて

体力を削り続けている。


私自身が衰弱を感じていてここ数年は

特に起きられる時間が減っていた事から、

なんと無く覚悟はしていた。


発見されたダンジョンは

アルナ様の見立ててではかなり

大規模なダンジョンとの事…


お兄様達は私がこの状態になってから

必死に色々な調査をして下さったのですが

結局、原因さえ分からずじまいで…


スルト様達はあっという間に

原因が呪いである事

力強く助けになりたいと

仰って下さいました…


もう僅かに残された時間を過ごすのみで

諦めかけていた私に決して諦めては

いけないと。


枯れたと思っていた涙がこぼれて

少しだけ生きたいと、生きても良いのだと

思わせてくれるのでした。


ーーーーーーーーーーー


アリスとオリビアとスミスに集落の

護衛の為残ってもらい


黒曜とアディとフラン

アルナとマグネルのメンバーでダンジョンに

潜る事になった。


フランたちのサポートもあって

一気に28層まで黒曜と僕とマグネルで

攻略して行く。

大規模戦闘に特化しすぎなアディはこう言う

ちょこちょこした攻略は窮屈でしょうがないらしい。



「しかしこの様な場所にダンジョンが形成されて居るなど全く気づきませんでした…」

マグネルは少し落胆した様な表情を一瞬見せたものの、活力にあふれていた。


アディ達が暴れると崩落の危険があるので

不完全燃焼気味でイライラ顔だ(汗)


アルナの探索や予測は非常に高精度で

拍子抜けするほど順調だった。


隠し通路をバンバン見つけて

罠も見逃さない。

『ふッ』

アルナがその高い身長で

アディ達を見下ろしてドヤ顔で笑う。


ブチッ

あヤバい(汗)

『オルァ!!』


ゴウォ!!!


イライラMAXの状態で煽るのだから即噴火、

アルナの方も分かっててやってるので

こうなる。

アディはすごい音のするアッパーカットを

アルナに向けて放つがアルナは涼しい顔で

ヒョイと避ける。


そのアッパーカットが

僕らの真上の天井に潜んでいたモンスターを木っ端微塵にすると。

『ハッ!』

アディも負けじとゴミでも見る目で

アルナを見てドヤ顔で下から見下すという

アクロバティックなふんぞりかえりを

披露する。


バチバチとこの調子だった。


フランはソソソっと僕の横に来て

僕をハートマークの目で

見つめたまま目を逸さないで

モンスターの攻撃を ペイッと

払う。


おかげで僕の最高到達層の記録は

今日で更新だ。

「なんだかスルト殿のパーティは凄いな」

マグネルも規格外の彼女らの戦闘を見て

しみじみと漏らす。


「す、すいません」

「はははッ。いいえ違うのです

なんと言うかここまで強い

方々とパーティを組み、

しかも良くまとめられておられるので

感心しておるのです」

「感心なんて、彼女達に助けられてばかりで…」

「いや…本当にスルト殿が…」

きっと彼は気づいていないだろうが、

ここまで強すぎると実際はうまくいかない

事が多く問題だらけになりがちだが…

彼を中心によく慕われているようだ…


同時に自分はそれなりに剣士として

戦える気になっていたが、

彼女たちとの実力の差を思い知らされる。


このスルトと言う青年は召喚術師だと言う

しかし明らかにこれは…


妹の不調の原因も

少し疑えば分かったかもしれないのだ。

少しいい気になっていたかもしれないと

思うと、悔しさを覚えた。


「こらこら勝手に隠し部屋に特攻しない!」

『お・た・か・ら、の気配じゃ!』

というと我先にと走っていってしまう。


勝手すぎる彼女達の働き?

にスルトは頭が痛くなってきたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーー


それから3日ほどかけて

さらなる階層下へ探索を進めたが

呪術の痕跡は見つからず、

途中寸断された階層の謎解きに時間がかかったり

アディ達のトラブル誘発でロスタイムもあったが、

なんとか想定時間+αで深層へ到達した。


57層辺りから

モンスターが一層強くなり

そのエンカウント数も凄かった。

僕だとギリギリ勝てるが、少し攻撃を

もらってしまう回数があきらかに増える。


やはりと言うか、予想通り

ダンジョンの最奥の60層に

呪術の痕跡が強くあるらしい。


この階層では魔剣士、メタルゴーレム、アークマッドマンがセットでエンカウントする

魔法と剣術のセットが波状で来る上にガードしてもメタルゴーレムに崩されると言う状況だ。


58層に入ってすぐ絶え間なく

モンスターが襲い

既に40分近く戦闘しっぱなしだ。


「くッ!流石に厳しいみたい」

黒曜の装身状態での速度でも

いなせない程の猛攻。

集りに集まった150あまりの魔剣士の群れ

58階層の階層主は魔剣老師だった

無限に魔剣士を召喚しながら時折

剣戟を放ってくる。


見た目は老剣士の様だが、

一撃が重い

「スルト殿!5波が来ます!」

マグネルが魔剣士の群れと戦いながら叫ぶ。

凄い観察眼だ、僕らには全く

見えていなかったボスの動向を伝えてくれる

直後に老剣士が魔剣士を大量に召喚する。


魔剣士は顔の無い影の様なボディに

役割ごとに定められた装備を持ち

様々なスキルを使う上

速度・腕力に優れ、単位の魔法を使える。

老魔剣士は見た目とは裏腹に、

速度は更に速く、

魔法は弾き、

剣に至っては達人級である。


アディの全面に3枚の精緻な魔法陣が浮かぶ

『いくぞ!ちょいブレスじゃ!』

その瞬間超高密度の黒い光線が

魔剣士の集団を襲う。


アディがブレスをすると洞窟が崩壊するので

かなり抑えた攻撃だ。


同時にフランが防御壁と回復を

アルナがバフと敵側へデバフをかける。

同時に敵に向かって、

『調子に乗るナァ!御方様への無礼!万死に値すル!』


アルナの瞳孔が縦に割れる。

『シね』

魔法とは少し違う波動を発すると

剣士共が崩れ落ちて灰の様に消える。


老剣士は沈黙して静止

剣を眼前に立てて騎士のように構えると、

僕に向かって一直線に駆け出す。

魔剣士の召喚では切り崩せないと

判断したのだろう。


僕はあの氷河の村で受け取った剣を抜く

刀身は薄く燐光を発していたが、

以前のように模様は浮かんでいない。


どんな理屈で光るのかそもそも

きれない時と切れる時があるんだよね

この剣…今日はなんかきれそう…


老魔剣士の顔は無表情の面が張り付いていて

何も読み取れない。

中段正面から鋭い突きが来る

突きの軌道から身体をずらしつつ、

僕は剣で下向きに払う。


もう一本の短剣がマントの下から伸びて

来るのをマグネルが防ぐ。

同時に僕は剣を振り抜いて老魔剣士を

切る。


老魔剣士の無表情な面が笑ったように見えた。


確かに切ったはずだが、老魔剣士はあっという間に再生すると、先ほどよりも更に早い

斬撃を無数に繰り出す。


あヤバい


受けきれず斬撃が届く寸前

襟を思いっきり引っ張られる


「ぐえッ!」

『あほう!ツッコミすぎじゃ』

酷い怒鳴りようなのにその顔は

心配でいっぱいだ。


「ごめん…」

『わしらをもっと上手く使わんか!』


老魔剣士はピシリと足を揃えると

騎士の様に立つとその場に静止する。


『…なんじゃこいつ』


起伏のない仮面からはなんの表情も

読み取れないし、

そもそもダンジョンの魔物は

表情も意思もなく徘徊して侵入者を

無差別に攻撃してくる。


異質


何かこの剣士は他とは違う。

ダンジョンの敵とは明らかに異質


2本の大小の剣を構えて襲いくる

老魔剣士はまるで余計なことは考えず、

戦いに集中しろと言わんばかりに

猛烈な攻撃を放つ。


老魔剣士は突然

マグネルの方へ方向転換し

大剣の突きを放ち鼻先まで踏み込む

マグネルは咄嗟に

剣で大剣をガードする。

しかし大剣の影から短剣が伸びる。


信じておるぞ


そう聞こえた

ぞわりと全身の毛が逆立つのを感じると

宝剣の刀身に幾何学模様が凄まじい光を放つ。


僕は体が軽くなる感覚を覚える。


身体は意識よりも速く!もっと速く!

気付くと老魔剣士を宝剣で一刀両断にした。


遅れて大量の魔剣士が音も無く崩れ

58階層は静寂に包まれた。

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