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32 東の坑道跡

エルフの人々と僕らは自然に

打ち解けることができた。


最初はアディのたまの不機嫌オーラに

びっくりしていたエルフ達も

話してしまえば乙女同士の秘密の会話をする程に打ち解けて行く。


フランは主婦連中に混じって何やら

料理のアレコレや化粧品の話題で

楽しそうに話している。


スミスの頭蓋骨でサッカーをし始めた

子供達とスミスの頭を咥えて走りたい黒曜と頭を探す身体が駆け回っていた。


僕の所へ、マグネルさんがやってくると

突然深く頭を下げる。

「ちょっと!どうしたんですか?!」

神妙な面持ちでゆっくりと口を開く


「アリステル殿、

遅くなってしまったが部族を代表して

御礼を言いたい。

我らでは果たせなかった仇を取ってもらい、その上個人的な妹の事まで

協力して頂けると言う申し出に、

私達はとても返せる物がない…」


「いいえ!本当に気にしないで下さい…

僕らの都合で戦ったことでもありますし、

それに帰って来られなかった、

助けられなかった人を思うと悔しくて…」


本当に色々な人をもっと上手く助けられたんじゃないか?もっと完璧に立ち回れたはずじゃないかと無力感に苛まれる


「貴方は十分に我等を助けた、

これは偽らざる本心です。

きっと仇打ちなど我等だけでは

叶わなかった、

森から出られない我等では

到底ミラージュに行く事も、

強敵に勝てたのかどうかもわからない…

これほど救われた事はありません」


僕はモヤモヤとした気持ちのまま

小さくハイと答えるのが精一杯だった。



ーーーーーーーーーーー


森の中を必死に走る。

だが小さな足がとてももどかしく

一向に進まないかの様に感じる。


大きな手に引かれて

暗く鬱蒼とした森の中、

背丈より高い草をかき分けて走る。


振り返ってはいけないと言われた。


恐ろしい地響きと木々が弾ける

破壊の音がどんどん近づいてくる、

すでに心は折れかけていた。


またこのシーンだ

何百と見たこの光景にいつも縛られている


深いシワを刻んだ彼のいつも通りの優しい顔に少しの安堵を覚える。


しかしいつもは優しく微笑んでくれる

彼の顔がどんどん曇りその表情が消える。


「何故ワシの言う事を聞かなんだ?」


そこで世界が赤く染まり

僕は目が覚めた。


ーーーーーーーーーーーー


悪夢に目が覚めた僕は

バルコニーに出ると月を見上げる。

寝静まった集落に優しい月の光が落ちて

時々風に揺れた木々の声と

鳥のさえずりが聞こえてくる。


冬の夜風はかなり冷たく

悪夢でかいた冷や汗が急速に体温を奪い

吐く息は白い。


「眠れませぬか?」


「!!」


気配を感じさせぬまま突然背後から

声をかけられる。


「おっと、驚かせてしまいましたか?」

「い、いえグエンさんも眠れないのですか?」


グエンさんが忍ばせていた二つの木の

盃を懐から取り出し

片方を僕に渡しそこへお酒を注ぐ。


「暖まりますから」

「ありがとうございます」


グエンはゆっくりとバルコニーの椅子に腰掛けると、盃に口をつける。

僕もグエンにならって

盃の中身を飲むと

ちょっと強めで、花と香木の香りが

口と鼻を抜けて爽やかな余韻が残り

腹の辺りから暖かくなってくる。



「これは祖父から聞いた話しですが…

大昔にエルフの青年が、

ある友達と他愛のない

約束を交わしたそうです。

約束から年月が経ったある日、

エルフの青年と友達が全く別々の道へ進む事になった時に、自分がその約束を少しも果たせていない事をその友人に訴えたそうです。

しかしその友人は友達だからこそ、色々な物を受け取っていてそのエルフにだって返しきれていないのだと伝えたそうです。しかし彼とエルフとの離別は永遠とも呼べる物で

納得できなかったけれど、確かにその友人からもらった物はかけがえがなく、返されなかった物がどんな物であれ、友情が揺らぐ事はなかったと語ったそうです。どこかで彼を信じ最後のその時までその思いを抱いていたと…」


グエンさんはそう言って盃から

香る匂いと共に淡い琥珀色の酒を

飲み干した。


「爺の他愛のない昔話を聞いてくださってありがとうございます。

少しはスルト殿の助けになれば良いのですが…」


笑いながら彼はバルコニーを後にした。

少しだけ寂しげに見えたのは長い年月を

過ごしてきた過去の出来事に思いを馳せたからだろうか…


僕は部屋へ戻ると何気なく

ベットで眠るアディの月に照らされた

白磁の様な美しい寝顔と、

長いまつ毛がキラキラと輝いていた様を

少しだけ眺めると

彼女の髪をそっとなぜた。



悪夢であれほど心臓の音がうるさかったのに

僕も自分の寝床で不思議と穏やかに

眠ることができた。


ーーーーーーーーーーーーー


翌朝も雪は降らず

冬晴れの清々しい朝だった。


今日は昨日までとは違いエリアリアさんの

体調が良い様で少しだけ話しが出来た。


「はじめまして私はエリアリア・ライドファールと申しますわ。ウリンとも仲良くして下さっているそうで…先日の悪鬼退治の事も種族の者として大変感謝致しますわ。」


こうして見ると少し明るめの髪色で

ウリンより少し切長の目を除けば

面影がある。

どちらも美人である事に変わりはないが

エリアリアさんの方が

華がある気がする。

可愛さと言う点ではウリンも負けていない気はするけれど…


おっと

アディとフランに続きアリスとオリビアからも何か視線を感じるのでこれは地雷な気がする(汗)


「そ、そう言えば今日は体調が良いんですね」

心なしか血色がいい気もする。

「なんだか久々に体調が良いんです」

アルナが何かしてくれたのかも知れない

そう言えば昨晩の宴の後から姿が見えないけれど…


そんな事を思っていると

『御方様。見つけました…』

どこから現れたのか

突然目の前に跪いて僕を見つめる。

「あ、ありがとうアルナ」


上機嫌なアルナが説明してくれた。

森の東側には多くの試掘坑があるそうで

埋めるには大規模すぎて放置してある箇所が

多いそうだ。


試掘坑を掘ったのは、

発光魔鉱石の権利を狙った

各国の思惑による事らしい。



独立国家制を敷いている

エドガード森林国の領内では

許可無く表立って試掘をすることなど

出来ない筈だが、

その試掘は後を絶たないらしい。


試掘する者は冒険者や商人を装って居るが

貴族を伴った場合の天幕などは

威厳や見栄もあるのかはたまた

こちらを舐め切っているのか

貴族連中は身分を隠しもしないそうだ。


貴族連中の特性なのかも知れないが…


ウルトニアやアロン帝国

そしてカーラ聖国も鉱石脈の発見に

躍起になっている。


放置された坑道のその内のいくつかが

ダンジョン化して魔物の巣窟に

なって居るそうだ。


ダンジョンとは自然に魔物が集まり

地下や山脈などの自然地形を

元に生成される物と、

人工建設物の神殿や墓地・洋館や城

そして坑道などを核に生成される物がある。

きっちり浄化の対策を施せば

ダンジョン化はしないのだが、

ろくに鉱物も産出しない試掘坑に勝手に立腹した上やりっぱなしで放置するのだからタチが悪い。


またそう言う試掘坑などは虐待された

奴隷が使われ、真相は穴の中とばかりに

坑道内部で行われた闇深い事情が

埋められる事が多く

そう言う陰の気が絶好の核となる。


人工建設物を核にした場合、一概には言えないが複雑で深い階層の迷宮になる確率が高い。


僕らはその一つの坑道へ向かった。


集落から半日強程の距離にある

一つの試掘坑は結構大きな入り口に

なっていて、元々人工的に作られた入り口部分にゲートと言うダンジョン特有の入り口が

融合して形成されていた。



「かなり深いね」

『ええ、探索の結果ではこの辺りでは最大の

ダンジョンの様です。』

「試掘坑の具合から10年は経っていない

とは思うけど…」

モンスターがダンジョンに定着するには十分な時間だと思う。


少し先に見てきてくれたアリス・オリビアと黒曜達によれば坑道とダンジョン形成物が複雑に融合して居る様で

いきなり飛び込むには少し準備不足と言う事で、一旦集落へ戻る事になった。


『わしがブレスであれごと消してやるのじゃ』

『あなたねぇ、ダンジョンの中に多分

呪いの核があるんでしょう?それごと吹き飛ばしても良いの?』


『ぐぬぬぬぅ、じゃったら竜の姿で

ザックザックと下層へ一直線で…』


いやいや崩落したらそれこそ探すのに何年かかるかわからないし…(汗)


「アディ?僕と一緒に楽しいダンジョン探索もいいんじゃないかなーなんて」


『なんじゃってー そそそそ、それはデートと言うやつではないか?!』

『違うに決まってるじゃない』


呆れたフランの呟きも

アディの耳にはすでに届いておらず

何着て行こうかのうなんて言いながら

あっという間に村へ走って行ってしまった。


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