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30 ルド

大湿地を抜け半日程進むと

エドガードの北部にエルフたちが暮らす

自治領区がある。


彼らはかなり排他的で

近づく者を問答無用で攻撃してくると言う。

土属性と風属性の強力な独自魔法を使い

高い機動性を武器に木々の間を立体的に

攻めてくるらしい。


彼らの特殊能力に念話と言うスキルが

あり、エルフ同士の連携が凄いのだ。


総じてエルフと言う種族は

フィジカルも恐ろしく高い。

人族とは違い彼らを構成するのは半分が

精霊力で魔力との親和性も極めて良い。


エルフは男女問わず美しい見た目を持ち、

個体差はあるが数千と言う年月を

老うことなく若々しい肉体を持つ。

長い年月と言う経験から

魔力コントロールに長けており

人族の上位互換の様な種族である。



故に、時の権力者達は彼らを恐れた。

自分たちは群れていなければ弱く

そんな自分たちの弱さから

目を逸らしたかった。


彼らの矛先は自分たちより優れた種族であるエルフに向けられる

その美醜を逆手に取り人々の欲望を

煽ったのだ。


自尊心と言う仮面を守るため

直接は手を下さず、人間の欲望と言う

悪意の種を撒いたのだ。


個の単位で人は優しさを持つが

しかし大きなうねりの中では時として

残酷になる。


それぞれの善意は大きな集まりの渦の中で

こし取られ、ぶつかり合い醜い憎悪となる。


はじめは善意で始まった事かもしれない‥

しかし悲しい事に結局それは誰かを傷つける悪意になってしまう。



結局は人とは何とも弱いものなのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


森に入った時から確かに気配はある。


が、一向に攻撃を仕掛けられる様子がない。

しかし歓迎されていると言う感じでも無い

のが不気味だ。


強い精霊の類で有る、幻獣神のアディ達を

見ておいそれと手を出せないのかもしれない。


木々の間が少し開けた場所に出ると

前方にポツリとエルフと言うにはすこし

浅黒い肌の青年が立っている事に気がつく。


黒曜が警戒する様に半歩踏み出す。

その瞬間エルフの青年が

大小2本のシミターを抜き

一直線に向かってくると

問答無用で僕に斬りかかって来た。


「うおっと!」

斜め後ろに下がるステップで

ギリギリかわすと

いやかすったかもしれない!

今度は右横から音も無く小柄な影が現れて

中段横薙ぎの斬撃が来る。


ギイイン!!


僅かに身体を捻りながら腰の剣を逆手に握り垂直に抜きなんとか斬撃を受け流しつつ

上段から正面のエルフにスラッシュを

放つ。


アディの横、アルナの瞳孔が縦に割れると

恐ろしい顔でエルフを睨みつける。


エルフはスラッシュを2本のシミターで受けると後ろに飛び下がる。


サイドの小柄な剣士も

体格に合わない剣を持ち替えると

こちらを睨みつける。


そこに白い肌のがっしりとしたエルフが

現れ、二人の間に立ちよく通る声で

話し始める。


「ルド!サリヤ!、お前達の無念はわかるが

この客人は仇ではない!双方剣を引くのだ」


『何ヲ勝手なァ、御方様に刃を向けた罪イィ万死ニ値するァ!』

『止めんか、馬鹿者!』

珍しくアディが間に割って入る。


そう言うアディの目は少しも笑っていない。

ダダ漏れの殺気が3人のエルフに

向けられている。


『貴方も止めなさいな』

フランが僕のそばに寄って来て

アディに声をかけた。


するりと芯の通った所作で

僕らの前に立つエルフの男には

動きに隙がなく

かなり腕の立つ事は僕にもよくわかる。



「そう警戒しないで頂きたい。

我らはエドガードの民、私はその族長のマグネル・ライドファールと申します」


ーーーーーーーーーーーーーーー

マグネルに案内され

彼の護衛だと言う10名に

囲まれて僕らはエルフの集落に入る。


何だか僕らを護衛と言うよりは

連行されている様に感じるのは

気のせいだろうか?

黒曜も少し影の中から顔を出している。


アディもアルナも納得はしていないが

今は大人しくしてくれている。

ありがとう!

心の中で念じると

アルナはその瞬間 ぱあぁ と

笑顔になる。


後ろからはルドとサリヤと呼ばれた

エルフが距離を置いて大人しく着いてくるが

しかしその目はまだ暗いままだ


ルドは最初少年の印象だったけど

実は女の子だったらしい。

サリヤは歳の頃は僕と同じくらいの青年に

見えたけど、長命種と言われるだけあって見かけ通りの年齢ではないかもしれない。



護衛に囲まれているのもあって、

何とも落ち着かない‥

集落の家から向けられる視線も

心地の良い物ではなかった。


「すまないな、知っての通り我らの種族の歴史は搾取の歴史でもあるのだ。少々外部の者を警戒する節があってな‥」

そう言って苦笑いするマグネルの腰には二振りのシミターが下がっている。


アディとフランは今の所おとなしいけれど

一触即発の空気を垂れ流している。


集落の1番高い所に造られた、

巨大な木造建築は巨大な木の幹をくり抜いた躯体に別の木を巻き付かせた様な

独特の建築で、所々には

特産品の特大の発光結晶石が

嵌め込まれ明るく輝いていた。


集落の全体には大きさこそ違えど、

同様の様式の建築が数百と造られて、

その木々の間には飛び石の様に

石板が浮かび、回廊の様な巨大な街を

作っている。


中央の広場にある透き通った池の中心には

他とは種類が全く違う木が立ち

その池の底にはうっすらと発光する鉱石が

暗い森の底をほんのりと照らしていた。



マグネルの前に一人の老エルフが

やってくる。

「旅のお方に同族が迷惑をかけた様で

大変すまなんだ、この通りお詫び致します」


「相談役兼村長のグエンと言います。」

マグネルがそう説明する。

「よろしくお願いします。僕はアリステラ

と申します」


チラリとフランたちを見る

マグネルとグエン。

「目的はシロノ遺跡ですな」


ーーーーーーーーーーーーーー


「先日現れた悪魔があの兄妹の母親と祖母を

殺した。」


カーラ聖国近くの森へ

収穫に出かけた一団が、

普段見かけない男に遭遇した。

最初旅人を名乗った男が突然牙を剥く。

突然背後から切りかかり、

かなりの人数が殺されたらしい。


里から遠い所であった事かも知れないし

理由はわからないが、

男は里を襲う事はしなかった。


女子供見境なく目に入った者の命を

まるでモノの様に刈り取った。


その顔は悪魔そのもので、

エルフの教えの中に現れる

人族の姿そのものであった。


届く範囲のエルフを切り捨てた男は

すぐに興味を失った様に

姿を消したそうだ。


異変を察知した戦士が駆けつけた時には

まるで地獄の様だったそうだ。


「この者達は肉親の母親を目の前で

暴行された上残虐なやり口で殺された。

兄妹の心中を思うとやりきれん‥」


マグネルは苦々しい表情のまま

剣の柄頭を強く握りしめる。



たぶんアイツだ‥

村でモンスターを操り人々を

無惨にも殺したあの剣士‥


『多分、あの剣士の事だと思いますわ』


道中の村で酷い惨劇があり、

村人が沢山犠牲になった事。

青色の軍服を着た剣士を皆で倒した事。

森のリッチと死霊系モンスターが

その戦いに協力してくれた事


それまでじっと黙って聞いていた

マグネルとグエン


「我々はやはりとんでもない勘違いを

していた様です。集落の者や戦士達が

とんでもない失礼をしていた様です。」

そう言うと深々と頭を下げた。


ーーーーーーーーーーーー


グエンが集落のリーダーやルド、

サリヤを集めて話しを始める。


時折怒鳴る声が聞こえ、

サリヤやその他の青年のエルフ達が

泣き崩れる。


さぞ辛かったろう

悔しかったに違いない。

何の謂れもない家族が突然平和だと

思っていた森で突然奪われる‥

僕ならきっと平気ではいられないだろう。


スミスはじっと黙ったまま

その眼窩は何処を見ているかも

分からないまま‥

気づけば彼の姿は集落の

何処にも見当たらなかった。


集落の長達がグエンと話しをして、

それぞれに解散した後グエンと

サリヤ、ルド、数人の青年と女性が

僕らの元にやってくると

その場に深く膝をついた。


彼らは皆悲痛な表情で嗚咽が漏れ、

掠れた声で僕らにあらぬ敵意を向けてしまった事、自分たちの代わりに仇を打ってもらった感謝の言葉を話してくれた。


僕は膝をついて話してくれる

彼らにそんな事はしなくていいんだと

ルドの髪を撫でて落ち着かせながら

必死に彼らに話しかけた。


ルドが僕に抱きつくと

声をあげて泣いてしまった。


きっとこの兄妹はずっと

我慢してきたのだろう。

両親を奪われ突然取り残されたと言う、

行き場の無い怒りと悲しみに

取り憑かれたのだ。


周囲の青年達も深々と僕らに頭を下げた。

彼らはその神々に愛された能力と特徴がある為、総じてプライドの高い種族の筈で

人族に頭を下げたと言う話は

聞いたことが無い。




元々は種類の敵として

人族は憎むべき存在だと思っていた。

歴史上数々のおぞましい蛮行を繰り返し、

我らの種族の犠牲者も数知れない。


決して能力も高くなく

醜悪な本能のまま生きる蛮族に見えた。



私はある日警備の夫を

いつも通り送り出した

その朝に見た彼の姿が最後になった。


その夕方物言わぬ姿で帰って来た。


襲われたと言う一報を集落で聞き

いてもたってもいられず、

必死に私は彼を探す。

どれ位探し回ったか分からないが

足は擦り切れて血塗れになり

取り乱してまともに喋れなかった。


帰って来た収穫班の一団は

恐ろしく無惨な姿で帰って来た。


私は一日中泣いた

この世界はとても厳しい

ある日魔物に襲われたり

病で命を落とす事も珍しくない。

戦争に巻き込まれる事や

山賊に狙われたりする事だってあるだろう。


しかし私の夫を殺した悪魔は

残虐非道な殺し方をしたのだ‥

面白おかしくなぶる様に殺した。

とても直視出来ないほどに。

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