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第7話 魔具職人への第一歩

「じゃあ、取り敢えず、今日はこれでおしまいね」


「はい……ありがとうございます!」


「……」


 ……そのまましばらく働き……俺は無事に一日目の業務を終えた。……武器を磨いたり運んだりしただけだが……きっとこれは大きな一歩なんだろう。


「ああ、ケスタ……」


 俺は、業務が終わった後すぐにケスタに話しかけた。


「……ん?」


「何か……本とか……魔法の言語が分かるものがあれば、貸してほしい」


「……それは、ぼちぼち教えようと思ったんだが……」


「いや、出来るだけ早く、習得したい」


「……そ、そうか……?」


 ケスタは明確に、喜びの表情を見せていた。

 やはりケスタは、魔法付与の話をするのが好きなようだ。すぐに本を取ってきた。


「……じゃあ、また明日」


 ケスタは俺に本を渡し、すぐにどこかへ行ってしまった。そう言えば、ケスタは一体どこに住んでいるのだろうか。……俺もそう思いながら町から離れたのだった。


「……よし」


 少し町から離れ、木々が多くなってきた所に、俺は荷物を置いた。仕事を探していた時、ついでに野宿が出来そうな場所も探していたのだ。

俺は、雨が降っても大丈夫なように木陰でケスタに渡された本を読んでみた。


「……なるほど……武器などに魔法を付与する人を、魔具職人って言うのか……」


 その本には、魔法言語の基本となる、文字が書いてあった。しかし一度で覚えられそうではない。


「……『速筆』!」


 俺は試しに、『速筆』を使い、本を見ながら木の枝で地面に『身体強化』を表すらしい文字を、ゆっくり丁寧に書いてみた。


「……一瞬で書ける……!」


 すると、いつものように素早く文字を書く事が出来た。丁寧に書こうとしても、スピードは変わらないようだった。

 やはりこのスキルは、魔法を付与するのに向いている。

 俺の心の中に希望が芽生えた。


「……」


 俺は、しばらく文字を眺めた所で、寝転んで葉の隙間から空を見た。もう日はすっかり落ちていて、星が輝いている。

 俺は何となく、レイーナに話した出来事を思い出していた。


「攻撃魔法が使えない……?」


 俺に攻撃魔法の才能が全くないと分かったある日、俺の両親は冷たい視線を俺に向けた。でも、両親は俺が嫌いだった訳じゃない。むしろ、愛してくれていた。

 このすぐ後に、ごめんと言ってくれたし、いつも通りの笑顔を見せてくれた。

 ……ただ、俺が攻撃魔法を一切使えないと分かったあの日、一瞬だけ、冷たい視線がこちらに向けられた。それが忘れられなかった。


「……そのスキルも、特別な力だよ。『速筆』だって、誰でも持っているスキルじゃないだろ?」


 ディールアに、勇者のスキルって凄いよな、と言った時、初めて俺のスキルを肯定して貰えた。攻撃魔法が使えない事も一つの個性だと。そう言って貰えた。


だから、戦い以外で役に立てるように……『速筆』の訓練の他、料理の練習もして……そして何度もディールアに、勇者パーティに入れて貰えるよう志願した。


「……」


 ディールアと出会った時、自分のスキルも個性だと言われて嬉しかった。俺のスキルが『速筆』じゃなければ、間違いなく俺は勇者パーティには入らなかっただろう。

 ……だが、勇者パーティを追放されたのも、『速筆』が原因の一つ……。


 俺はあの時、自分のスキルをまた嫌いになってしまった。


 ……だが、俺は今、また『速筆』に希望を持とうとしている。


 ……もし、これから俺が、魔具職人として活躍出来たとして……何かまた問題にぶつかったとして、俺はまた自分のスキルを嫌ってしまわないだろうか。


 ……。


 ……いや、そもそもが違うな。

 魔具職人として活躍出来たら、スキルを嫌いになんてならないよな。

 魔具職人として活躍出来るまでなら、スキルを恨んだりしてしまうかもしれないけど。

 でも、『速筆』は魔具を作るのにとっても向いてるようだし、問題が起こるとしたら、スキルは関係ないよな……。

 せっかく見えてる希望を、可能性だけで不安になる方が間違ってるな。うん。

 今やりたいと思ったなら……やってみるしかないな。


 ……いつか、エルティアやライフィと再び顔を合わせる事があれば、こう言ってやりたいと思ってる。


「“戻ってこいなんて言ってももう遅い、俺は『魔具職人』として暮らす”……ってな」


 不安があるのは、上手くいかなかった時の事ばかり考えているからだろう。

 勇者パーティを追放された俺が、逃げずに魔具職人として働けるのかって。

 でも……せっかく見つけた、スキルを活かせそうな仕事……上手くいく可能性だって十分あるはずだろう!


 葉の間から覗く星が、キラッと輝いたように見えた。


「うぉぉ! 文字をいっぱい覚えてやるぞー!」


 なんだか途端にやる気が出てきた俺は、目に炎を宿しながら、ケスタに貸してもらった本のページをめくったのだった。

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