第5話 後悔
「名前……確か、ヒイユって言ったわね? 家は結局どうする事にしたの?」
レイーナは俺を店の裏側に連れて行きながらそんな話をした。
「ああ、えっと、と、取り敢えず野宿するつもりで……」
俺は、レイーナに恐る恐るそう伝えた。
……仕事は二人の優しさに甘える事になってしまったが、やっぱり家は少々まずいんじゃないかと冷静になったら感じ始め、しばらく野宿にする事にしたのだ。
「……まあ、悪くは無い判断ね」
「悪くは無い判断……?」
「……ええ、フクシアは優しすぎるから、ちょっと面倒なやつを連れてくる事もあるのよ。
……まあ、その時は……」
レイーナは、ため息をつきながら、何かを思い出しているようだった。
……その時は、一体どうなってしまったのだろうか。いや、考えるのはやめておこう。何だか嫌な予感がする。
「それなら、レイーナさんはどうしてフクシア、さんを手伝っているんですか?」
俺は話を変えるため、レイーナにそう聞いてみた。フクシアが、仕事には困らせないと言い切れるという事は、レイーナもほとんど毎回協力しているのだろう。面倒になる事もあるならば、断ったりしないのだろうか。
……そう思っていると、レイーナは一瞬動きを止めた。
「……私も昔、フクシアに助けられて……その後、色々と約束があるのよ」
……約束か。一体どんな約束をしたのだろうか……。
そう思っていると、レイーナはニッコリと笑顔を見せた。
「だからここで働かせてあげるけど、もしも甘ったれた事ばかり言ってるなら、容赦しないからね?」
「ひえっ……はい!」
思わず情けない声を出してしまった。
レイーナは、聖人と言うより、罰も与えるタイプの神様だったか……。
「……ところで、あなた、あの勇者パーティの一員だったのよね?
失礼かも知れないけど、明らかに冒険に向いていないスキルなのに……どうして勇者パーティに?」
「ああ、それは……」
……レイーナに、割と確信的な所を突かれてしまった。ギルドでもそんな話は薄ら耳にした事はある。……剣もダメダメだし、攻撃する魔法も持っていない。そんなやつが何故勇者パーティに所属する事になったのか。気になる事だろう。
「えっと……スキルの関係で困っていた時、勇者の、ディールアに、助けられた事があって……俺が、着いて行く事を選んだんだ……。一応ディールアに、何回も止められたり心配されたりしたんだけど、それでも諦めずに……」
俺はそこまで話して、何だか悲しみがぶり返してきた。
ディールアとは、ずっと冒険できると思っていたのに……これも全て、エルティアとライフィが……!
……いや、俺も、悪かったのかもしれない。
俺は……無理やり元気を出して旅立たずに、あの時と同じように、しつこくチャレンジしてみるべきだったのかもしれない。
俺は今更、そんな気持ちになってしまった。
「ちょっと悪い事を聞いちゃったみたいね……。
……まあ、何となく分かったわ。あなたは多分、悪い人間では無いわね。
……今は、その話の時のような精神力を無くしちゃってるみたいだけどね」
「……ぐっ」
また痛いところを突かれた。
確かに今は、昔よりだいぶ面倒から逃げるようになってしまったかもしれない。
「大丈夫よ、責めてるわけじゃないわ。……ほら、ここが働いてもらう所よ」
どうやら表情が険しくなってしまったらしく、レイーナは、そう言って、突き当たりの扉を指さした。
おっといけない、この選択をしたからには、ここで頑張るしかないんだ。俺はそう覚悟を決め、扉を開けた。




