第47話 付与の信頼
「……!」
俺がギルドに入ると、たくさんの人が待っており、ざわざわが広がり始めた。
「話を……聞かせてもらえるんですよね!」
「う、うん……」
昼にギルドに来た時俺に、勇者パーティの話が聞きたいと声をかけてきた人は、目をキラキラと輝かせていた。
「……って、ティルム!?」
辺りを見回していると、なんと人だかりの中に、ティルムのパーティがいるという事が分かり、思わず驚きの声を上げてしまった。
だが、そんなに驚く事じゃないよな。……ギルドだし、俺が勇者パーティの話をするって噂が立っているなら。
「……あっ、ちょっと……待って。あ、あの……ティルム」
「ああ、ヒイユ君」
俺は、話を始める前に、ティルムの方へ向かって行った。
「……ギルドでの事……ありがとう」
「ふふっ」
そして、お礼を言うと、ティルムは笑顔を見せた。
「……本当に良かった。ギルドの空気も、だいぶ明るくなったみたいだし」
「……その……どうして、俺の事を信じてくれたの?」
約束をしているのだから、本当は早く勇者パーティについて、話をした方がいいのだろうが、俺はどうしても、その事が気になって、そう聞いてしまった。
「……どうしても、ヒイユ君が悪い人だと、思えなかったから……。……ヒイユ君は、もう詳しい事は覚えていないかもしれないけど、ヒイユ君が付与をしてくれたこの剣、私が今まで剣を壊していたのが信じられないくらい使いやすくて……ちゃんと、付与をする時、相手の事も考えてくれているのかな、って思ったんだ」
……そうか……。相手の事……か。
俺に積極的に付与を頼みに来てくれた理由も、そうなのだろうか。
何だか申し訳無くなってきてしまった。
だって、俺はティルムが思っているよりいい人間じゃない。……ティルムの時は、特別な剣だと聞いたから、失敗は出来ないと思い、慎重になっただけで……一回、紙も無駄にしてしまったし。
……俺はいつも自分の事ばかりだ。ティルムの付与の時は、相手の事なんて考えてなかった。
……でも、申し訳無くなるだけじゃ、ダメだよな。
ティルムがそう思ってくれているなら、そうなれるように頑張らなくては。
……どんな付与も、求めている相手がいるいうことを、忘れてはならないな。
「おい、ティルムだけが頑張ったってわけじゃねーんだぞ。バティヤだって泣いてんだろ?」
「う……い、今はないてない、よ……」
俺がそんな事を考えていると、ティルムのパーティメンバーのモスィが、そう口を開いた。
「……私はな、正直お前の事をよく知らないから、その話については何とも言えん。だがティルムがこれだけ言ってくれているんだ、私も、ティルムが信じたお前を、全て信じるとまでは行かないが、疑わない事にはした。だから……分かってんだろうな?」
「はい。もちろん、分かってます」
その言葉に、思わず背筋がのびてしまう。
……分かっている、もちろん。口調は悪いが、仲間の事を想っての言葉なのだろう。その信頼を裏切る事なんてしない。
「……」
俺がそう答えると、モスィは「よし、後は大丈夫だ」と言い、桃髪の女性相変わらず無言で、ただじっと俺を見ていた。
……この桃髪の人だけはずっと謎なんだよな。一体何を思っているのだろうか。ほぼ表情が変わらないからよく分からない。
まあ、今はそれは忘れよう。後は大丈夫と言われたのだからな。
「……本当に、ありがとう」
「……うん」
俺は改めてティルム、そして、ティルムのパーティメンバーにお礼を告げ、勇者パーティの話をする為、元の場所へ戻って行った。




