第41話 信じてもらうため
「……っ! ……っと」
俺は、また何となく息を止めてしまったが、すぐに止めた。……息を止めている場合じゃない。すぐに、周りを確認した。
「……!」
……ギルドに入った瞬間、ギルドの人達は、俺を見ながらザワザワとし始めた。
……大丈夫だ、大丈夫……。
「……なあ」
またドキドキとなり始めた心臓を落ち着かせていると、ザワザワとしていたギルドの人の一人が、俺に声を掛けてきた。
「……な、何ですか……?」
「確か、ヒイユ……だったよな、勇者パーティの人が来て、話をしていたんだが、君が、勇者パーティの一員だったって、本当か?」
「……う、うん……」
「……おう」
「……?」
俺は、いつ追放の話を振られるのだろうかとドキドキしていたが、その人は、ただ、俺が勇者パーティに所属していたかの確認をすると、離れていった。
「……マジらしい。 すげえ……なぁ」
……その人は、ギルドの他の人達に、そんな事を言っていた。他の人は、なるほどな、という顔をしている。……何だろうか、声に感情をあまり感じない。
……あれっ? おかしいな、想像していた空気と違うぞ? ……でも、何か、違和感があるような……。
「あのっ……!」
困惑していると、前にギルドに来た時、俺に感謝を告げてくれた人が、端の方で手を振っており、ギルドの外へ向かっていた。
「あ、で、では……」
俺は、まだハッキリと状況が分かってはいなかったが、取り敢えずその人に着いて行った。
「こちらに来てくれてありがとうございます。その……実は、こちらに勇者パーティの、エルティアさんって人が来て、ヒイユさんの事を話して行ったんですけど……。ヒイユさんって、勇者パーティの一員だったんですね……」
その人は、ぎこちない笑顔でそう言う。
「あ、ああ……」
「……そして、暴力を振って、つ、追放されたって……」
「……っ、でもそれは」
「……ええ、わかっています。初めは、勇者パーティの人の言葉……信じる人の方が多かったです。でも、ティルムが言っていたんです『ヒイユ君は、そんな事をする人じゃない!』と」
「えっ?」
「……ティルムが必死に説得をしていたんです。だから、ヒイユさんを信じようとしてくれている人が増えました。でも、実際の状況が分からないから、皆探るような態度になってしまっているんです……」
「……!」
……そうか、皆、俺の事を信じようとしてくれているが、変な事を聞いてはまずいだろうと、気遣ってくれていたのか……。
ティルム……“その言葉が聞けてよかった”……というのは、俺の口から否定してくれてよかった、という意味だったのか……。
「……ありがとう」
俺は、ギルドの状況を伝えてくれたその人にお礼を言い、ギルドに戻ろうとした。
「……あ、あの、大丈夫なんですか?」
その人は、俺を心配しているのか、不安そうな顔でこちらを見ていた。
「……うん」
俺は静かに頷き、ギルドに戻った。
そして、大きく息を吸う。
「……あの! 皆さん! 知っての通り俺は……勇者パーティの一員だったんです!」
俺は勇気を振り絞り、そう呼びかけた。
「……!」
皆一斉にこちらを見る。
「……でも……俺は……ぼ、暴力なんて振ってないんです! 信じて……下さい!」
……そして俺は、ついにそう言い切った。




