第40話 信じてくれる人
「……よし、ギルドに来れた……」
休憩時間になった時に、エルティアと出会った時などの事情を話し、俺はすぐギルドに向かった。
レイーナは俺の言葉を聞くと、俺の気持ちを察したのか、休憩時間を長めにしてあげるわ、と言ってくれた。
……そうだ、俺は……冷静になって、気づいた。確かに、エルティアの言う通り、俺は、何も変わっていなかった。
変わったのは環境だけだった。ただ、『速筆』を活かせる環境になったから、俺も変わったかのように錯覚していただけだった。
……おそらく、成長は、している。
でも、根本的な事は、何一つ変わっていなかったんだ。
俺は、ずっと逃げてきた。……色んな事から。
特に、自分の評判が下がったり、自分が悪く言われたり……そんな時に、弁解したり、否定したりせずに、逃げてしまっていた。
……何となく、そんな状況になったら、言ってもどうにもならないと思っていたからだ。
言ってどうにかなるとしても、説明も面倒だし、話しても信じて貰えない可能性もある……そんな気持ちでいた。
……でも、ケスタのように信じてくれている人もいるんだと分かった。
……だから……きちんと説明しなくちゃならない。
きっと大丈夫だ……。
「あっ! ティルム……!」
自身を勇気づけながらギルドに来ると、ちょうどギルドから、ティルムと他のパーティメンバーが出てきていた様子が確認できた。
「……大丈夫、大丈夫……」
俺は、もし信じて貰えなかったら……という考えを一度消して、ティルム達に近づいて行った。
「……ああ、ヒイユ君……その、実は昨日ギルドに、勇者パーティの一員だって人が来て……」
「……う、うん……その人が言っていた事は……」
「う……嘘ですよね! 嘘なんですよね!? ヒイユさんが、暴力なんて振る訳ないですよね?」
ティルムの話に答えようとすると、すかさず、涙目のバティヤがそう言った。
「……おい、バティヤ、静かにしてろ……」
「ううっ、ごめんなさい……」
モスィがバティヤにそう呼びかけると、ついにバティヤは涙をこぼしてしまい、静かになって行った。
「……うん、俺は……やってないんだ……」
俺は、一度呼吸を整え、改めてティルム達にそう伝えた。
「うっ……よかった……」
「……うん! それが聞けてよかった、ありがとね!」
「……ふん」
「……」
ティルムは笑顔で、バティヤは泣きながら、モスィは相変わらずの仏頂面で……そして、やはり桃髪の女性は無言で俺と別れた。
……よかった、ティルム達も信じてくれていたのか……。
と安心したが、目の前のギルドを改めて見て、またドキドキとした。
……ギルドの人達の中には……きっと、ケスタやティルム達のように、信じてくれる者もいる。だが……相手は勇者パーティの人物、おそらく、俺の言う事を全く信じない者もいるだろう。
「……でも……行かなきゃ変われない!」
大丈夫だ、信じてくれる者がいる。例え、全く信じてくれない人が居たとしても問題ない。
俺は自分にそう言い聞かせ、ギルドの扉を開けたのだった。




