第34話 有名人
「……あの! もしかして……付与ついて、調べたりしてますか……?」
ケスタは、人が引いた瞬間を狙い、目を輝かせながら、噂の有名人にそう尋ねた。
「……! なるほど」
噂の有名人は、その言葉を聞くと、何やらメモを取り出し、何かを書き、ケスタに渡していた。
「ケスタ、一体何を貰ったんだ?」
「……夕方に、この場所に来てくれって……」
ケスタは、こちらに紙を見せてきた。
紙には、簡略化された地図と時間が書かれていた。
……この場所は、どこなんだ……?
結構入り組んだ所にあるようだが……。
「……きっと、付与の話をして貰えるに違いない!」
ケスタは、一層目を輝かせながら、そう呟いた。
……本当に付与が好きなんだな……。
「……ケスタは、どうしてそんなに付与が……」
今更かもしれないが、仕事が休みの今が聞き時だと思い、俺はケスタに何故そんなに付与が好きになったのか、と聞こうとしたのだが、ケスタの様子が何やらおかしかった。
「……不思議な本を持ち歩いているという噂……本当かどうかは分からなかったが、あの反応は間違いなく付与について知ってはいる。もし、持っていたあの入れ物に、付与する時の道具や本が入っているとしたら……いや、まだそうとは……いやしかし……もしあの本だとしたら、付与に精通していない訳が……」
ケスタは、ずっと悩んでいるようなポーズを取り、そう呟いていた。
「……」
「……あっ、何?」
「いや、ケスタは、どうしてそんなに付与が好きになったのかな、と思って……」
付与が好きを飛び越えて何かに取り憑かれてしまっているのではないかと思いつつ、俺は改めてそう聞いた。
「……俺は……昔、ずっと独りだった。そんな時に本を読んで……付与のやり方を知った。……それから、色々な物に付与をして、付与の楽しさを知って行ったんだ」
「なるほど……」
そこから、フクシアと出会って、武器屋で働く事になった……という感じだろうか。
「……楽しみだなあ」
ケスタは、本当に夕方を心待ちにしているようだった。
……俺も、その人に会ったら、何か教えて貰えるかもしれないな。
そんな事を思いながら、夕方まで過ごしたのだった。




