第33話 残る謎
「じゃあ今日の仕事はこれで終わりよ。増築の工事の関係で、明日は休みだからね」
「はい!」
「……はい」
「……」
……こうして、店の増築前の仕事を終え、俺は帰ろうとした。
「……どうやら……有名な……」
が、何やら、ここの人達が、ザワついていた。
ああ、あの、付与に精通しているらしい有名人が来るって話か……。
俺はそんな事を考えながら、話を聞き流そうとした。
「有名って言ったら勇者パーティじゃないの?」
「そうね、勇者パーティの人が来るって聞いたわ」
「……!?」
……が、そんな話が聞こえ、俺はついそっちの方を見てしまった。
勇者パーティの人が来る……?
いやでも、勇者パーティのメンバーは、皆付与には精通していないはず……。
……いや、待てよ、エルダは分からないな。
エルダと共にいた時間はそんなに長くはない。
実は、付与に精通していた……なんて事があってもおかしくはない。
……エルダだけが来るなら問題はないが、エルティアの事を考えると、エルダを迂闊に一人で行動させたりしないはずだ。
……いや、でもここは中心街から遠いし……うーん?
困っていると、更に不思議な情報が聞こえてきた。
「確か女性よね」
「男性じゃない?」
「あれ……?」
噂に矛盾がある……?
それなら、勇者パーティの人が来る、という話も、完全に正しい情報では無いかもしれないな……。
俺は、きっと大丈夫だと心を落ち着かせながら、森へ向かったのだった。
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「……絶対に付与に精通しているはず……」
……次の日、俺はケスタと共にギルドに来ていた。
どうやら、噂の有名人はここに来るようだった。……しかし、なんで話が食い違っているんだろうか。有名な人なら、名前が知られていて、名前で噂が伝わるはずだから、食い違いなんて、些細な事しか起こらないはずなのに。
俺はそんな事を考えながら、噂の有名人とやらの顔を見た。
噂の有名人らしき人は、俺が全く知らない人だった。
……よかった。……でもなら、何で勇者パーティの人が来るなんて言う噂が立ったのだろうか。
有名人って話を聞いた誰かが、有名人と言えば勇者パーティの人……と先走ってしまったのか?
「……ヒイユ、話しかけてみよう」
全く疑問が解消されなかったが、ヒイユが目を輝かせながらそう言うので、俺は一旦考えるのをやめ、噂の有名人に、話しかけようとしたのだった。




