第31話 増える問題
「……えーと、それで、ちょうど良かった、とは……?」
「大事な話があるのよ。この武器屋を増築しようと思っているのだけれど……それと同時に、武器屋と付与屋に、店を分けようと思うのよ」
「ええ!?」
こ、この店で働いていくと伝えたばかりなのに……。と、驚いていると、レイーナは、「でも仕事が大きく変わる訳じゃないわ」と言葉を加えた。
「……その、ヒイユは休んでいて、分からなかったかもしれないけれど、何故か付与の仕事が倍増したのよ。てっきり、あなたへの付与の依頼かと思ったら、そうでは無いみたいで、ケスタの負担がかなり増えたのよ」
「えっ?」
……もしかして、俺がギルドで名前を出したからか?
名前が広まっちゃって……仕事が倍増した、とか。まずいな、そうなる可能性を考えていなかった。これからは、迂闊に名前を出さないようにしなくては。
「まあ、ここは武器屋だからね。付与の仕事ばかり増えて、商品の武器に魔法を付与する時間が無くなったら困るんだよ。だから、武器屋と付与屋に店を分けて、商品の武器の付与の他に、付与の仕事は、自分で受けてもらおうと思って、そうする事にしたんだよ」
まあつまり、今まではレイーナが付与の依頼を整理していたが、これからは俺が自分で依頼を把握して、依頼をどうするか決める……と、それで、それ以外は変わらない、と。
俺はそれを聞いてホッとした。
「……そして、彼女は一体?」
まあしかし、問題はまだある。
……おそらく“フクシア”だろうが、一体この女の子は、何者なんだろうか。
「ああ、“フクシア”よ」
やっぱり“フクシア”だったか。
「……」
女の子は、レイーナの後ろに隠れ、虚ろな目でこちらをじっと見ていた。
な、何だかちょっと怖いな……。
「そして、彼女の名前はロコロ。今日からここで働く事になったわ」
「ああ、俺はヒイユ……よろしく」
「……」
俺が名乗ると、ロコロは小さく頷いていた。……俺がフクシアと会った時の事を考えるに、きっと彼女にも何か複雑な事情があるのだろう。
あまり深くは聞かないでおこう。
「じゃあ、取り敢えず彼女には武器を磨いてもらったりしてもらうから、よろしくね。後は、増築するまでは私が依頼を確認しておくから、それもよろしくね」
「はっ、はい!」
「……はい」
レイーナは、そう俺達に告げると、仕事に行ってしまった。
「……じゃあ、俺も……」
ケスタも、仕事をしに奥に行ってしまった。
つまり……二人きり、かあ……。
「ああ、えーっと、俺は今日休みで……えっと、まあ、皆いい人だから……うん」
俺はロコロに何か気の利いた言葉を言おうとしたのだが、全く言葉が出てこなかった。
「……私も、明日からだから……さ、さようなら」
ロコロは若干引いているのか、困ったような顔で武器屋から出て行ってしまった。
……とにかく、武器屋も増築して、自分で依頼をどうするか決めなくてはならない事も決まったから、これから、もっと頑張らなくては。
俺はそんな事を考えながら、とぼとぼと武器屋を去ったのだった。




